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第一章 賽は投げられた

012 学食イベント その壱

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伊千花が東條と共に伊玖磨がいる席に合流していた頃、リシャール王子は護衛の高村衛と共に食券の券売機の前に並ぶ行列の中にいた。

「王・子・様っ」

高村に教えて貰いながら食券を購入していたリシャール王子の背後にはいつの間にか北大路玄斗が立っていた。
「一緒に食べようよ。」
北大路がそう言ってリシャール王子の方に手を伸ばした。
「お触り禁止です。」
北大路とリシャール王子の間に高村が入りこんだ。
「減るもんじゃないし、ちょっと位いいじゃん。」
隙の無い高村を北大路は上目遣いでウルウルと涙目で見上げた。
リシャール王子は高村に、静かに首を横に振って見せた。
「貴方だけ特別扱いは出来ません。」
「えー!」
高村の言葉に北大路は不満気に声を上げた。
「玄斗、何を騒いでいる。」
そこへ龍王院枢がやって来た。
龍王院は北大路を牽制する高村と、高村の背後で無表情にその様子を眺めるリシャール王子の姿を見た。
「龍王院君、君のとこの副会長君はバカなのかな? 殿下との昼の会食は各学年1名づつ、名簿順って決めてたよね。」
高村はニッコリと黒く微笑んだ。
「ルールを守らせる立場の生徒会の役員が割り込みとか、ちゃんと躾とけよな。」
「も、申し訳ない。」
高村の威圧に龍王院と北大路は思わず一歩引いてしまった。


その様子を離れたテラス席の方から伊鶴と伊吹、そして樹生いつきが眺めていた。
たつき・・・、フードもう少し深く被って。」
「うん。」
龍王院と北大路の様子に苦笑しつつ、伊鶴は樹生を労るようにフード越しに頭を撫でた。
「あの二人は気付いちゃったみたいだねぇ。」
入れ替わりチェンジリングした方がいいかな?」
「たつきは、今日のシフトに入ってないよね?」
「でも、殿下の様子がヘンだよ?」
    
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