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第一章 賽は投げられた
013 学食イベント その弐
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「でも、殿下の様子がヘンだよ?」
樹生がそう言った時、高村の後ろで静かに立っていたリシャール王子は、口元を両手で覆って小刻みに震えていた。
「ふっ・・・くっ・・・く・・・」
「殿下、堪えて下さい。」
リシャール王子の様子が変わった事に気付いた高村が、溜息混じりに呟いた。
「無理・・・プハッ、アハハッ!」
「殿下ぁ・・・」
腹を抱えて笑い出したリシャール王子を、高村は呆れ顔で見やった。
数分後、笑い終わって息を整えてから、リシャール王子は龍王院と北大路に視線を向けて、ニヤリと微笑んで見せた。
「高村、下がれ。」
「御意。」
高村は龍王院と北大路に向けていた威圧を解除すると、リシャール王子の背後に退いた。
「北大路君。」
リシャール王子は北大路に向かって右手を差し出した。
北大路は満面の笑顔でその手を取って握りしめた瞬間、グラリと目眩を起こして膝をついた。
「魔力が少ない者は、俺に不用意に触れるとこうなる。」
リシャール王子は北大路から手を離すと、今度はその手を龍王院に向けた。
「龍王院君。」
龍王院は怯む事無く差し出された手を握りしめた。
手が触れた瞬間からジワジワと魔力が吸い取られて行く。
『モットヨコセ』
ナニカがそう言った声が龍王院の脳内に届いた。
龍王院の目の前にいるリシャール王子の姿が二重にブレ、黒い残像のようなモノが龍王院の目前に現れた。
ソレは人の形を保ってはいたが、人ではなかった。
「犬神?」
龍王院の問いにソレは応えることなく、パックリと口を開けて龍王院の口に被りつくと、舌先に吸い付いた。
「うぐっ!」
吸い付かれた舌先から勢いよく魔力が吸い出されていくのを龍王院は感じた。
ソレを振り払おうと両手を動かすが何の手応えも無い。
ソレが満足して解放された時には辛うじて動けるギリギリの魔力しか残っていなかった。
「大丈夫かい?」
そう声を掛けられた時、龍王院と北大路は学食のテーブルに突っ伏すような体勢でソファー席に座っていた。
「どうぞ。」
体勢を立て直した二人の目の前に温かい紅茶が入った茶器が置かれた。
龍王院と北大路は自分たちの目の前で優雅に紅茶を嗜む青年を見つめた。
樹生がそう言った時、高村の後ろで静かに立っていたリシャール王子は、口元を両手で覆って小刻みに震えていた。
「ふっ・・・くっ・・・く・・・」
「殿下、堪えて下さい。」
リシャール王子の様子が変わった事に気付いた高村が、溜息混じりに呟いた。
「無理・・・プハッ、アハハッ!」
「殿下ぁ・・・」
腹を抱えて笑い出したリシャール王子を、高村は呆れ顔で見やった。
数分後、笑い終わって息を整えてから、リシャール王子は龍王院と北大路に視線を向けて、ニヤリと微笑んで見せた。
「高村、下がれ。」
「御意。」
高村は龍王院と北大路に向けていた威圧を解除すると、リシャール王子の背後に退いた。
「北大路君。」
リシャール王子は北大路に向かって右手を差し出した。
北大路は満面の笑顔でその手を取って握りしめた瞬間、グラリと目眩を起こして膝をついた。
「魔力が少ない者は、俺に不用意に触れるとこうなる。」
リシャール王子は北大路から手を離すと、今度はその手を龍王院に向けた。
「龍王院君。」
龍王院は怯む事無く差し出された手を握りしめた。
手が触れた瞬間からジワジワと魔力が吸い取られて行く。
『モットヨコセ』
ナニカがそう言った声が龍王院の脳内に届いた。
龍王院の目の前にいるリシャール王子の姿が二重にブレ、黒い残像のようなモノが龍王院の目前に現れた。
ソレは人の形を保ってはいたが、人ではなかった。
「犬神?」
龍王院の問いにソレは応えることなく、パックリと口を開けて龍王院の口に被りつくと、舌先に吸い付いた。
「うぐっ!」
吸い付かれた舌先から勢いよく魔力が吸い出されていくのを龍王院は感じた。
ソレを振り払おうと両手を動かすが何の手応えも無い。
ソレが満足して解放された時には辛うじて動けるギリギリの魔力しか残っていなかった。
「大丈夫かい?」
そう声を掛けられた時、龍王院と北大路は学食のテーブルに突っ伏すような体勢でソファー席に座っていた。
「どうぞ。」
体勢を立て直した二人の目の前に温かい紅茶が入った茶器が置かれた。
龍王院と北大路は自分たちの目の前で優雅に紅茶を嗜む青年を見つめた。
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