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プロローグ
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「おはようございます。目は覚めましたか? 自我はしっかりしていますか?」
「....ここは?」
目が覚めると不思議空間に俺はいた。
白い白い空間。
そこには美しいザ・女神みたいな人物が立っていて俺を見下ろしていた。
俺は地面とも思えない白い地面で寝転んでいたらしい。
「お名前を」
「坂下トウマ」
「正解!」
女神は親指を立ててグーとやってきた。
なんなんだ。
俺は確か、そうだ。俺は死んだのだ。
仕事の通勤中、車で国道を走っていると大型ダンプが突っ込んできてそのままオダブツだった。
クソ会社『篠原製紙』社員だった俺は会社にたどり着くことなくその命を終えたのだ。
まぁ、クソ会社に勤めているクソ人生だったから何も問題はないのだが。
違法残業、労働基準法違反、まるで管理の行き届いていない安全体制、パワハラ上司。
あの人間をゴミのように扱う会社ではどのみちいつか死んでいただろう。
こうしておさらばできて済々する。
残した親や兄弟は心残りだが。
「トウマ、第一の人生お疲れ様でした。そして、あなたはこれから第二の人生を始めます」
「第二の人生?」
首を捻ったが、状況から俺は察していた。
トラック事故、不思議空間、女神、この要素が示すのはひとつの答えだ。
「つまり異世界転生?」
「正解!」
女神はまた親指を立ててきた。なんだこのフランクな女神は。
「俺は何になるんですか?」
「それは行ってからのお楽しみ!」
女神は「ウフフ」などと言っている。
なんなんだ。
正直不安でたまらない。
まぁでも異世界転生といえば冒険者とかになってチートで無双できるんじゃないのか。一見最弱に見えるけど知恵と工夫で最強になれるんじゃないのか。
そう考えるとちょっと楽しみになってきた。
「ではでは、さっそく第二の人生をお楽しみに」
「え? もう?」
「あんまり引っ張っても良いことないですから」
「話の展開の話? ちょっとメタい、っていうか心の準備が.....」
そこで俺の意識はゆっくり途切れていった。
そして、俺に意識はまた復活した。
まず目に入ったのはごちゃついた室内。
なにかをぐつぐつと似ている鍋、鼻をつく異臭、そして分厚い本の数々。
これは、どうも俺のファンタジー知識をもとにすると魔法使いの工房のように思われた。
つまり、ひょっとしてもしかして、俺は魔法使いに転生したのか。
「良いじゃん良いじゃん。頭脳系良いじゃん」
頭を使って魔法を駆使して冒険するわけだ。悪くない。正直頭はよくないが、なんかスキルとかでなんとかなるのではないだろうか。
とりあえずなにもかもうまくいくという根拠のない自信が俺にはあった。
そしてやる気が湧いてくる。
正直まだ何がなんだか分かりはしないが、それなりにワクワクしている俺だった。
その時だった。
どたどたと音がした。上の階に続く階段からだ。
誰かが降りてくる。
そしてやがて現れたのはウェーブのかかった栗色の髪の少女だった。かなりの美人だ。顔のパーツが実に整っている。
ザ・魔法使いみたいなローブを着ていてザ・魔女みたいなとんがり帽をかぶっていた。
これはひょっとして魔法使いの幼馴染なのか。
「いつになくぼーっとしてるわね。調子悪いの?」
少女はそう言いながらパタパタと鍋の方に行ってしまう。
魔法薬的なものを煮込んでいるのだろう。
「そうでもない、調子はいいぞ」
俺はワクワクしながら答えた。
なにげない会話。俺はそれを演出していく。つもりだった。
しかし、少女は俺に振り返るとそのまま固まったのだ。
え? そんな固まること言ったか俺。
「あんたしゃべれるようになったの!?!??!?」
少女は驚愕から絶叫していた。
はぁ!? 俺は人間なんだからそらしゃべるだろう。もしかして喋れないような深刻な境遇の人物なのかと思った。
が、そこで部屋にあった鏡に映った自分の姿が目に入った。
「なんじゃこりゃあ!!!!?????」
俺は思わず叫んでいた。
そこに映っていたのはチートで無双しそうな魔法使いの少年の姿ではなかった。
映っていたのは止まり木に止まる一羽の青羽のカラスだった。
「....ここは?」
目が覚めると不思議空間に俺はいた。
白い白い空間。
そこには美しいザ・女神みたいな人物が立っていて俺を見下ろしていた。
俺は地面とも思えない白い地面で寝転んでいたらしい。
「お名前を」
「坂下トウマ」
「正解!」
女神は親指を立ててグーとやってきた。
なんなんだ。
俺は確か、そうだ。俺は死んだのだ。
仕事の通勤中、車で国道を走っていると大型ダンプが突っ込んできてそのままオダブツだった。
クソ会社『篠原製紙』社員だった俺は会社にたどり着くことなくその命を終えたのだ。
まぁ、クソ会社に勤めているクソ人生だったから何も問題はないのだが。
違法残業、労働基準法違反、まるで管理の行き届いていない安全体制、パワハラ上司。
あの人間をゴミのように扱う会社ではどのみちいつか死んでいただろう。
こうしておさらばできて済々する。
残した親や兄弟は心残りだが。
「トウマ、第一の人生お疲れ様でした。そして、あなたはこれから第二の人生を始めます」
「第二の人生?」
首を捻ったが、状況から俺は察していた。
トラック事故、不思議空間、女神、この要素が示すのはひとつの答えだ。
「つまり異世界転生?」
「正解!」
女神はまた親指を立ててきた。なんだこのフランクな女神は。
「俺は何になるんですか?」
「それは行ってからのお楽しみ!」
女神は「ウフフ」などと言っている。
なんなんだ。
正直不安でたまらない。
まぁでも異世界転生といえば冒険者とかになってチートで無双できるんじゃないのか。一見最弱に見えるけど知恵と工夫で最強になれるんじゃないのか。
そう考えるとちょっと楽しみになってきた。
「ではでは、さっそく第二の人生をお楽しみに」
「え? もう?」
「あんまり引っ張っても良いことないですから」
「話の展開の話? ちょっとメタい、っていうか心の準備が.....」
そこで俺の意識はゆっくり途切れていった。
そして、俺に意識はまた復活した。
まず目に入ったのはごちゃついた室内。
なにかをぐつぐつと似ている鍋、鼻をつく異臭、そして分厚い本の数々。
これは、どうも俺のファンタジー知識をもとにすると魔法使いの工房のように思われた。
つまり、ひょっとしてもしかして、俺は魔法使いに転生したのか。
「良いじゃん良いじゃん。頭脳系良いじゃん」
頭を使って魔法を駆使して冒険するわけだ。悪くない。正直頭はよくないが、なんかスキルとかでなんとかなるのではないだろうか。
とりあえずなにもかもうまくいくという根拠のない自信が俺にはあった。
そしてやる気が湧いてくる。
正直まだ何がなんだか分かりはしないが、それなりにワクワクしている俺だった。
その時だった。
どたどたと音がした。上の階に続く階段からだ。
誰かが降りてくる。
そしてやがて現れたのはウェーブのかかった栗色の髪の少女だった。かなりの美人だ。顔のパーツが実に整っている。
ザ・魔法使いみたいなローブを着ていてザ・魔女みたいなとんがり帽をかぶっていた。
これはひょっとして魔法使いの幼馴染なのか。
「いつになくぼーっとしてるわね。調子悪いの?」
少女はそう言いながらパタパタと鍋の方に行ってしまう。
魔法薬的なものを煮込んでいるのだろう。
「そうでもない、調子はいいぞ」
俺はワクワクしながら答えた。
なにげない会話。俺はそれを演出していく。つもりだった。
しかし、少女は俺に振り返るとそのまま固まったのだ。
え? そんな固まること言ったか俺。
「あんたしゃべれるようになったの!?!??!?」
少女は驚愕から絶叫していた。
はぁ!? 俺は人間なんだからそらしゃべるだろう。もしかして喋れないような深刻な境遇の人物なのかと思った。
が、そこで部屋にあった鏡に映った自分の姿が目に入った。
「なんじゃこりゃあ!!!!?????」
俺は思わず叫んでいた。
そこに映っていたのはチートで無双しそうな魔法使いの少年の姿ではなかった。
映っていたのは止まり木に止まる一羽の青羽のカラスだった。
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