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第3話 エリスと俺と初仕事

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「ではマザー。行ってまいります」

「ええ、お気をつけてエリス、そしてマコト様。女神の加護を」


 そのおばあさんは手を組み合わせて言った。

 マザー・リース。エリスの上司、そして実質的な育ての親なのだそうだ。その目には優しさと喜びが映っていた。

 そして、エリスはその目を背に、俺という守護者を連れて大聖堂を発ったのだった。

 エリスは昨日より軽装で、大きな丸い帽子、白い法衣にケープ、白いショートパンツに黒いタイツといった出立だった。そして、杖を持っている。

 これが聖女の仕事着なのだそうだ。


「さぁ、聖女としての初めてのお仕事。気合いを入れていきますよ!」


 俺が守護者として転生した翌日。

 さっそくエリスには聖女としての仕事が回ってきた。かなり早いなと個人的には思ったが、エリスによれば聖女というのは国中から引く手数多なのだそうだ。


「初めての仕事。ここから馬車で半日ほど行ったところにモンスターの被害が出たそうです。私たちはそのモンスターを退治しに行きます」

「ほほぅ。それはそれは」


 そう言うほかない。モンスターなんて響き、ゲームの中でしか聞いたことがない。

 いや、東高のショウスケさんはモンスターと呼ばれていたが今は関係ない。


「これが街か」

「そうです! 第四王都アイズ。連合王国の中で最も美しいと言われている大都市です!」


 目の前にあるのはモンスターという言葉が出るのも頷けるファンタジックな街だった。

 石畳とレンガの白い街。高く聳えるたくさんの建物。その奥に壮麗な大きな城。

 道ゆく人々はさまざまな人種が入り乱れている。獣の耳が生えたもの、トカゲそのものの者もいる。いかにもファンタジーだ。

 荷車を引くのはずんぐりとした見たこともない四足歩行の獣。

 武器を持った兵士が歩き、なにか大きな生物の爪を背負った女戦士がそれとすれ違って行った。

 建物も人も王都の名に恥じないほどの大きさ、種類、量だった。


「すごいな」


 素直に思った。俺は本当に転生して、本当にゲームのようなファンタジーの世界にやってきたらしい。


「マコト様もそう思いますか! 私、この街が大好きだから嬉しいです」


 エリスは満面の笑みだった。

 生まれ育った街を褒められて嬉しいらしかった。

 笑っているエリスを見るとこっちもほっこりする。

 そして俺たちは馬車の駅から馬車の乗り、目的地へと向かった。







 そして、昼が過ぎたころに目的の村についたのだった。

 馬車の中でエリスは他愛のない話をして、自分の身の上を話してくれた。

 魔物に襲われた家族の唯一の生き残りがエリスであり、聖痕があったがゆえに教会に引き取れられた。そして、マザー・リースに育てられたのだそうだ。そして、大変な修行の日々。

 おじさんはそんな話を聞くだけでうるっときてしまう。


(ええ娘や....)


 俺は話を聞きながら心の中で深くうなずきまくっていた。

 そんなこんなで村についたのだった。


「おお、聖女様。ようこそお越しくださいました」


 長老のおじいさんがうやうやしく馬車を迎えた。さらに子供たちがカゴいっぱいの花びらを放ってエリスを歓迎する。

 見た感じ小さな村だったが、エリスへの対応は大したものだった。おそらくここに村の大部分の人が集まっていると思われた。

 ちなみに俺の姿は一般人には見えていないらしい。俺が見えるのはエリスが能力として守護者を行使した時のみ。それ以外では一定以上の魔力を持つものだけが見えるそうだ。


「ありがとうございます!」


 エリスは笑顔で元気に答えた。

 そして、そのまま村長の家へと案内された。

 村長の家といっても他の家屋と変わらない。質素な木造の家だ。


「モンスターが出ているのはここから南へ行った街道です。何人か戦士を雇いましたが皆歯が立たず。困り果てていたのです」

「なるほど、それで教会にかけ合ったのですね」

「はい、聖女様の守護者様ならば、あのモンスターでも倒してくださると。お頼みした次第なのです」


 道すがらにエリスに聞いたが。守護者というのはこの世界でも最上位に位置する精霊なのだそうだ。人間が使役できるものの中では間違いなく最高ランク。

 守護者を使役できる聖女というのは大魔術師だの剣聖だのレジェンドランクの冒険者だのと同じくらいの扱いらしい。それたがどれだけのものなのかはイメージすることしかできなかったが、つまり世の中でも相当な強さの存在という扱いなのだそうだ。

 そして、聖女は教会に所属しているため仕事の依頼料金が格段に安いらしい。なので国中から仕事の依頼があるのだそうだ。

「お任せください! この第6聖女エリス、必ずやみなさんを困らすモンスターを打ち倒して見せましょう」

「おお頼もしい。どうかお願いいたします」


 エリスはやる気まんまんだった。

 そういうわけで、エリスと俺の初めての仕事が始まったのだった。
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