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エピローグ
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「うーん、今日も頑張りましたね! マコト様!」
「ああ、結構大変だったな」
俺とエリスは互いを労っていた。
今日は辺境での任務を終え、アイズに帰ってきたところだった。
辺境でのならず者たちの平定。
ならず者たちはその名に恥じないならず者ぶりだったが、俺とエリスがなんとか無力下したのだった。
そして、一緒に行った王室の書記官がならず者たちを兵士として雇うこととなり、万事解決となったのだった。
ならず者たちが行った軽犯罪の償いとして、王国の仕事をこなさせ、同時に職を与えることで再犯を防止する。
あの書記官はなかなかの手腕だった。
そして、俺たちはその任務を無事に終わらせ、こうして帰ってきたのだ。
こうして風呂に入っているのだ。
そして、俺は固く目を閉じていた。
例のごとく。
「シュレイグの任務が終わってからあっという間ですね。毎日いろんなことがあって楽しいです!」
「エリスが楽しいなら何よりだ」
シュレイグの任務から早1ヶ月。その間にもいくつか任務をこなし、俺たちは忙しく毎日を過ごしていた。
しかし、エリスは楽しそうだった。
周りからの期待もプレッシャーになったり良いことばかりではないはずだが、エリスは力に変えているようだった。
「きっとこれからもたくさんいろんなことがありますよ」
「そうだな。それでエリスはどんどん成長していくんだろうな」
「そうですよね。私だってどんどん成長するんです! ディアナお姉様のような立派な聖女になってみせます!」
エリスはおそらく握り拳に力をこめていた。
見えないが。
「ずっと見守っていてくださいね。マコト様」
ふと、エリスはそんなことを言った。
「マコト様が現れてくださってから本当にいろんなことがありましたから。私は本当にマコト様に感謝してるんです」
「そんなに大したことはしてない。守護者として当然のことだ」
「ふふ、マコト様はいつもそう言ってくださいます」
エリスはきっと微笑んでいるのだろう。
「大変だったけど、全部私にとってかけがえの無い思い出ばかりです」
「ああ、そしてこれからもそんな思い出をどんどん積み重ねていくんだ」
「そうですね。きっとこれからはそうやって毎日が過ぎていくんです」
そうだ。そうしてエリスは大人になっていくのだろう。
そして、俺はそれを後ろから見守るのか。そんなに悪く無いのかもしれない。
この第二の生も、俺にとってはやっぱり人生なのだろう。精霊だけど。
「改めて、これからもよろしくお願いしますね。マコト様」
「ああ、こちらこそな」
「ふふふ。マコト様の出会えて本当に良かった。きっとマコト様となら、大聖女ジゼル様に負けないくらい、たくさんの人たちに手を差し伸べられると思います!」
「ははは、それは頑張らないとな」
きっとエリスは気持ちの良い笑顔を浮かべていた。
そんな顔をさせているのが自分だということがなんだかこそばゆかったが嬉しかった。
と、そんな時だった。
「きゃぁぁあ!!!」
「な! どうした!」
「鳥が、窓から小鳥が入ってきて! 私の胸に! も、もう! 離れてくれません! マコト様取っていただけませんか!」
「そ、それは...!」
急転直下で俺は大ピンチに見舞われた。
これはかつてないパターンだった。
こんなのもう目を開けるしかないではないか。
かっ開いてエリスの胸を視界に収めるしかないではないか。
それはまずい。それは困る。
だが、そうしないと不届な小鳥をどうにもできない。
っていうかなんでわざわざエリスの胸に止まるんだ。ふざけんな。
「マコト様ぁ!」
「む、むぅん!!!」
俺は困惑の叫びを上げるしかなかった。
どうすればいいんだこの状況は。
ちなみにだが。守護者の精神力を表す『啓示』というパラメーターが俺はこの国の守護者ではダントツに高いらしい。
確かに精神修行の連続なのだからそうなるのかもしれない。
そんな風に、俺とエリスの退屈しない毎日は続いていくのだった。
「ああ、結構大変だったな」
俺とエリスは互いを労っていた。
今日は辺境での任務を終え、アイズに帰ってきたところだった。
辺境でのならず者たちの平定。
ならず者たちはその名に恥じないならず者ぶりだったが、俺とエリスがなんとか無力下したのだった。
そして、一緒に行った王室の書記官がならず者たちを兵士として雇うこととなり、万事解決となったのだった。
ならず者たちが行った軽犯罪の償いとして、王国の仕事をこなさせ、同時に職を与えることで再犯を防止する。
あの書記官はなかなかの手腕だった。
そして、俺たちはその任務を無事に終わらせ、こうして帰ってきたのだ。
こうして風呂に入っているのだ。
そして、俺は固く目を閉じていた。
例のごとく。
「シュレイグの任務が終わってからあっという間ですね。毎日いろんなことがあって楽しいです!」
「エリスが楽しいなら何よりだ」
シュレイグの任務から早1ヶ月。その間にもいくつか任務をこなし、俺たちは忙しく毎日を過ごしていた。
しかし、エリスは楽しそうだった。
周りからの期待もプレッシャーになったり良いことばかりではないはずだが、エリスは力に変えているようだった。
「きっとこれからもたくさんいろんなことがありますよ」
「そうだな。それでエリスはどんどん成長していくんだろうな」
「そうですよね。私だってどんどん成長するんです! ディアナお姉様のような立派な聖女になってみせます!」
エリスはおそらく握り拳に力をこめていた。
見えないが。
「ずっと見守っていてくださいね。マコト様」
ふと、エリスはそんなことを言った。
「マコト様が現れてくださってから本当にいろんなことがありましたから。私は本当にマコト様に感謝してるんです」
「そんなに大したことはしてない。守護者として当然のことだ」
「ふふ、マコト様はいつもそう言ってくださいます」
エリスはきっと微笑んでいるのだろう。
「大変だったけど、全部私にとってかけがえの無い思い出ばかりです」
「ああ、そしてこれからもそんな思い出をどんどん積み重ねていくんだ」
「そうですね。きっとこれからはそうやって毎日が過ぎていくんです」
そうだ。そうしてエリスは大人になっていくのだろう。
そして、俺はそれを後ろから見守るのか。そんなに悪く無いのかもしれない。
この第二の生も、俺にとってはやっぱり人生なのだろう。精霊だけど。
「改めて、これからもよろしくお願いしますね。マコト様」
「ああ、こちらこそな」
「ふふふ。マコト様の出会えて本当に良かった。きっとマコト様となら、大聖女ジゼル様に負けないくらい、たくさんの人たちに手を差し伸べられると思います!」
「ははは、それは頑張らないとな」
きっとエリスは気持ちの良い笑顔を浮かべていた。
そんな顔をさせているのが自分だということがなんだかこそばゆかったが嬉しかった。
と、そんな時だった。
「きゃぁぁあ!!!」
「な! どうした!」
「鳥が、窓から小鳥が入ってきて! 私の胸に! も、もう! 離れてくれません! マコト様取っていただけませんか!」
「そ、それは...!」
急転直下で俺は大ピンチに見舞われた。
これはかつてないパターンだった。
こんなのもう目を開けるしかないではないか。
かっ開いてエリスの胸を視界に収めるしかないではないか。
それはまずい。それは困る。
だが、そうしないと不届な小鳥をどうにもできない。
っていうかなんでわざわざエリスの胸に止まるんだ。ふざけんな。
「マコト様ぁ!」
「む、むぅん!!!」
俺は困惑の叫びを上げるしかなかった。
どうすればいいんだこの状況は。
ちなみにだが。守護者の精神力を表す『啓示』というパラメーターが俺はこの国の守護者ではダントツに高いらしい。
確かに精神修行の連続なのだからそうなるのかもしれない。
そんな風に、俺とエリスの退屈しない毎日は続いていくのだった。
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