異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第6章 竜王の闘い篇

第63話 誘拐

　メルーグ帝国を撃退して数週間が経過した。この合間は特に何も無く、平和な日々を過ごしていた。しかし、事件とは唐突に起きるものだ。ムガ王国の城内で事件は起きた。

　「大変です王！」

　「何があった？」

　「ムール姫様が攫われました！」

　「なんだと！私の娘が？」

　王には一人娘のムールが居た。しかし、それが何者かに攫われたようだ。

　「誰の仕業だ？」

　「メルーグ帝国です。奴らは盗賊団と手を組み、人質として姫様を攫ったようです」

　「くっ…なんという事だ」

　「向こうの要求はムガ王国の無条件降伏。そうすれば姫の命は助けると言っています」

　「私はどうすれば…」

　王の間に俺が入っていく。

　「そろそろだと思ってたよ。王様」

　「リュート！」

　「姫の奪還、俺に任せてくれないか？」

　「何をするんだ？」

　「メルーグ帝国を潰し、国をひとつ消す」

　「出来るのか？」

　「俺に不可能はない」 

　「しかし、それでは私の娘が…」

　「大丈夫だ。助けるさ」

　「頼むリュート！私たちの力ではメルーグ帝国を倒すことは出来ない。君の力を貸して欲しい」

　王は二度頭を下げる。王に頼まれたのでは断れない。

　「任せてくれ」

　俺は一人でメルーグ帝国に向かう。メルーグ帝国は軍事国家なだけあり、国に入るのは至難の業だ。なので、上から飛んで入る。要塞と化したメルーグ城の牢屋に姫と思わしき人物を発見する。牢屋の外にいる盗賊と思わしき人物と話している。

　「私を出してください！何故こんなことをするのですか！」

　「お前を人質にしてムガ王国を乗っ取るためさ！」

　「卑劣な！戦争に負けたら今度は姑息な手を使う。腐っていますねこの国は！」

　「あぁ。でも俺らには最高な国だぜ！力があればなんでも許される。例えここで姫を嬲ってもな！」

　男が牢に入る。このままでは間違いなく姫は犯されるだろう。

　「うぅ…お父様…」

　「ひっひっひ。王族相手とは興奮するぜ！」

　「助けて…誰か…」

　その時、盗賊の姿が消える。次元操作だ。

　「えっ？一体何が…」

　「迎えに来たぞ姫。俺が来たからにはもう大丈夫だ」 

　「あぁ！ありがとうございます！」 

　泣きながら抱きついてくる。

　「そのまま捕まってて」

　「はい」 

　「次元操作･移動」

　一瞬で王の間に戻る。

　「リュート！もう戻ったのか！」

　「お父様！」

　「ムール！無事でよかった…」

　「はい。この方が危ないところを助けてくれました」

　「リュート。心から感謝する」
　 
　「いやいいさ。それよりアイツらを何とかしないと」

　「私はあまり戦いは好きではないが、戦争を好んで仕掛け、娘を攫うような奴らは、さすがの私でも堪忍袋の緒が切れると言うものだ。リュート、奴らを頼んだ」

　「了解した」

　再びメルーグ帝国に向かう、今度は数人で、メンバーは俺と嫁たち、隊長3人の計8名だ。

　メルーグ帝国破滅のカウントダウンが始まった。