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オトナの権利の国
まずは自己紹介っス! 旅人さんは『食、金、性』の三つの欲がお好き!?
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――ペトラは唖然としていた。
「おかわりっス!」
目の前に並べられた食べ物の乗せられた皿の枚数が、今にも天井に届きそうになっている。
料理が乗ったお皿にナイフとフォーク、スプーンが当たってカチャカチャと音が響き渡り、数分で料理が消えていく。するとすぐに新たな料理がテーブルの上に乗せられる。
「いやぁ~フィオの食べっぷりは、いつ見てもスゴイねぇ~」
「おいフィオ、もうちょっとキレイに食えねぇのか?」
ミドはニコニコと感心しているが、キールは女っ気の欠片もないフィオの食べ方に眉をひそめている。
「でもねキール。食べ物はルールやマナーを気にして堅苦しそうに食べるより、幸せそうな顔でさ、美味しそうに食べるのがイイと思うんだ」
「さっすがミドくん、分かってるッスね!」
フィオが食べる手を止めてミドに賛同する。
キールの目の前には、フィオが食べてる最中に飛んでくる何かの物体が散見される。それが気になっているようだった。
フィオの顔をよくよく見ると、口の周りにはソースやら、焼肉のタレのような物がついている。テーブルの上には食べこぼしも目立つ。キールがそれを見て言う。
「美味そうに食うは別に良いけどよ、せめてもうちょっとキレイにだな……」
「うるさいっスね、分かったっスよ……。ペロペロ、レロレロ、ペロペロ、レロレロ――」
「誰も皿まで舐めろなんて言ってねぇよぉおおお!」
フィオがキールの申し出にめんどくさそうに言って食べ終わった皿までキレイに舐めとると、キールが我慢できずに怒って叫んだ。
一部始終を見ていたペトラがミドに対して言う。
「……あの、旅人さんたちは、いつもこんな感じなんですか?」
「ん? そうだよ~」
ミドはキールとフィオの掛け合いを微笑ましそうに見ながら答える。ミドはペトラに旅人三人の紹介を簡単にだがしてくれた。
三人の旅人の中で一番『食』にうるさいのがフィオという栗色の髪でショートカットの女性だそうだ。
大食い、早食いで彼女の右に出る者は今のところ見たことがないらしい。
しかもフィオさんの食に関する審美眼はとても信頼できるもので、彼女が見つけてくるお店はハズレがないという。
彼女の舌にかかれば、出された料理の材料を言い当てることもあるそうだ。
ちょっと怖い話だが、料理の毒見役も彼女がするらしい。それをミドさんから聞いた時は酷いと思ったのだが、どうやら特殊な道具を使って調べるそうだ。
その名も『美食の報告者ちゃん』というらしい。フィオさんがマスコット人形になったような見た目の人形だった。
嘘か本当か分からないが、古代文明の技術を使ったアイテムだそうだ。その人形に一度料理を食べさせて使うそうだ。
美食の報告者ちゃんが食べた料理に毒が検出された場合、
「ぶーっ! 糞不味いっス! この料理を作ったヤツは料理人の資格がないっス!!」
と言って酷評する音声が流れるらしい。
ちなみに毒が検出されない場合、「こ、これは……味の宝石箱っスぅ!」と言って高評価するそうだ。
そして一番『お金』に厳しいのがキールという金髪でくせ毛のクールな印象の男性である。
旅の資金の調達や、ミドさんやフィオさんのお小遣いなど、お金に関するすべての管理は彼に任されているとのことだ。
新しい国に入る前にキールさんは、
「いいか? よく聞け。あの国で使っていい金額は一〇万ゼニーまでだ。無駄遣いしたら殺す……!」
と言うらしい。ミドさんは「りょ~かーい」と言い、フィオさんは「イエッサーっス!」と言って敬礼する。どうやらフィオさんが無駄遣いに定評があるのだろう。
実はキールさんは元盗賊で、宝石や貴金属などの審美眼に長けているそうだ。
彼に鑑定してもらえば、手に入れたお宝や面白い道具がいくらで売買できるかおおよその判断がつくらしい。資金の全て預けるということは、相当信頼されている証拠だと思う。
そして、ミドさんの頼れる一番の相棒だそうだ。それを本人に直接言うと、
「う、うるせぇ……////」
と言って照れるらしい。一番の相棒と言われるのは悪い気はしないのだろう。
最後にミドがペトラに自己紹介した。
「そしてボクはミド、ミド・ローグリー。よろしくね」
「よろしくおねがいします」
「ボクが大好きなもの……それはね――」
ミドはペトラの耳に顔を近づけてきて吐息が吹きかかる。そして何かを言おうとしたその時――。
「あ! ミドくんは『女好き』で、ドスケベっスから気をつけるっスよ! ペトラちゃん」
「人聞きの悪い言い方しないでよ~。ボクは子孫繁栄という人類の大いなる目的に忠実なだけだよ~」
「そんな言い回ししても無駄っス! ペトラちゃん聞いてほしいっスよ。ミドくんったら今朝あーしのパンツの匂い嗅いで興奮してたんスよぉ!」
「だからそれは誤解だってええええ!」
フィオが話に割って入ってくると、ミドが必死に弁解しようとしていた。
× × ×
「お母さんに似て、とてもキレイだよ……ペトラ」
× × ×
その時、ペトラの脳裏に父親の顔が浮かび上がった。
「――う!」
同時に言いようもない不快感が襲いかかってくる。ペトラは口を押えて俯いた。
ミドとフィオが驚いて、キールが目を細める。ミドが心配して声をかけようとすると、ペトラは手の平を突き出して拒絶の仕草を示した。
そしてペトラは、少し落ち着いてから言う。
「すみません。ちょっとお手洗いに……」
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
「本当に平気ですから、本当に、全然……」
ペトラはトイレに向かって顔を手で覆って歩いて行った。それを見送って見えなくなったところでミドが言った。
「もしかしてボク……嫌われちゃったかな? アハハ……」
「ミドくんのセクハラみたいな顔と声に耐えられなくなったっスかね?」
「セクハラ!? キール! ボクの顔と声ってそんなに変なの???」
ミドはキールに助けを求めた。キールは落ち着いて水を一口飲んでから言う。
「安心しろミド、いつも通りマヌケそうな顔と声だ」
「な~んだ、よかったぁ~……ってそれフォローになってないよキールぅ!?」
そんなことを話していると、ペトラがようやく戻ってきた。ミドがペトラに笑顔を向ける。
するとペトラはミドと目が合うと苦笑いをして、少し距離を取って座った。ミドはそれに気づいて、気まずそうに苦笑いした。
そして、キールがペトラに話しかけた。
「オレたちの自己紹介は十分だろう、そろそろアンタのことも教えてくれないか?」
「わ……私、ですか?」
「ああ」
「えっと、その……私のことは別にいいじゃないですか! それより、もっとこの国について知りたくありませんか? 旅人さん」
「ん? まぁ……そうだな」
ペトラは強引に話を逸らそうとした。キールがそのことに訝しげな表情をする。ペトラは自分のことは話せないと考えた、いや……話したくなかったのかもしれない。
キールが続けて言う。
「そういや、この国に入ってから権利って単語をしつこく聞かされた気がするんだが、この国で権利ってのは、どれくらいの影響力があるんだ?」
「はい、この国で権利とは――」
ペトラはゆっくりと権利の重要性を説明を始めた。
「おかわりっス!」
目の前に並べられた食べ物の乗せられた皿の枚数が、今にも天井に届きそうになっている。
料理が乗ったお皿にナイフとフォーク、スプーンが当たってカチャカチャと音が響き渡り、数分で料理が消えていく。するとすぐに新たな料理がテーブルの上に乗せられる。
「いやぁ~フィオの食べっぷりは、いつ見てもスゴイねぇ~」
「おいフィオ、もうちょっとキレイに食えねぇのか?」
ミドはニコニコと感心しているが、キールは女っ気の欠片もないフィオの食べ方に眉をひそめている。
「でもねキール。食べ物はルールやマナーを気にして堅苦しそうに食べるより、幸せそうな顔でさ、美味しそうに食べるのがイイと思うんだ」
「さっすがミドくん、分かってるッスね!」
フィオが食べる手を止めてミドに賛同する。
キールの目の前には、フィオが食べてる最中に飛んでくる何かの物体が散見される。それが気になっているようだった。
フィオの顔をよくよく見ると、口の周りにはソースやら、焼肉のタレのような物がついている。テーブルの上には食べこぼしも目立つ。キールがそれを見て言う。
「美味そうに食うは別に良いけどよ、せめてもうちょっとキレイにだな……」
「うるさいっスね、分かったっスよ……。ペロペロ、レロレロ、ペロペロ、レロレロ――」
「誰も皿まで舐めろなんて言ってねぇよぉおおお!」
フィオがキールの申し出にめんどくさそうに言って食べ終わった皿までキレイに舐めとると、キールが我慢できずに怒って叫んだ。
一部始終を見ていたペトラがミドに対して言う。
「……あの、旅人さんたちは、いつもこんな感じなんですか?」
「ん? そうだよ~」
ミドはキールとフィオの掛け合いを微笑ましそうに見ながら答える。ミドはペトラに旅人三人の紹介を簡単にだがしてくれた。
三人の旅人の中で一番『食』にうるさいのがフィオという栗色の髪でショートカットの女性だそうだ。
大食い、早食いで彼女の右に出る者は今のところ見たことがないらしい。
しかもフィオさんの食に関する審美眼はとても信頼できるもので、彼女が見つけてくるお店はハズレがないという。
彼女の舌にかかれば、出された料理の材料を言い当てることもあるそうだ。
ちょっと怖い話だが、料理の毒見役も彼女がするらしい。それをミドさんから聞いた時は酷いと思ったのだが、どうやら特殊な道具を使って調べるそうだ。
その名も『美食の報告者ちゃん』というらしい。フィオさんがマスコット人形になったような見た目の人形だった。
嘘か本当か分からないが、古代文明の技術を使ったアイテムだそうだ。その人形に一度料理を食べさせて使うそうだ。
美食の報告者ちゃんが食べた料理に毒が検出された場合、
「ぶーっ! 糞不味いっス! この料理を作ったヤツは料理人の資格がないっス!!」
と言って酷評する音声が流れるらしい。
ちなみに毒が検出されない場合、「こ、これは……味の宝石箱っスぅ!」と言って高評価するそうだ。
そして一番『お金』に厳しいのがキールという金髪でくせ毛のクールな印象の男性である。
旅の資金の調達や、ミドさんやフィオさんのお小遣いなど、お金に関するすべての管理は彼に任されているとのことだ。
新しい国に入る前にキールさんは、
「いいか? よく聞け。あの国で使っていい金額は一〇万ゼニーまでだ。無駄遣いしたら殺す……!」
と言うらしい。ミドさんは「りょ~かーい」と言い、フィオさんは「イエッサーっス!」と言って敬礼する。どうやらフィオさんが無駄遣いに定評があるのだろう。
実はキールさんは元盗賊で、宝石や貴金属などの審美眼に長けているそうだ。
彼に鑑定してもらえば、手に入れたお宝や面白い道具がいくらで売買できるかおおよその判断がつくらしい。資金の全て預けるということは、相当信頼されている証拠だと思う。
そして、ミドさんの頼れる一番の相棒だそうだ。それを本人に直接言うと、
「う、うるせぇ……////」
と言って照れるらしい。一番の相棒と言われるのは悪い気はしないのだろう。
最後にミドがペトラに自己紹介した。
「そしてボクはミド、ミド・ローグリー。よろしくね」
「よろしくおねがいします」
「ボクが大好きなもの……それはね――」
ミドはペトラの耳に顔を近づけてきて吐息が吹きかかる。そして何かを言おうとしたその時――。
「あ! ミドくんは『女好き』で、ドスケベっスから気をつけるっスよ! ペトラちゃん」
「人聞きの悪い言い方しないでよ~。ボクは子孫繁栄という人類の大いなる目的に忠実なだけだよ~」
「そんな言い回ししても無駄っス! ペトラちゃん聞いてほしいっスよ。ミドくんったら今朝あーしのパンツの匂い嗅いで興奮してたんスよぉ!」
「だからそれは誤解だってええええ!」
フィオが話に割って入ってくると、ミドが必死に弁解しようとしていた。
× × ×
「お母さんに似て、とてもキレイだよ……ペトラ」
× × ×
その時、ペトラの脳裏に父親の顔が浮かび上がった。
「――う!」
同時に言いようもない不快感が襲いかかってくる。ペトラは口を押えて俯いた。
ミドとフィオが驚いて、キールが目を細める。ミドが心配して声をかけようとすると、ペトラは手の平を突き出して拒絶の仕草を示した。
そしてペトラは、少し落ち着いてから言う。
「すみません。ちょっとお手洗いに……」
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
「本当に平気ですから、本当に、全然……」
ペトラはトイレに向かって顔を手で覆って歩いて行った。それを見送って見えなくなったところでミドが言った。
「もしかしてボク……嫌われちゃったかな? アハハ……」
「ミドくんのセクハラみたいな顔と声に耐えられなくなったっスかね?」
「セクハラ!? キール! ボクの顔と声ってそんなに変なの???」
ミドはキールに助けを求めた。キールは落ち着いて水を一口飲んでから言う。
「安心しろミド、いつも通りマヌケそうな顔と声だ」
「な~んだ、よかったぁ~……ってそれフォローになってないよキールぅ!?」
そんなことを話していると、ペトラがようやく戻ってきた。ミドがペトラに笑顔を向ける。
するとペトラはミドと目が合うと苦笑いをして、少し距離を取って座った。ミドはそれに気づいて、気まずそうに苦笑いした。
そして、キールがペトラに話しかけた。
「オレたちの自己紹介は十分だろう、そろそろアンタのことも教えてくれないか?」
「わ……私、ですか?」
「ああ」
「えっと、その……私のことは別にいいじゃないですか! それより、もっとこの国について知りたくありませんか? 旅人さん」
「ん? まぁ……そうだな」
ペトラは強引に話を逸らそうとした。キールがそのことに訝しげな表情をする。ペトラは自分のことは話せないと考えた、いや……話したくなかったのかもしれない。
キールが続けて言う。
「そういや、この国に入ってから権利って単語をしつこく聞かされた気がするんだが、この国で権利ってのは、どれくらいの影響力があるんだ?」
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