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第一章 賽は投げられた
狂信者は神の領域を侵す 後編
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本編の補足っぽい会話多めのお話になってます。
*****
帝国に強制送還された私は、皇族籍を剥奪され、裁判で禁固刑となり、北の辺境地にある監獄島に収監された。
「代償の取り立てにお邪魔しま~す。」
闇市場の店員だった糸目の男が、何故か私が収監されている独房の中にいた。
驚きで声も出ない私を面白そうに見つめながら、糸目の男は陽気に話しを続ける。
「君の代償は何にしようかな? 因みに外した方の子はね、『運命の番』を認識できなくなる、にしたんだよ。
あの子が外すのは予想外だったんだけど、まあ、仕方ないよね。
でも、『魂の番』の他に『運命の番』が五人もいるキメラだったからさ、余計な五人分、貰っちゃった♪」
「お前はっ、一体、何なんだ!」
「うーん、簡単に言うなら、君が見たがってたオズ・フラウロスの同類、かな?」
「悪魔、なのか?」
「残念ながら、そう呼ばれた事はないかな。『悪魔』ってニックネームはさ、君の方が合ってるよ。」
「は?」
「だって君は神の領域を侵してオズ・フラウロスを切り刻んだでしょ。
恋い焦がれた悪魔を自らの手で切り刻んで、何度も殺したよね。
本物の悪魔より、よっぽど悪魔らしいよ。
DNAなんかに惑わされずに、夜嶌の受精卵に手を出さなければ本物のオズ・フラウロスに会えたのにね。」
「どういう事だ?」
「オズ・フラウロスはね、憑きものじゃないんだよ。先祖返りとか転生って言えば判りやすいかな。」
「まさか、・・・世伊琉皇子が?」
「そう、直近では世伊琉皇子とオズ・フラウロスがイコール。本当の『極東の悪魔』は世伊琉皇子の方。オズ・フラウロスは世伊琉皇子が獣化した時の名前だよ。」
「どうして、・・・知っていたなら、どうして教えてくれなかったんだ?」
そうだ、知っていればクローンなんか作らなかった!
オリジナルが本当にオズ・フラウロスなら、そんな手間をかける必要なんか無かったのに!
「君は代償の支払いを惜しんで、余計な実験を続けた挙げ句に、顕現しないから出来損ない、って決めつけて処分しようとしてた。
ねえ、そんな君があの時に忠告してたとして、本当に作らなかった?
作らなかったとしても、今と同じように誘拐するか、それ以前に受精卵の方を盗んでたんじゃない?」
図星を突かれて言葉も出ない。
「どっちにしろさ、全ての分岐点を間違えてしまった君はゲームオーバーだよね。
そうだな~、代償は君が切り刻んで殺したオズ・フラウロスの魂の欠片たちの分の『禊ぎ』をすることにしようかな。
代償がこの程度で済むこと、あの子に感謝してよね。
本当なら君の魂を代償にオズ・フラウロスの魂の修復をする予定だったんだ。
でも時間はかかるけれど『魂の番』の魔力の方が確実で安全に修復出来るから、君の魂は要らなくなった。」
「待ってくれ、お前は全て知っていたのに、何で止めなかったんだ? 何で禁制品を私に売ったんだ?」
「最初から全て知ってた訳じゃないよ。夜嶌の子が誘拐された時の捜査員の『憑きもの』が僕の眷族でね、僕たちは眷族間で情報を共有できるんだよ。それで病院関係者たちの事を調べていた流れで、君にオズ・フラウロスが切り刻まれたこと、夜嶌の子を拐かしたのが君だってことを突き止めたんだ。」
「さっきも言ってたが、切り刻んだとか、何度も殺したとか、私はセイルにそんなこと・・・」
「受精卵の事だよ。人為的に分裂させてコピー作った時に魂が半分切り離されたんだ。
その後、遺伝子操作して、何回もコピーの方、分裂させて、更にコピーをたくさん作って、コピーの分だけ魂を切り刻んだ。
そのコピー達、セイルの分を残して全部、体外受精させて、失敗して水子にしたのは君だ。
水子になった魂の欠片たちの大半は君に取り憑いてたよ。
あの首輪は魂の欠片たちを保護して本体に戻す為に作った魔道具なんだ。
代償を支払って貰う為、君がはめる必要があったから、姿変えとか隷属のオプションをつけて売り込んだんだよ。」
ぐにゃり
と、糸目の男の姿が歪んだ。
糸目の男の姿が消え、代わりに浄衣を纏った狐がそこにいた。
「そろそろ時間だから、雑談はお終い。」
糸目の男の声でソレは言った。
「『禊ぎ』頑張ってね。」
*****
帝国に強制送還された私は、皇族籍を剥奪され、裁判で禁固刑となり、北の辺境地にある監獄島に収監された。
「代償の取り立てにお邪魔しま~す。」
闇市場の店員だった糸目の男が、何故か私が収監されている独房の中にいた。
驚きで声も出ない私を面白そうに見つめながら、糸目の男は陽気に話しを続ける。
「君の代償は何にしようかな? 因みに外した方の子はね、『運命の番』を認識できなくなる、にしたんだよ。
あの子が外すのは予想外だったんだけど、まあ、仕方ないよね。
でも、『魂の番』の他に『運命の番』が五人もいるキメラだったからさ、余計な五人分、貰っちゃった♪」
「お前はっ、一体、何なんだ!」
「うーん、簡単に言うなら、君が見たがってたオズ・フラウロスの同類、かな?」
「悪魔、なのか?」
「残念ながら、そう呼ばれた事はないかな。『悪魔』ってニックネームはさ、君の方が合ってるよ。」
「は?」
「だって君は神の領域を侵してオズ・フラウロスを切り刻んだでしょ。
恋い焦がれた悪魔を自らの手で切り刻んで、何度も殺したよね。
本物の悪魔より、よっぽど悪魔らしいよ。
DNAなんかに惑わされずに、夜嶌の受精卵に手を出さなければ本物のオズ・フラウロスに会えたのにね。」
「どういう事だ?」
「オズ・フラウロスはね、憑きものじゃないんだよ。先祖返りとか転生って言えば判りやすいかな。」
「まさか、・・・世伊琉皇子が?」
「そう、直近では世伊琉皇子とオズ・フラウロスがイコール。本当の『極東の悪魔』は世伊琉皇子の方。オズ・フラウロスは世伊琉皇子が獣化した時の名前だよ。」
「どうして、・・・知っていたなら、どうして教えてくれなかったんだ?」
そうだ、知っていればクローンなんか作らなかった!
オリジナルが本当にオズ・フラウロスなら、そんな手間をかける必要なんか無かったのに!
「君は代償の支払いを惜しんで、余計な実験を続けた挙げ句に、顕現しないから出来損ない、って決めつけて処分しようとしてた。
ねえ、そんな君があの時に忠告してたとして、本当に作らなかった?
作らなかったとしても、今と同じように誘拐するか、それ以前に受精卵の方を盗んでたんじゃない?」
図星を突かれて言葉も出ない。
「どっちにしろさ、全ての分岐点を間違えてしまった君はゲームオーバーだよね。
そうだな~、代償は君が切り刻んで殺したオズ・フラウロスの魂の欠片たちの分の『禊ぎ』をすることにしようかな。
代償がこの程度で済むこと、あの子に感謝してよね。
本当なら君の魂を代償にオズ・フラウロスの魂の修復をする予定だったんだ。
でも時間はかかるけれど『魂の番』の魔力の方が確実で安全に修復出来るから、君の魂は要らなくなった。」
「待ってくれ、お前は全て知っていたのに、何で止めなかったんだ? 何で禁制品を私に売ったんだ?」
「最初から全て知ってた訳じゃないよ。夜嶌の子が誘拐された時の捜査員の『憑きもの』が僕の眷族でね、僕たちは眷族間で情報を共有できるんだよ。それで病院関係者たちの事を調べていた流れで、君にオズ・フラウロスが切り刻まれたこと、夜嶌の子を拐かしたのが君だってことを突き止めたんだ。」
「さっきも言ってたが、切り刻んだとか、何度も殺したとか、私はセイルにそんなこと・・・」
「受精卵の事だよ。人為的に分裂させてコピー作った時に魂が半分切り離されたんだ。
その後、遺伝子操作して、何回もコピーの方、分裂させて、更にコピーをたくさん作って、コピーの分だけ魂を切り刻んだ。
そのコピー達、セイルの分を残して全部、体外受精させて、失敗して水子にしたのは君だ。
水子になった魂の欠片たちの大半は君に取り憑いてたよ。
あの首輪は魂の欠片たちを保護して本体に戻す為に作った魔道具なんだ。
代償を支払って貰う為、君がはめる必要があったから、姿変えとか隷属のオプションをつけて売り込んだんだよ。」
ぐにゃり
と、糸目の男の姿が歪んだ。
糸目の男の姿が消え、代わりに浄衣を纏った狐がそこにいた。
「そろそろ時間だから、雑談はお終い。」
糸目の男の声でソレは言った。
「『禊ぎ』頑張ってね。」
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