あっぱれイオリン! ~ふわふわ妖怪珍道絵巻~

 ──時は戦国、腕に覚えのある屈強な侍が群雄割拠する時代。

『人斬り夜叉桜』と呼ばれた神出鬼没の辻斬りがいた。

 その剣客は闇夜に隠れ、神速の如き殺人剣で人々を惨殺する。その姿を見た者は決まって『桜吹雪のように舞い散る血しぶきが、妖艶で恐ろしい光景だった』と言う。

 そんな血生臭い争いが絶えない時代に、のんきに放浪の旅をする女の剣客がいた。
 名は『夜桜伊織』。立派な刀を腰に差してはいるが無益な争いを好まず、いつもとぼけているような人物だ。

 彼女と共に旅をするのは『猪又小太郎』という田舎小僧。伊織の剣の腕に惚れこんで、勝手についてきてしまったのだ。

 風の向くまま気の向くまま……今日も町から町へ、二人は流浪の旅を続けていく。

「お! 小太郎殿~、甘味処がありますよ~。あんみつでも食べていきましょう~」
「待て伊織、もう路銀がねぇんだよ! あんみつ食ってる場合じゃねぇって!」

 ……やれやれ。こんな調子で二人の旅は、一体どうなってしまうことやら──。
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