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不機嫌なサンタさん
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サンタは怒っていた。
ものすごく不機嫌だった。
椅子に座るサンタの横にうずくまるトナカイもおどおどするほどだった。
サンタはものすごいしかめつらで赤い服に赤い帽子を被りながら暖炉の火を見ていた。いや、睨んでいた。恨みでもあるのかというくらい睨んでいた。
「ダメだな」
サンタはぽつりと言った。
トナカイはびくりと体を震わせた。
「ダメだ。今年もハロウィンが盛り上がってた」
サンタはそう言いながら天井に目を移した。人の顔みたいに見える模様をぼんやり睨む。
「このままじゃいつかクリスマスより盛り上がるようになる。非常にまずい」
サンタはどうやら、大盛り上がりのハロウィンに嫉妬しているらしかった。どう考えてもまだクリスマスの方が盛り上がっているのに。どうしても盛り上がるハロウィンのことが気に食わないようだった。
サンタはハロウィンの日、食い入るようテレビやネットのニュースを見ていたのだ。そこいら中で盛り上がるハロウィンの様子を見ていたのだ。
そして大いに震えていたのだ。それはガタガタ震えていたのだ。怖くて顔をひきつらせていたのだ。どんどん盛り上がるハロウィンに怯えていたのだ。
「クリスマスは由緒正しいイベントだ。そうだろう? ハロウィンよりも」
トナカイは答えない。ただブルル、と鼻を鳴らすだけだ。
「大体ハロウィンってなんなんだ。かぼちゃとかお化けとか。一体なんのお祭りなんだ。わしは分からん」
そう言うサンタにトナカイはおずおずと鼻で押しスマホを差し出す。
そこにはハロウィンの説明が表示されていた。
「ケルト人の伝統行事がルーツ? キリスト教の影響もある? なんだ由緒正しいじゃないか。まずいぞこれは」
サンタはちゃらんぽらんだと思っていたライバルが以外にしっかりしていたことを知り焦っていた。サンタは若造がこしらえた新しい祭りだと思っていたのだ。
「いやでも、それにしちゃ浮かれすぎじゃないか?」
トナカイはブルルとまた鼻を鳴らした。
「なに? クリスマスも結構浮かれている? それを言われたら返す言葉もないが。いや、お前はどっちの味方なんだ」
サンタは厳しい目をトナカイに向けた。途端にトナカイは目をそらした。
「とにかくまずい。気に食わん。ハロウィンが気に食わんわしは」
サンタは嫉妬深くハロウィンに決して気を許そうとはしなかった。
「困った。怖い。わしはどうすれば良いんだ、なぁ」
そしてしまいには弱り切った表情で半べその声を出しながらトナカイに聞くのだった。
トナカイはふす、と鼻を鳴らす。
困った主人だと。困った嫉妬深くて小心者で泣き虫な主人だと。
でもこんな人でもクリスマスには本当に世界中の子供に夢を届けるのでトナカイは嫌いにはならなかった。ただちょっとうんざりするだけで。
「今年のクリスマス子供たちは喜んでくれるだろうか。ハロウィンの方が楽しかったって言わないだろうか。はぁぁ」
そうしてサンタは体中の力が抜けて溶けるように椅子に深くもたれかかっていった。
こうなったサンタは気分が落ち込み続けてやがてそのまま寝るのをトナカイは知っていた。
だから、この気分が不安定な状態もようやく終わりだった。
「どうか楽しんで...」
お祈りのような呟きを最後にサンタは寝息を立て始めた。
ブルル、トナカイはまた鼻を鳴らす。そしてトナカイもまた眠りにつくのだった。
クリスマスまではまだ日にちがあった。それまでこのナイーブな主人に付き合わなくてはならないのだった。
ものすごく不機嫌だった。
椅子に座るサンタの横にうずくまるトナカイもおどおどするほどだった。
サンタはものすごいしかめつらで赤い服に赤い帽子を被りながら暖炉の火を見ていた。いや、睨んでいた。恨みでもあるのかというくらい睨んでいた。
「ダメだな」
サンタはぽつりと言った。
トナカイはびくりと体を震わせた。
「ダメだ。今年もハロウィンが盛り上がってた」
サンタはそう言いながら天井に目を移した。人の顔みたいに見える模様をぼんやり睨む。
「このままじゃいつかクリスマスより盛り上がるようになる。非常にまずい」
サンタはどうやら、大盛り上がりのハロウィンに嫉妬しているらしかった。どう考えてもまだクリスマスの方が盛り上がっているのに。どうしても盛り上がるハロウィンのことが気に食わないようだった。
サンタはハロウィンの日、食い入るようテレビやネットのニュースを見ていたのだ。そこいら中で盛り上がるハロウィンの様子を見ていたのだ。
そして大いに震えていたのだ。それはガタガタ震えていたのだ。怖くて顔をひきつらせていたのだ。どんどん盛り上がるハロウィンに怯えていたのだ。
「クリスマスは由緒正しいイベントだ。そうだろう? ハロウィンよりも」
トナカイは答えない。ただブルル、と鼻を鳴らすだけだ。
「大体ハロウィンってなんなんだ。かぼちゃとかお化けとか。一体なんのお祭りなんだ。わしは分からん」
そう言うサンタにトナカイはおずおずと鼻で押しスマホを差し出す。
そこにはハロウィンの説明が表示されていた。
「ケルト人の伝統行事がルーツ? キリスト教の影響もある? なんだ由緒正しいじゃないか。まずいぞこれは」
サンタはちゃらんぽらんだと思っていたライバルが以外にしっかりしていたことを知り焦っていた。サンタは若造がこしらえた新しい祭りだと思っていたのだ。
「いやでも、それにしちゃ浮かれすぎじゃないか?」
トナカイはブルルとまた鼻を鳴らした。
「なに? クリスマスも結構浮かれている? それを言われたら返す言葉もないが。いや、お前はどっちの味方なんだ」
サンタは厳しい目をトナカイに向けた。途端にトナカイは目をそらした。
「とにかくまずい。気に食わん。ハロウィンが気に食わんわしは」
サンタは嫉妬深くハロウィンに決して気を許そうとはしなかった。
「困った。怖い。わしはどうすれば良いんだ、なぁ」
そしてしまいには弱り切った表情で半べその声を出しながらトナカイに聞くのだった。
トナカイはふす、と鼻を鳴らす。
困った主人だと。困った嫉妬深くて小心者で泣き虫な主人だと。
でもこんな人でもクリスマスには本当に世界中の子供に夢を届けるのでトナカイは嫌いにはならなかった。ただちょっとうんざりするだけで。
「今年のクリスマス子供たちは喜んでくれるだろうか。ハロウィンの方が楽しかったって言わないだろうか。はぁぁ」
そうしてサンタは体中の力が抜けて溶けるように椅子に深くもたれかかっていった。
こうなったサンタは気分が落ち込み続けてやがてそのまま寝るのをトナカイは知っていた。
だから、この気分が不安定な状態もようやく終わりだった。
「どうか楽しんで...」
お祈りのような呟きを最後にサンタは寝息を立て始めた。
ブルル、トナカイはまた鼻を鳴らす。そしてトナカイもまた眠りにつくのだった。
クリスマスまではまだ日にちがあった。それまでこのナイーブな主人に付き合わなくてはならないのだった。
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