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第一章 賽は投げられた

賽の河原 ~主人公視点~

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ボクは河原で石を積み上げていた。
周りにいる子供たちが皆そうしていたから、ボクもそうしなければいけないと思ったんだ。
時々、鬼さんが来て、皆が積み上げた石を崩してしまう。
でも皆は鬼さんに対して文句一つ言わずに、黙々と石をまた最初から積み上げる。
毎日、その繰り返し。

「ねぇ、どして、石、崩しちゃうの?」
ある日、ボクは思い切って鬼さんに聞いてみた。
「仕事?だから。」
「じゃあ、皆は石を積むのお仕事?」
「石を積むのは、禊ぎ、だ。」
「禊ぎって何?」
「今のお前には関係無いこと。だってお前は、まだ死んでない。」
「えっ! ボク、生きてるの?」
「生きてるよ。だから、さっさと帰れよ?」

「なあ・・・」
石を積み上げるのに飽きて、ボーッとしゃがんでいると、鬼さんが隣にしゃがんでボクの頭を優しく撫でた。
「まだ帰らないのか?」
「帰りたいけど、怖い。」
「そうか・・・」
鬼さんは立ち上がって他の子供たちの方へ歩いていった。
歩きながら積み上がった石を崩していくのを忘れない、仕事熱心な鬼さんだ。

どれくらいの月日が過ぎたのか判らなくなった頃、鬼さんが誰かと一緒にやって来た。
「おい、お前、コイツと一緒に帰れ。」
鬼さんと一緒にいたのは本国にいるはずのボクの従兄弟、伊織くんだった。
「どして、ここにいるの? 伊織くん、死んじゃったの?」
涙目になったボクに伊織くんは優しい声で「死んでないよ。」と言ってくれた。
「伊月がずっと起きないから迎えに来たんだよ。みんな心配してる。伊千花なんか毎日泣いてるよ。」
「ボク、本当は帰りたい。・・・でも、あの子達がいるから怖い・・・」
「うん、じゃあ、もう少しここにいようか? 伊月がまだここに居たいなら、伊月が淋しく無いように僕も一緒にここにいるよ。一緒にどうしたら怖く無くなるか考えよう。」
伊織くんはいつもボクに優しい。
いつも静かにボクに寄り添って護ってくれる。
伊織くんが側にいてくれるなら、もう怖いものは無い。
「お前ら~、いい加減、帰れよぉ・・・」
鬼さんの心底困ったような言い方がおかしくて、ボクは笑った。

あははっ

って、久しぶりに声を出して笑えたんだ。
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