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最終話 見覚えのある山の中
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目が覚めると山の中に寝転んでいた。
繁る木々、立ち込める落ち葉の匂い。どこからか川のせせらぎと鳥の鳴き声が聞こえる。
そして、横には朽ちた車があった。
なぜ自分がここにいるのか。
前後の記憶が一瞬浮かんでこなかった。
少しぼんやりした後にはっきりと思い出す。
「俺生きてる?」
自分の体が無事なのを確認した。
そうだ、空から降り注ぐ光に照らされて、そこからの記憶がないのだ。
あの光は間違いなく自分に害のあるものだと思ったが。なぜ無事なのか。
状況を頭の中で整理する整理しながら目の前の朽ちた車を見ているとあることに気づいた。
「私の乗ってる車種と同じだ」
目の前の車はどうも元の世界で自分が乗っていた車と同じ軽四だった。
ついでに、この山はまるで自分が転生させられる前に走っていた故郷の山に似ている気がした。
「もしかして、戻ったのか?」
状況を見れば、自分が元の世界に戻ったような気がした。
「や、やった!」
まさかあの光はそうだったのか。正しくない手段で世界を渡った私を神は追い出したのかもしれない。
それなら、さっきまでの悪夢みたいな現実とはこれで綺麗におさらばということになる。
それは朗報だった。犯罪吸血鬼の子分にされたなんていう現実は受け入れて難いのだから。
「良かったぁ」
私はこぼした。
「良いわけないだろうが。無駄な魔力を使った」
「あぁあ!?」
声に振り向くとそこに立っていたのはイツカだった。まごう事なきあの吸血鬼だった。
「元の世界に戻ったんじゃ」
「んなわけあるか。転移で逃げただけだ」
「この車は私のそっくりだけど」
「はぁ? 偶然だろ。ここは奥多摩の山の中だ」
「なんてこった」
全て儚い夢だったらしい。ここはしっかりまだ異世界のようだ。私はがっくり肩を落とした。
「ほら行くぞ。まったく女神がこんなに早く目を付けるとは思わなかった。面倒なことになった」
「い、行くっていうのは?」
「お前は下僕だろうが。これからずっと私の僕として働くんだよ」
「マジかよ......」
私はなおうなだれた。現実は過酷だった。
「そういえばお前敬語が取れたな。良い心がけだ」
「もうどうでも良いよ.....」
私は投げやりに言った。
「でも香炉は手に入った。さて、こいつを元手に次は何するかな」
イツカはニシシと笑っている。どうやら筋金入りの犯罪者のようだ。
私の人生は終わり、新しい人生が始まってしまった。たぶんこれからどうやって逃げ出そうか必死に考える日々が続くのだと思う。
繁る木々、立ち込める落ち葉の匂い。どこからか川のせせらぎと鳥の鳴き声が聞こえる。
そして、横には朽ちた車があった。
なぜ自分がここにいるのか。
前後の記憶が一瞬浮かんでこなかった。
少しぼんやりした後にはっきりと思い出す。
「俺生きてる?」
自分の体が無事なのを確認した。
そうだ、空から降り注ぐ光に照らされて、そこからの記憶がないのだ。
あの光は間違いなく自分に害のあるものだと思ったが。なぜ無事なのか。
状況を頭の中で整理する整理しながら目の前の朽ちた車を見ているとあることに気づいた。
「私の乗ってる車種と同じだ」
目の前の車はどうも元の世界で自分が乗っていた車と同じ軽四だった。
ついでに、この山はまるで自分が転生させられる前に走っていた故郷の山に似ている気がした。
「もしかして、戻ったのか?」
状況を見れば、自分が元の世界に戻ったような気がした。
「や、やった!」
まさかあの光はそうだったのか。正しくない手段で世界を渡った私を神は追い出したのかもしれない。
それなら、さっきまでの悪夢みたいな現実とはこれで綺麗におさらばということになる。
それは朗報だった。犯罪吸血鬼の子分にされたなんていう現実は受け入れて難いのだから。
「良かったぁ」
私はこぼした。
「良いわけないだろうが。無駄な魔力を使った」
「あぁあ!?」
声に振り向くとそこに立っていたのはイツカだった。まごう事なきあの吸血鬼だった。
「元の世界に戻ったんじゃ」
「んなわけあるか。転移で逃げただけだ」
「この車は私のそっくりだけど」
「はぁ? 偶然だろ。ここは奥多摩の山の中だ」
「なんてこった」
全て儚い夢だったらしい。ここはしっかりまだ異世界のようだ。私はがっくり肩を落とした。
「ほら行くぞ。まったく女神がこんなに早く目を付けるとは思わなかった。面倒なことになった」
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