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高等部 一年目 皐月 ゴールデンウィーク
044 GW 1日目 2
しおりを挟むオレの両親は父親の実家とは疎遠で、里帰り出産を期に黒峯の祖父母と同居するようになった。
旧家で金持ちで、家が広いのでケン兄の家族も含めて三世帯で同居中だ。
学園から車で一時間の距離の緑豊かな郊外の別荘地にある和洋折衷の邸宅が祖父母の持ち家だ。
春休み中は京夜の実家に入り浸っていたので冬休み以来の帰省だ。
「おかえりなさいませ。」
執事の宅間さんが出迎えてくれた。
「ただいまー」
玄関ホールに入ると各々、宅間さんに声をかけてから自室へと荷物を置きに行った。
オレとケン兄の部屋は2階の東側で隣同士だ。
中等部まではケン兄の部屋で寝起きしていたけれど、京夜と番になってからは帰省時は自分の部屋で京夜と一緒に寝起きしている。
たまに京夜と一緒にケン兄の部屋で三人で川の字になって寝ることもある。
両親と祖父母達は親戚の結婚式に招待されていて入れ違いになったらしい。
オレ達は家政婦の良子さん──宅間さんの奥さん──の指導の元、予定通りキッチンでお菓子と軽食を作った。
オレとケン兄はクッキーやチュロス、京夜はサンドイッチ、凪姉と雪成先生はサラダ担当。
クッキーとチュロスはアイシングやチョコでコーティングした。
京夜は卵サンドとハムサンド、野菜サンドの他に生クリームたっぷりのフルーツサンドを作った。
凪姉たちはポテサラの他にマリネやカルパッチョも作ってくれた。
良子さんが作ってくれたオードブル、細巻きやおいなりさんも一緒にリビングに運んでテーブルに並べていると両親と祖父母達が帰って来た。
お互いに「おかえり」と「ただいま」を言い合ってハグを交わした。
大人達はアルコール類を飲みつつ、オレ達が作った軽食をつまみに結婚式の話を始めた。
新郎が祖母の甥の息子で大手出版社に勤めているとか、新婦が料理研究家だとか。
あと招待客に芸能人が結構いたとか、文筆家の祖父母の知人の映画関係者もいたらしい。
そんな雑談を聞きながら、オレは京夜に抱き付いてボーッとしていた。
「颯、大丈夫か?」
「ん・・・始まったっぽい?」
GW後半に来ると予想してたヒートが始まった。
昨日の新入生歓迎会でいつも以上にαに関わった影響もあって少し早まったみたいだ。
みんなの生暖かい眼差しがオレ達に集中する。
「凪姉、明日、オレ達キャンセルね。」
「ヒート終わったら写真見せるね。」
「うん、じゃあヒート明けにね。」
「京夜君、颯を頼んだよ。」
父ちゃんが微妙に京夜に圧をかけ、母ちゃんはオレの鼻先にキスをしてくれた。
京夜に抱っこされながら皆に手を振った。
初めての時は京夜んちの別荘だったし、あとは学園の寄宿舎でだったから、実家でヒートを過ごすのは初めてだ。
少し恥ずかしいけど、護られている安心感もある。
「欲しいものがあるときは内線して。」
ケン兄がオレの部屋のドアを開けてくれた。
「ケン兄、またね」
ケン兄と鼻先にキスをしあった。
部屋に入るとパタンと静かにドアが閉まる音がした。
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