異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第5章 竜王の暮らし篇

第57話 勝者の特権

　あのビーチバレー対決から数日経った。今日はミラと俺の仕事が無かったので、例の約束を実行する。

　「じゃあミラ今日はなんでも言ってくれていいぞ」

　「あぁそうだなぁ…。じゃあ一日デートをしてくれ」

　「お安い御用さ」

　ミラは普段は体験できないような事がしたいようで細かくシチュエーションを指定した。もちろんそれ通りに従う。

　最初は集合するところからやりたいらしく、先に行くように言われた。

　集合場所の街の噴水広場にやってきた。周りにはやはりカップルなどが多い。ここはカップルたちに人気な集合場所らしい。異世界でも、こういった文化はあまり変わらないようだ。

　しばらく待つと後ろから声をかけられる。

　「すまん。待ったか？」

　テンプレのようなデートの始まり方だ。

　「今来たところさ」

　俺もテンプレ通りに答える。今日のミラの格好は普段来ているクールな感じの服ではなく。頑張ってお洒落しましたと、言わんばかりの可愛い服だ。

　「今日のミラも可愛いな」

　「あ、ありがとうリュート。そう言われると頑張ってお洒落したかいがあったよ。じゃあ行こう」

　「了解」

　ミラの手を握る。恋人のようにがっちりと。

　「は、恥ずかしいな…」

　「じゃあやめる？」

　「リュートのいじわる」

　普段のクールな先生感が全てなくなり、一人の女の子としてのミラがそこにはあった。

　「私の指示には従ってもらうぞ？」

　「あぁもちろんだ」

　しばらく歩き、グルメ街にやってきた。

　「やはりこういう時は美味しいものだろう？」

　そうかな？そんなこともないと思うのだが。まぁミラの意見には従う。

　「あぁそうだな」

　カップルに人気のあるスイーツや軽食をいろいろ食べる。

　「はいリュートあーん♡」

　「ありがとう。あーん」

　いやー美女に食べさせてもらうのって良いものですなぁ。

　そんな感じでミラと二人で一日中イチャイチャと過ごした。

　空は夕暮れ、辺りは暗くなってきた。

　「この街にいい所があるんだ」

　そう言われたので、ミラに着いていく。とある高台を登る。そこには橙色に輝く空が、海に反射しとてもロマンチックな光景が広がっていた。

　「いい景色だろう？頑張って今日のために調べたんだ」

　「あぁ綺麗な景色だ」

　今日は一日ほんとに楽しかった。ミラは自分の事だけではなく、俺の事もしっかり考えてくれていた。

　「いつもリュートにはお世話になっているからな。たまには年上らしいことがしたかったんだ」

　いい感じの場所があったので、二人で腰を掛ける。

　「ありがとうリュート私のわがままに付き合ってくれて」

　「いや、いつもと違うミラが見れてこっちも楽しかったよ」 

　いい雰囲気で自然と見つめ合う。ミラの顔が高揚しているのがわかる。こうなればもう自然に身を任せる。ミラが目を閉じる。これはもうそういうことだろう。唇と唇が触れ合う。

　「あぁ幸せだリュート」

　「俺もさ」

　こうして、ミラとの一日はあっという間に過ぎていったのだった。