19 / 22
第19話
しおりを挟む
怪物は咆吼した。金属がこすれるような金切り声と地響きのような重低音が混じり合った不気味な声。
怪物は迷うことなくアリシアに襲いかかる。
とんでもない速度でその片手に握られた黒い剣が振り下ろされる。
床は瞬時に砕け、階下が露わになった。
アリシアはそれをなんとかかわした。
最早受けることも、受け流すことも出来はしない。構えた剣にわずかにかすっただけで、体が再起不能の負傷を受けることが分かる。
怪物は床をぶち抜いた剣をそのまま引き抜き、今度は横薙ぎにアリシアに振るった。
アリシアは限界まで身をかがめてこれをかわす。
そして、怪物の足下に入り、通り抜けざまにその右足に紅い刃を振り抜いた。
怪物の右足が切断される。バランスを失い怪物は膝を付いた。
「よっしゃあ!!」
パックが言うが早いか、アリシアはそのまま怪物の膝から肩まで鎧を蹴って駆け上がり、そのままその大きな頭を切り払った。
怪物の頭半分が支えを失い、ゆっくりと落下していく。そのまま床に重い音を立てて跳ねる。
「倒したか!!!」
床を這うアリシアの影からパックが叫ぶ。
首をはねた。さっきまでならこれで黒騎士は一旦消滅するはずだ。
しかし、
「ちっ!! ダメか!!!」
舌打ちと共にアリシアは怪物の肩から離脱する。
怪物の左手が襲いかかったからだ。
床に着地したアリシアが見たのは右足を切り落とされ、頭はね飛ばされた怪物がその頭を手で探り拾い上げ、切れた右足を繋ぎ直すところだった。
「もう倒せないのかよ!!」
「らしいな。これでわずかにあった討伐して時間をかせぐ道は絶たれたというわけだ」
怪物はが拾い上げた頭を首に据えるとそれは繋がり、あっという間に怪物は元通りになった。
怪物はまた吠え、アリシアに襲いかかる。
「くそっ!!」
アリシアは後に飛び退く。近づいた『王族の寝室』がまた遠ざかる。
怪物の剣がまた床を砕き大穴を空けた。
また怪物は『王族の寝室』を背に、守るように立っている。
「またこの配置か」
「どうにかしてあいつをかいくぐって部屋に入りたいところだがな」
怪物は侵入者が決して入らないように後にある部屋の前に立ちはだかる。
「どうする。倒せない、あの攻撃の速度。このままだと部屋に入るのなんか夢のまた夢だぞ」
「確かに困難を極めるが。不可能なわけじゃない」
そう言ってアリシアは走り出した。今度はアリシアから仕掛けるのだ。
「策はあるのか!?」
叫ぶパックの声に答える余裕さえない。
怪物はアリシアが走り出したのと同時に動いた。瞬きする間もなくアリシアの眼前に怪物の刃が迫る。
アリシアはそれをかわす。鼻先すれすれを黒い刃が通り抜けた。
そのままアリシアはすべるように怪物の両足の間に入り、そのまま回転してその両足を切断する。
怪物は体勢を崩したが、崩しながらも怪物は剣を振るった。
アリシアの元に切っ先が迫る。アリシアでもかわしきれない。
やむなくカタナでそれを受けるしかなかった。
「ぐぅっ!!!!」
アリシアから苦悶の声が漏れる。カタナが高く跳ね上げられる。紅い剣はアリシアの両手から吹き飛ばされアリシアの後方に落下した。
「大丈夫か!? いやヤバそうだな!!」
アリシアの右腕は力なく垂れ下がっていた。
「右腕がもうダメだな。左腕は....まだ動く」
アリシアは脂汗を流しながら左腕を動かす。小さなうめき声を漏らしたあたり万全とは言えないようだ。怪物が剣を振るった体勢が悪かったからだろう。それでもこの程度で済んだと言えた。
そして、そんなことは怪物にはまったく関係の無い話だ。
トドメと言わんばかりに、両断された両足のままひざを付いてアリシアに剣を振るう。
アリシアはそれを後方に転がりながらかわし、床に刺さった自分の剣を引き抜いた。
そしてそのまま、
「喰らえ」
カタナを投げたのだった。
投げたカタナは回転して、そのまま怪物の頭を両断した。
目にあたる部分を損傷した怪物は視力を失ったようだ。今までより動きが緩慢になっていた。
しかし、怪物はアリシアの息づかいだけでその居場所を突き止めていた。
迷わず怪物は剣を振り下ろす。
「外れだ!」
しかし、アリシアはそれをかわす。かすったアリシアの髪が何房か舞って落ちていく。 怪物は咆吼した。苦痛によるものか苛立ちによるものか。
怪物はアリシアの足音を頼りに今度こそ渾身の一撃を見舞う。
怪物が破壊したのはしかし、それは肉ではなく石の壁。
「これで入れる」
そこには砕け散った『王族の寝室』の壁があった。
怪物は再び叫んだ。
アリシアにもそれが悲鳴であることが分かった。
怪物は迷うことなくアリシアに襲いかかる。
とんでもない速度でその片手に握られた黒い剣が振り下ろされる。
床は瞬時に砕け、階下が露わになった。
アリシアはそれをなんとかかわした。
最早受けることも、受け流すことも出来はしない。構えた剣にわずかにかすっただけで、体が再起不能の負傷を受けることが分かる。
怪物は床をぶち抜いた剣をそのまま引き抜き、今度は横薙ぎにアリシアに振るった。
アリシアは限界まで身をかがめてこれをかわす。
そして、怪物の足下に入り、通り抜けざまにその右足に紅い刃を振り抜いた。
怪物の右足が切断される。バランスを失い怪物は膝を付いた。
「よっしゃあ!!」
パックが言うが早いか、アリシアはそのまま怪物の膝から肩まで鎧を蹴って駆け上がり、そのままその大きな頭を切り払った。
怪物の頭半分が支えを失い、ゆっくりと落下していく。そのまま床に重い音を立てて跳ねる。
「倒したか!!!」
床を這うアリシアの影からパックが叫ぶ。
首をはねた。さっきまでならこれで黒騎士は一旦消滅するはずだ。
しかし、
「ちっ!! ダメか!!!」
舌打ちと共にアリシアは怪物の肩から離脱する。
怪物の左手が襲いかかったからだ。
床に着地したアリシアが見たのは右足を切り落とされ、頭はね飛ばされた怪物がその頭を手で探り拾い上げ、切れた右足を繋ぎ直すところだった。
「もう倒せないのかよ!!」
「らしいな。これでわずかにあった討伐して時間をかせぐ道は絶たれたというわけだ」
怪物はが拾い上げた頭を首に据えるとそれは繋がり、あっという間に怪物は元通りになった。
怪物はまた吠え、アリシアに襲いかかる。
「くそっ!!」
アリシアは後に飛び退く。近づいた『王族の寝室』がまた遠ざかる。
怪物の剣がまた床を砕き大穴を空けた。
また怪物は『王族の寝室』を背に、守るように立っている。
「またこの配置か」
「どうにかしてあいつをかいくぐって部屋に入りたいところだがな」
怪物は侵入者が決して入らないように後にある部屋の前に立ちはだかる。
「どうする。倒せない、あの攻撃の速度。このままだと部屋に入るのなんか夢のまた夢だぞ」
「確かに困難を極めるが。不可能なわけじゃない」
そう言ってアリシアは走り出した。今度はアリシアから仕掛けるのだ。
「策はあるのか!?」
叫ぶパックの声に答える余裕さえない。
怪物はアリシアが走り出したのと同時に動いた。瞬きする間もなくアリシアの眼前に怪物の刃が迫る。
アリシアはそれをかわす。鼻先すれすれを黒い刃が通り抜けた。
そのままアリシアはすべるように怪物の両足の間に入り、そのまま回転してその両足を切断する。
怪物は体勢を崩したが、崩しながらも怪物は剣を振るった。
アリシアの元に切っ先が迫る。アリシアでもかわしきれない。
やむなくカタナでそれを受けるしかなかった。
「ぐぅっ!!!!」
アリシアから苦悶の声が漏れる。カタナが高く跳ね上げられる。紅い剣はアリシアの両手から吹き飛ばされアリシアの後方に落下した。
「大丈夫か!? いやヤバそうだな!!」
アリシアの右腕は力なく垂れ下がっていた。
「右腕がもうダメだな。左腕は....まだ動く」
アリシアは脂汗を流しながら左腕を動かす。小さなうめき声を漏らしたあたり万全とは言えないようだ。怪物が剣を振るった体勢が悪かったからだろう。それでもこの程度で済んだと言えた。
そして、そんなことは怪物にはまったく関係の無い話だ。
トドメと言わんばかりに、両断された両足のままひざを付いてアリシアに剣を振るう。
アリシアはそれを後方に転がりながらかわし、床に刺さった自分の剣を引き抜いた。
そしてそのまま、
「喰らえ」
カタナを投げたのだった。
投げたカタナは回転して、そのまま怪物の頭を両断した。
目にあたる部分を損傷した怪物は視力を失ったようだ。今までより動きが緩慢になっていた。
しかし、怪物はアリシアの息づかいだけでその居場所を突き止めていた。
迷わず怪物は剣を振り下ろす。
「外れだ!」
しかし、アリシアはそれをかわす。かすったアリシアの髪が何房か舞って落ちていく。 怪物は咆吼した。苦痛によるものか苛立ちによるものか。
怪物はアリシアの足音を頼りに今度こそ渾身の一撃を見舞う。
怪物が破壊したのはしかし、それは肉ではなく石の壁。
「これで入れる」
そこには砕け散った『王族の寝室』の壁があった。
怪物は再び叫んだ。
アリシアにもそれが悲鳴であることが分かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる