上 下
9 / 529
第一部 第1章 竜の目覚め篇

第8話 出会い

しおりを挟む
 ダンジョンを攻略した俺は、近くにあった木の実で腹をふくらませ、森の上を飛んでいた。

 異世界にきて一日が経った。最初はどうなることかと思ったが、今のまま行けば何とかなりそうだ。最強の力も手に入ったしな。

 しかしこの世界は謎が多い。まず、なぜ俺は異世界に転移したのか。スキルは誰から付与されるのか。何故俺は竜になったのか。考えれば考えるほど分からなくなるので、思考を放棄した。

 そういえばこの世界での目標が何も無かったな。俺が人間ならば冒険者をやりながらハーレムを作ってやるぜ!的な目標ができたのだろうが、生憎俺は竜だ。しかし人格があるので、モンスターとして生きる訳にもいかない。困ったものだ。もしかしたら進化していく過程で人に近づくことができるかもしれない。しばらくはランクを上げて進化することを考えるか。

 そんな事を考えながら飛んでいると、森を抜けた。だいぶ東に来たが、どうやらこっちにも国があるようだ。遠くに海が見えるので大陸の右端の方だろう。王国の右の方に遺跡のようなものが見えた。気になったのでそっちの方へ行ってみる。すると入口に人とモンスターを見つけた。

 「こんなところにドラゴンとは珍しい」

 「しかも見たことねぇぜ!俺が狩るぞ!」

 冒険者の男二人が小さいドラゴンをかこんでいる。このままではあの小さいドラゴンは狩られてしまうだろう。俺には関係の無いことだと無視をすることもできただろう。しかし同族のよしみがあったのもしれない。俺は小竜を助けることにした。このまま突っ込んでいけば、二人を伸して終わりなのだが、騒ぎになりたくないので、魔法を使う。

「次元操作・移動スライド

 2人をどこか遠くへ飛ばす。これで暫くは戻ってこないだろう。

 「大丈夫か?」

 言葉が通じるかわからないが、話しかけてみることにした。

 『同族との接触により会話が可能となりました』

 「あの…助けてくれたんですか?」

 会話ができるようになったようで、話していることが分かる。しかも可愛い声だ。どうやら雌のようだ。その、小さい竜が聞いてくる。

 「困っていたようだから助けたんだ」

 「ありがとうございます!」

 そう言うと小竜はペコペコとしてきた。ステータスが気になったのでこっそり見てみることにした。

 名前 なし
 種族 幼竜・希少種(ミニドラゴン・レア)
 rank 5
 
 技能 なし

 うーん弱い。そこら辺のゴブリンにもまけるぞ。しかし希少種とは。

 「何故こんな所に?」

 「私は希少種なのでよく冒険者たちに狙われてしまいます。私の親も希少種で私を逃がすために命を落としてしまいました」

 小竜は涙を堪えながら話していた。俺は黙って聞いていた。

 「なのでこれ以上誰からも狙われないように強くなるためにダンジョンに潜って進化がしたいのです」

 「君のためを思って正直に言うが、君のランクじゃ第1階層でも生き残れないだろう」

 ランク5ではまともに戦えないだろう。

 「それでも私は強くなりたいんです!強くならなきゃいけないんです!」

 強い子だ。彼女の心は並大抵のことでは折れないだろう。俺が助けなくても、自分でなんとかできたのかもしれない。だったら尚更この子を放置することなんて出来ない。

 「わかった。俺が君を助けてやる。一緒に行こう」

 「えっ…いいんですか?私なんかのために。ありがとうございます!」

 「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はリュートだ。これからよろしく頼む」

 「名前があるんですね。私には名前が無いから」

 この世界のモンスターは一定の知名度を誇り、何人もの人間を狩ると、名前付きネームドと呼ばれ名前が付いている個体になる。誰から名前を授かるかは不明だ。

 名前が無いなら俺がつけてやればいい。

 「じゃあ今日から君の名前は『クリア』でどうだい?」

 透き通るように純粋な心をもつ彼女にはぴったりだろう。

 「素敵な名前をありがとうございます!リュートさん。これからよろしくお願いします」

 『個体名「クリア」が登録されました』

 これが俺とクリアの出会いだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...