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第一章 賽は投げられた
005 入寮日 その四
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龍王院枢と北大路玄斗は岩永理事長と共に一号棟の特別室がある三階のサロンに入った。
特別室は三階以上の各階に一区画づつ設けてあり、間取りは3LDK、高級ホテルのスイートルームのような作りになっている。
特別室の側にある専用サロンは寮の通常のサロンより広めで家具や茶器類もグレードが高めである。
リシャール王子はサロンの窓際にある一人掛けソファーに座っていた。
短めの灰色の髪をオールバックに流し、実年齢よりは少し上に見える。
瞳の色も灰色なせいか、整った顔をしているのに地味な印象だった。
三人が近くに行って挨拶をしても興味無さそうに一瞥してフルネームを名乗っただけだった。
寮や学園の説明も護衛の四人、近衛のミシェル卿、ダニエル卿、帝國から派遣された公安所属のSPの佐伯氏と高村氏との質疑応答が主で、王子は最初に名乗ったきり一言も話さなかった。
サロンを辞して生徒会役員の専用フロアに戻ると、龍王院と北大路はどちらともなく溜息を付いて役員用のサロンへと足を向けた。
サロンにはいつものメンバーが揃っていた。
「お疲れ~」
ソファーに座っていた小鳥遊が和やかに二人を出迎える。
その隣に座る東條は気怠げな様子でセンターテーブルの上のタブレットを見つめていた。
「コーヒー、飲む?」
ドリンクサーバーの近くにいた秋月大雅が茶器を人数分用意している。
「頼む。」
「オレのはキャラメルラテにして。」
二人は小鳥遊と東條と対面になるソファーに座った。
「王子様はどんな感じだったの?」
「身上書の写真通りの地味っ子。全然キラキラしてなかったー!」
小鳥遊の問いかけに北大路はさも残念そうな表情をしてみせた。
そして気分転換とばかりに秋月お手製のキャラメルラテを堪能する。
「外部新入生のオメガ二人はどうだったんだ?」
と、龍王院が小鳥遊に外部新入生の様子を話すように言った。
「二人とも写真と違ってさぁ、可愛らしぃ子達だったよ。髪色も目の色も顔も、いっちゃんに似てたしぃ。」
「マジ? 本人だと思う?」
「オメガちゃん達よりさぁ、春ちゃんが会ったベータの伊千花ちゃんの方が本命ぽいらしいよ。」
「春、そうなのか?」
「確信はまだ無いです。でも、写真じゃ無くて本人を見たら・・・君たちだってきっと心惹かれますよ・・・」
「そんなに似てるの?」
「ええ。」
東條はタブレット画面に表示されている『いっちゃん』の画像データの隣に平坂伊吹と天羽伊千花の身上書を並べて見せた。
「写真の見た目は平坂君が一番似ています。でも、天羽君は年相応に成長した『いっちゃん』だと思います。雰囲気とか喋り方、ちょっとした仕草が同じなんです。」
「土方って子の方は?」
「樹生ちゃんはさ、伊吹ちゃんの影武者?」
「何、その例え!」
「樹生ちゃんはね、似てるってより似せてる感が強い? オマケに番持ち。」
「百パー無し?」
「百パー無し、とは言い切れないよね。僕ら十年のブランクあるし。」
小鳥遊の言葉に全員押し黙る。
「私は自分の直感を信じますよ。」
静寂の中、最初に東條がそう言った。
「オレは三人、直に見て考えるわ。」
と、北大路が続く。
「俺も、見てからにする。」
と、秋月。
「僕も伊千花ちゃんの実物見てからかなぁ?」
と、小鳥遊。
「俺は・・・」
そう言い掛けた龍王院の脳裏に何故かリシャール王子の顔が一瞬過った。
「俺も実物を見ないことには判断できないな。」
特別室は三階以上の各階に一区画づつ設けてあり、間取りは3LDK、高級ホテルのスイートルームのような作りになっている。
特別室の側にある専用サロンは寮の通常のサロンより広めで家具や茶器類もグレードが高めである。
リシャール王子はサロンの窓際にある一人掛けソファーに座っていた。
短めの灰色の髪をオールバックに流し、実年齢よりは少し上に見える。
瞳の色も灰色なせいか、整った顔をしているのに地味な印象だった。
三人が近くに行って挨拶をしても興味無さそうに一瞥してフルネームを名乗っただけだった。
寮や学園の説明も護衛の四人、近衛のミシェル卿、ダニエル卿、帝國から派遣された公安所属のSPの佐伯氏と高村氏との質疑応答が主で、王子は最初に名乗ったきり一言も話さなかった。
サロンを辞して生徒会役員の専用フロアに戻ると、龍王院と北大路はどちらともなく溜息を付いて役員用のサロンへと足を向けた。
サロンにはいつものメンバーが揃っていた。
「お疲れ~」
ソファーに座っていた小鳥遊が和やかに二人を出迎える。
その隣に座る東條は気怠げな様子でセンターテーブルの上のタブレットを見つめていた。
「コーヒー、飲む?」
ドリンクサーバーの近くにいた秋月大雅が茶器を人数分用意している。
「頼む。」
「オレのはキャラメルラテにして。」
二人は小鳥遊と東條と対面になるソファーに座った。
「王子様はどんな感じだったの?」
「身上書の写真通りの地味っ子。全然キラキラしてなかったー!」
小鳥遊の問いかけに北大路はさも残念そうな表情をしてみせた。
そして気分転換とばかりに秋月お手製のキャラメルラテを堪能する。
「外部新入生のオメガ二人はどうだったんだ?」
と、龍王院が小鳥遊に外部新入生の様子を話すように言った。
「二人とも写真と違ってさぁ、可愛らしぃ子達だったよ。髪色も目の色も顔も、いっちゃんに似てたしぃ。」
「マジ? 本人だと思う?」
「オメガちゃん達よりさぁ、春ちゃんが会ったベータの伊千花ちゃんの方が本命ぽいらしいよ。」
「春、そうなのか?」
「確信はまだ無いです。でも、写真じゃ無くて本人を見たら・・・君たちだってきっと心惹かれますよ・・・」
「そんなに似てるの?」
「ええ。」
東條はタブレット画面に表示されている『いっちゃん』の画像データの隣に平坂伊吹と天羽伊千花の身上書を並べて見せた。
「写真の見た目は平坂君が一番似ています。でも、天羽君は年相応に成長した『いっちゃん』だと思います。雰囲気とか喋り方、ちょっとした仕草が同じなんです。」
「土方って子の方は?」
「樹生ちゃんはさ、伊吹ちゃんの影武者?」
「何、その例え!」
「樹生ちゃんはね、似てるってより似せてる感が強い? オマケに番持ち。」
「百パー無し?」
「百パー無し、とは言い切れないよね。僕ら十年のブランクあるし。」
小鳥遊の言葉に全員押し黙る。
「私は自分の直感を信じますよ。」
静寂の中、最初に東條がそう言った。
「オレは三人、直に見て考えるわ。」
と、北大路が続く。
「俺も、見てからにする。」
と、秋月。
「僕も伊千花ちゃんの実物見てからかなぁ?」
と、小鳥遊。
「俺は・・・」
そう言い掛けた龍王院の脳裏に何故かリシャール王子の顔が一瞬過った。
「俺も実物を見ないことには判断できないな。」
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