【R18】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

藍生らぱん

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高等部 一年目 皐月 ゴールデンウィーク 

049 GW 2日目 3

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**健太視点**


青天の霹靂

って、こういう状況を言うのかもしれない。
抱きしめられながら、ぼんやりと空を仰いでそんなことを思った。

「健太、俺と付き合ってくれないか? 返事はいつでもいい。いつまでも待ってるから、俺とのことを考えて欲しい。」

そう言って城山は腕を緩めると、名残惜しそうに俺から離れていった。

***

思えば前世から、ヴィアンカにも俺にも「好きだ」と言い寄ってくる奴等の殆どは、俺たちの心情を無視して自分たちの気持ちを押し付け、既成事実を強行しようとするやからが多かった。

理事長セイランすばるエリオスも、そうだった。

それでもヴィアンカはエリオスに愛情があった。
ヴィアンカはエリオスを愛していた。
気付いた時には兄の方と婚約していたし、年の差もあったから諦めたんだ。
だから抱かれた記憶が無かった事が心残りだった。
その心残りを解消するために俺はすばるとヤッた。
俺の中のヴィアンカが求めていただけで、今、そのヴィアンカの想いは昇華されて残っていない。

すばるのことは嫌いじゃない。

でも俺は恋愛的にヴィアンカの想いに引きずられることはなかった。
すばるを心の底から好きになる事はできなかった。

***

「健太、どうしたの?」
駐車場に立ちつくしていた俺の側に、城山と入れ違いに帰って来た姉貴達がやって来た。
「城山が、」
「うん」
「俺の事、好きだって」
「ふふっ、城山君、やっと告白したんだね。」
姉貴と雪成義兄さんが、何故か俺の頭を二人して嬉しそうに撫で回している。

姉貴達は城山と俺がくっつくのを期待しているんだろうな。

城山のことは嫌いじゃない。

お互いの為人ひととなりもわかっているし、信頼関係もある。
そして俺の心情を無視せずに、気持ちの押し付けも無く、選択権をくれた。

理事長とすばるとは真逆の、大人で紳士的な男の人。

城山が告白してくれた時の声、表情、体温を思い返すと心が落ち着かない。

だって、セクハラ無しのまともな告白されたのが初めてだから!

「健太?」
「どうしたんだ?」
俺は、思わず姉貴に抱き付いてしまった。

「どうしよう、俺、初めてまともな人に告白された!」
「「ええー!?」」


***

着替えして、風呂に入って、夕飯食って、部屋に戻ろうとしたら姉貴に捕獲されて、ネタ帳と電子カルテ用のタブレットを抱えた大人達に囲まれた。

因みにネタ帳持ってるのは祖父母と親父。
電子カルテのタブレットは1台だけど、雪成義兄さんと叔父さん、叔母さん、お袋が並んで座っている前に置いてある。

「えっと、どういう状況?」
「初めてまともな人に告白された、んだよな?」
親父の質問に肯く。
どうやら親父が代表で俺を質問攻めにする流れのようだ。
「前世と今世含めて、初めてのまともな告白、それ以外はまともじゃなかったってことか?」
「前世は特にそうだな。力こそ正義の脳筋だらけの軍事国家の軍人だったし、挨拶代わりに「俺の女になれ」とか言って胸とか尻とか触りに来る将校がいたし、結婚して毎日踏んで欲しいとかいう変態なβとか、ムリヤリ既成事実作って結婚にこぎ着けようとする同僚のαとか、ヒートトラップしかけて来るΩもいたなぁ、男女問わず。」
「「「「うわ~」」」」
大人達が呻いた。
似たような経験の一つや二つ、みんなありそうだな・・・
「婚約者は?」
「ああー、アイツは幼年学校からの同級で、家族ぐるみで仲が良かったんだけど、ある日突然、結婚申し込まれたから断ったんだ。断ってるのに泣きながら何度も結婚してくれってしつこいし、挙げ句の果てに結婚してくれないなら死ぬとか殺せとか言って面倒臭い事になって、相手するのに疲れて仕方なくOKしたら即食われた。」
「食われた?」
「性的に」
ボキリ、と親父がもっていたペンが折れた。



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