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第一章 賽は投げられた

プロローグ~主人公視点~

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「すげーいい匂いするー」
そう言って入園したてのボクの周りに男の子達が五人位集まって来た。
五人は幼稚舎の別々の組だったけど、四六時中ボクに付きまとってベタベタしたり、項に鼻を寄せてクンクンしたりして、兎に角気持ち悪かった。
幼稚舎に行くのがとても嫌になったけど、入院中のお母様に心配をかけたくなくて、ボクは誰にも弱音を吐かずに我慢した。

でもある日、限界が来たんだ。

その日はクリスマスのお遊戯会の役を決める日で何故か早々にボクの役は眠り姫に決まり、相手役の王子を決める段階で揉めた。
まず女の子達が、姫役が男の子なら王子役は女の子がするべきだと言いはった。
男の子達はそんなのオーボーだとか、男女差別だとか騒いでしまった。
「クジで決めます!」
先生がそう言うとみんな静かになったからホッとした。
でもそこへ何故か他の組にいる筈のあの五人がやって来て「「王子役はオレに決まってんだろ!」」と言いだした。
「お前ら違う組だろ、関係無いじゃん!」
五人に対して組の男の子達女の子達がまた騒ぎ出した。
でもあの五人が絶対引かない事をボクは入園してからの半年間で悟っていた。
「先生、ボクお姫様より魔女役がしたいな。」
みんなボクの相手役を誰がするかで揉めている。だから相手役のない魔女役になれば揉め事は終わる筈だったのに、何故か全員が声を揃えて「「ダメ!」」って言って役を変えてくれない。
そしていつもの五人に取り囲まれてそれぞれに腕を掴まれた。
「なぁ、王子はオレが良いよな?」
「オレの方が良いに決まってる!」
「オレにしよう?」
「僕がいちばーん王子にふさわしいよね♡」
「お前の相手役をやれるのはオレ様だけだ。」
五人は口々に勝手な事を言って自分の方へボクを引き寄せようとして引っ張り始めた。
両腕だけ掴まれてた筈がいつの間にか四人に両腕両足にそれぞれ抱き付かれ、残り一人に後ろから頭を抱き込まれていた。
「やめて! 苦しい痛い!」
色んな方向に引っ張られて、ボクは痛みと苦しさとこのまま死んじゃうかもしれないという恐怖でいっぱいになって意識を失った。
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