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第23話 エンリケ・オーハイムの包囲網
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『各自配置についたな』
司教から遠話の法術で声が届く。要は電話のような法術のようだ。
全ての聖女、全ての騎士団員が配置についた。
シュレイグの東側、住宅街と言って良い場所だろう。ファンタジーで見るようなレンガ造りの家が連なり、煙突からは煙が出ている。
俺たちからは300mほど離れているだろうか。そこにある一軒の廃屋にエンリケは潜伏しているらしい。
いよいよだった。
国際的な重犯罪者、聖人エンリケ・オーハイムとの戦いが始まる。
選りすぐりの聖女10人、教会騎士団員の精鋭50人。これだけの人数をかいくぐる方法があるとは俺には思えなかった。
「緊張してる? エリスちゃん」
「力入れてると逆に動けないぞ。深呼吸だ深呼吸」
「は、はい!」
一緒に配置についている2人の聖女はエリスを励ましてくれた。良い人たちである。ほんわかした赤髪の人がミリア、勝気な褐色の肌の人がイザベルという名前らしい。ミリアは天使のような守護者、イザベルは青い球の守護者だった。
俺たちの他に騎士団の魔法使いが4人。ここは6人体制だ。こういった後衛が5チームで周囲を囲み、アルメアとディアナ率いる前衛が1チーム。合計6チームの布陣でエンリケに挑む。
『では、作戦を開始する。各自、務めを果たすように』
『了解』
一斉に遠話が飛んだ。
いよいよ作戦が始まった。
それと同時だった。
「なんだありゃあ!?」
俺は思わず叫んだ。
ディアナたちが陣取っているはずの最前衛、エンリケのいる家屋、そこから大きな光の柱が立ち上ったのだ。
「あれがアルトリウス様の光の柱。アルメア様が対象としたもののみを貫く神の剣です」
「なんだって!?」
「おそらく、今エンリケが潜伏している家屋は蒸発しているはずです」
そして、そのまま光の柱は光の波動を放ちながら周囲一体を照らし出した。
なんだあれは。アルメアの守護者はリスキル最強とは聞いていたが規模が違う。
俺も守護者としては最上位と言われたがそんな称賛かすんでしまう。格が違いすぎる。
あんなもん勝てるわけがない。間合いがどうとかのレベルじゃないぞ。
「普通ならこれで勝負ありだけど」
「ていうか戦意喪失だわな。アタシら必要だったのかね」
ミリアとイザベラも口々に言っていた。確かに、普通ならあれで勝負がつきそうなものだが。
「お? 始まったか。それなりの使い手ってことだな」
光の柱が立ち上ったあたり、そこから何かが砕ける音が響いた。それとともに土埃が巻き上がる。明らかに戦闘が始まっている。
前衛はアルメア、ディアナを含めた18人。エンリケはそれと戦うことにしたらしい。よほどの自信があるのか。
「では、私たちも始めましょう」
「ああ、守りは任せたぞエリス」
「はい!」
ミリアとイザベラも守護者を顕現させた。
ミリアはバフ係、イザベラは遠隔で秘跡を発動させるようだ。
他の配置からも法術や秘蹟が飛んでいる。
すさまじい光景だった。
エンリケはこの包囲網を抜けれるのか。無理に決まっている。こんなものエンリケがどれだけの聖人でもたった1人で抜けれるわけがない。
「そぉら!」
イザベラが秘跡を飛ばす。確か対象の範囲の重力を操る能力だと聞いている。ミリアはバフをかけている。
50人の総攻撃がエンリケを襲っている。
形勢は明らかだった。
だが、その時だった。
『グォオオオオオオオオオ!!!』
突然地鳴りが響いた。いや、地鳴りではなかった。それは鳴き声だった。
エンリケとの戦闘が行われているあたり、そこから巨大な顎が現れた。それから長い胴体が流れるように出てくる。
現れたのはドラゴンだった。
俺が元いた日本の龍のようなフォルムの真っ黒なドラゴンだった。
「ドラゴンだぞ!!」
「なんでこんなところに!?」
俺たちの配置の全員が狼狽えている。
ドラゴンは最上位のモンスター、それがいきなり現れたのだから取り乱すのも無理はない。
だが、本当に一体なぜ。
『ドラゴン出現! ドラゴン出現! エンリケの守護者の能力により影より出現!」
なんだって。これはエンリケが出したのか。
そうか、エンリケは影の中に自由に出入りできる。それはつまり他のものも入れれるということなのか。
だが、
「今までこんな戦術を使った報告なんかなかったぞ」
「切り札ってことなんでしょう」
そうだ、エンリケは今までモンスターを影から出したなんて報告は聞かなかった。それもドラゴン。こんなものを住宅街で出すなんて、それはつまり誰が何人死のうが構わないと言っているようなものだ。
『前線のアルメア様他数名はドラゴンへの対応を優先する! それ以外で作戦を続行する!』
大変なことになってしまった。一気に現場は緊迫感の包まれる。それにアルメアと数人であのドラゴンをどうにかできるのか。
と、次の瞬間、巨大な光の柱がドラゴンを貫いた。
『グォオオオオオオオオオ!』
ドラゴンが鳴くとその周りに雷雲が現れる。そして、そこから爆雷が降り注いだ。しかし、アルトリウスから放たれた光の帯がそれを弾いた。
本当にアルメアのアルトリウスはドラゴンとやりあっている。とんでもない話だ。
ならドラゴンはアルメアの任せて俺たちは俺たちのことをやらなくてはならない。
と、その時だった。
俺の視界の端を何かがかすめる。
「うらぁあっ!!!」
勘でその方向を俺は殴りつけた。
「なんだってんだクソが!!」
何かが拳にあたり、弾き出された。
それは男だったら。汚らしい格好の男。神はボサボサだ。そして、その後ろには黒い立体化した影のようなものがいた。
「エンリケ・オーハイム!」
エリスが叫んだ。
司教から遠話の法術で声が届く。要は電話のような法術のようだ。
全ての聖女、全ての騎士団員が配置についた。
シュレイグの東側、住宅街と言って良い場所だろう。ファンタジーで見るようなレンガ造りの家が連なり、煙突からは煙が出ている。
俺たちからは300mほど離れているだろうか。そこにある一軒の廃屋にエンリケは潜伏しているらしい。
いよいよだった。
国際的な重犯罪者、聖人エンリケ・オーハイムとの戦いが始まる。
選りすぐりの聖女10人、教会騎士団員の精鋭50人。これだけの人数をかいくぐる方法があるとは俺には思えなかった。
「緊張してる? エリスちゃん」
「力入れてると逆に動けないぞ。深呼吸だ深呼吸」
「は、はい!」
一緒に配置についている2人の聖女はエリスを励ましてくれた。良い人たちである。ほんわかした赤髪の人がミリア、勝気な褐色の肌の人がイザベルという名前らしい。ミリアは天使のような守護者、イザベルは青い球の守護者だった。
俺たちの他に騎士団の魔法使いが4人。ここは6人体制だ。こういった後衛が5チームで周囲を囲み、アルメアとディアナ率いる前衛が1チーム。合計6チームの布陣でエンリケに挑む。
『では、作戦を開始する。各自、務めを果たすように』
『了解』
一斉に遠話が飛んだ。
いよいよ作戦が始まった。
それと同時だった。
「なんだありゃあ!?」
俺は思わず叫んだ。
ディアナたちが陣取っているはずの最前衛、エンリケのいる家屋、そこから大きな光の柱が立ち上ったのだ。
「あれがアルトリウス様の光の柱。アルメア様が対象としたもののみを貫く神の剣です」
「なんだって!?」
「おそらく、今エンリケが潜伏している家屋は蒸発しているはずです」
そして、そのまま光の柱は光の波動を放ちながら周囲一体を照らし出した。
なんだあれは。アルメアの守護者はリスキル最強とは聞いていたが規模が違う。
俺も守護者としては最上位と言われたがそんな称賛かすんでしまう。格が違いすぎる。
あんなもん勝てるわけがない。間合いがどうとかのレベルじゃないぞ。
「普通ならこれで勝負ありだけど」
「ていうか戦意喪失だわな。アタシら必要だったのかね」
ミリアとイザベラも口々に言っていた。確かに、普通ならあれで勝負がつきそうなものだが。
「お? 始まったか。それなりの使い手ってことだな」
光の柱が立ち上ったあたり、そこから何かが砕ける音が響いた。それとともに土埃が巻き上がる。明らかに戦闘が始まっている。
前衛はアルメア、ディアナを含めた18人。エンリケはそれと戦うことにしたらしい。よほどの自信があるのか。
「では、私たちも始めましょう」
「ああ、守りは任せたぞエリス」
「はい!」
ミリアとイザベラも守護者を顕現させた。
ミリアはバフ係、イザベラは遠隔で秘跡を発動させるようだ。
他の配置からも法術や秘蹟が飛んでいる。
すさまじい光景だった。
エンリケはこの包囲網を抜けれるのか。無理に決まっている。こんなものエンリケがどれだけの聖人でもたった1人で抜けれるわけがない。
「そぉら!」
イザベラが秘跡を飛ばす。確か対象の範囲の重力を操る能力だと聞いている。ミリアはバフをかけている。
50人の総攻撃がエンリケを襲っている。
形勢は明らかだった。
だが、その時だった。
『グォオオオオオオオオオ!!!』
突然地鳴りが響いた。いや、地鳴りではなかった。それは鳴き声だった。
エンリケとの戦闘が行われているあたり、そこから巨大な顎が現れた。それから長い胴体が流れるように出てくる。
現れたのはドラゴンだった。
俺が元いた日本の龍のようなフォルムの真っ黒なドラゴンだった。
「ドラゴンだぞ!!」
「なんでこんなところに!?」
俺たちの配置の全員が狼狽えている。
ドラゴンは最上位のモンスター、それがいきなり現れたのだから取り乱すのも無理はない。
だが、本当に一体なぜ。
『ドラゴン出現! ドラゴン出現! エンリケの守護者の能力により影より出現!」
なんだって。これはエンリケが出したのか。
そうか、エンリケは影の中に自由に出入りできる。それはつまり他のものも入れれるということなのか。
だが、
「今までこんな戦術を使った報告なんかなかったぞ」
「切り札ってことなんでしょう」
そうだ、エンリケは今までモンスターを影から出したなんて報告は聞かなかった。それもドラゴン。こんなものを住宅街で出すなんて、それはつまり誰が何人死のうが構わないと言っているようなものだ。
『前線のアルメア様他数名はドラゴンへの対応を優先する! それ以外で作戦を続行する!』
大変なことになってしまった。一気に現場は緊迫感の包まれる。それにアルメアと数人であのドラゴンをどうにかできるのか。
と、次の瞬間、巨大な光の柱がドラゴンを貫いた。
『グォオオオオオオオオオ!』
ドラゴンが鳴くとその周りに雷雲が現れる。そして、そこから爆雷が降り注いだ。しかし、アルトリウスから放たれた光の帯がそれを弾いた。
本当にアルメアのアルトリウスはドラゴンとやりあっている。とんでもない話だ。
ならドラゴンはアルメアの任せて俺たちは俺たちのことをやらなくてはならない。
と、その時だった。
俺の視界の端を何かがかすめる。
「うらぁあっ!!!」
勘でその方向を俺は殴りつけた。
「なんだってんだクソが!!」
何かが拳にあたり、弾き出された。
それは男だったら。汚らしい格好の男。神はボサボサだ。そして、その後ろには黒い立体化した影のようなものがいた。
「エンリケ・オーハイム!」
エリスが叫んだ。
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