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第1話 クロエと観光案内
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「あ、ありがとうございます。コーヒーですか」
どんぐりのようなカーバンクルのモティの前にクロエはカップを置いた。
中身はコーヒーだった。さっき飲んだのの残りがちょうど良い感じだったのでそのまま出したクロエだった。
爆発でめちゃくちゃになった室内だったが、無事な家具を組み合わせてこうして二人はかけていた。それ以外はめちゃくちゃだった。天井が抜けなかったのは幸いだ。
チャールズは崩れた梁に止まっている。
「それで、仕事の依頼ってことで良いのかな」
「そうです。そうなります」
そう言いながらモティは小皿から角砂糖を一気に6個も取ってカップに放った。
若干ぎょっとしたクロエだったが会話はそのまま続いていく。
「あなた様の師匠、シルヴィどのに尋ねればクロエどのが適役と言われ、参上した次第なのです」
「師匠からか.....」
師匠の名前が出た瞬間クロエの表情はひどく曇った。
そして、対面のモティはカップに口をつける。その瞬間クロエに負けないほどの苦い顔になった。
モティはそのまままた6個角砂糖を取ってカップに入れた。
「コーヒー苦手なら紅茶入れるけど」
「え!? いえいえ! 滅相もない!」
そう言いながらカップに口をつけたモティはしかし若干表情を引きつらせた。しかし、これで我慢することにしたらしくそれ以上はなにもしなかった。
恐ろしく律儀なのかもしれなかった。
クロエはカーバンクルという種族を見るのは二度目だった。前は師匠の知り合いとやらのカーバンクルだった。妖精の一種になるらしい。普段は森の奥で暮らしているのだとか。カーバンクルは宝石とゆかりの深い妖精で、仲良くすると宝石の鉱脈を教えてくれるという逸話もあるらしい。
そのせいで小金持ちなのか、積極的に人間と関わる者は商人をしているものが多いとクロエは聴いていた。
「それで、この街の観光案内みたいなことをすれば良いのかな?」
「その通りです! 私、というかカーバンクルというのは基本的に森の中で過ごすのです。海なぞ一度も見ずに400年生きているものも居ます。ですが、私はどうしても海が見たくなり、ついでなら港町でおいしいものも食べたいといった感じなのです」
「なるほど」
えらく庶民的なカーバンクルらしかった。
「まぁ、出来なくはないけど、でも私ただの魔女だからな。その辺はど素人だよ」
「良いんです! 一緒に街を回ってくださるだけで良いんです!
「変なカーバンクルだね」
と、言いつつ、クロエは妖精が人間の世界に関わるとなれば、魔法使いを渡し役にするのは不思議でもないと思っていた。妖精が一番関りが深い人間と言えば魔法使いなのだ。
「報酬は弾みます!」
そう言いながらモティは脇に下げていた子袋の中をクロエに見せる。中には色とりどりの宝石がザクザクだった。
「よし、受けよう!」
二つ返事のクロエだった。
この袋ひとつで家が買えそうだった。
「怪しい。クロエ、怪しいよ。話がうますぎるよ」
そう言ったのはチャールズだった。梁の上から所感を述べる。
確かにあまりに話がとんとんと上手い方に進み過ぎなように思われた。
「大丈夫!!!」
しかし、クロエはひとつも聞かなかった。
かくして、クロエはカーバンクルのモティに従って港町『ヴィラ』を案内する仕事を請け負ったのだった。
どんぐりのようなカーバンクルのモティの前にクロエはカップを置いた。
中身はコーヒーだった。さっき飲んだのの残りがちょうど良い感じだったのでそのまま出したクロエだった。
爆発でめちゃくちゃになった室内だったが、無事な家具を組み合わせてこうして二人はかけていた。それ以外はめちゃくちゃだった。天井が抜けなかったのは幸いだ。
チャールズは崩れた梁に止まっている。
「それで、仕事の依頼ってことで良いのかな」
「そうです。そうなります」
そう言いながらモティは小皿から角砂糖を一気に6個も取ってカップに放った。
若干ぎょっとしたクロエだったが会話はそのまま続いていく。
「あなた様の師匠、シルヴィどのに尋ねればクロエどのが適役と言われ、参上した次第なのです」
「師匠からか.....」
師匠の名前が出た瞬間クロエの表情はひどく曇った。
そして、対面のモティはカップに口をつける。その瞬間クロエに負けないほどの苦い顔になった。
モティはそのまままた6個角砂糖を取ってカップに入れた。
「コーヒー苦手なら紅茶入れるけど」
「え!? いえいえ! 滅相もない!」
そう言いながらカップに口をつけたモティはしかし若干表情を引きつらせた。しかし、これで我慢することにしたらしくそれ以上はなにもしなかった。
恐ろしく律儀なのかもしれなかった。
クロエはカーバンクルという種族を見るのは二度目だった。前は師匠の知り合いとやらのカーバンクルだった。妖精の一種になるらしい。普段は森の奥で暮らしているのだとか。カーバンクルは宝石とゆかりの深い妖精で、仲良くすると宝石の鉱脈を教えてくれるという逸話もあるらしい。
そのせいで小金持ちなのか、積極的に人間と関わる者は商人をしているものが多いとクロエは聴いていた。
「それで、この街の観光案内みたいなことをすれば良いのかな?」
「その通りです! 私、というかカーバンクルというのは基本的に森の中で過ごすのです。海なぞ一度も見ずに400年生きているものも居ます。ですが、私はどうしても海が見たくなり、ついでなら港町でおいしいものも食べたいといった感じなのです」
「なるほど」
えらく庶民的なカーバンクルらしかった。
「まぁ、出来なくはないけど、でも私ただの魔女だからな。その辺はど素人だよ」
「良いんです! 一緒に街を回ってくださるだけで良いんです!
「変なカーバンクルだね」
と、言いつつ、クロエは妖精が人間の世界に関わるとなれば、魔法使いを渡し役にするのは不思議でもないと思っていた。妖精が一番関りが深い人間と言えば魔法使いなのだ。
「報酬は弾みます!」
そう言いながらモティは脇に下げていた子袋の中をクロエに見せる。中には色とりどりの宝石がザクザクだった。
「よし、受けよう!」
二つ返事のクロエだった。
この袋ひとつで家が買えそうだった。
「怪しい。クロエ、怪しいよ。話がうますぎるよ」
そう言ったのはチャールズだった。梁の上から所感を述べる。
確かにあまりに話がとんとんと上手い方に進み過ぎなように思われた。
「大丈夫!!!」
しかし、クロエはひとつも聞かなかった。
かくして、クロエはカーバンクルのモティに従って港町『ヴィラ』を案内する仕事を請け負ったのだった。
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