【Ｒ１８】一匹狼は愛とか恋とか面倒くさい

高等部 一年目 皐月 ゴールデンウィーク

043 ＧＷ １日目 １

うちの学園のα専門の校医・宇佐美うさみ雪成ゆきなり先生はケン兄の義理の兄ちゃんで、凪姉なぎねぇの旦那番さんだ。
雪成先生は都市近郊のマンションから郊外にある学園に車で通勤している。

いつもは実家から送迎車が来るけれど、今回は凪姉と雪成先生も一緒に帰省する事になったので雪成先生のワゴン車に乗せて貰うことになった。

学園の職員用の駐車場で雪成先生のワゴン車に乗り込もうとしていたらセクハラ校医が駆け寄って来るのが見えた。
「颯君、早く乗って！」
七人乗りのワゴン車の運転席の後ろにオレはケン兄と京夜に挟まれる形で乗った。
運転席に乗り込んだ雪成先生はセクハラ校医がたどり着く前に車を発車させた。
「うわ～、ヤバいのに好かれたわねぇ」
助手席に座る凪姉が笑いながら言った。

凪姉はケン兄が女装メイクした時の顔にソックリな、見た目儚げ美女のΩ女子だ。

「凪姉、あのセクハラ校医知ってるの？」
「初等部の時のクラスメイト。雪は大学までずっと一緒よね？」
「うん、蘭と城山と三人で生徒会の役員もしてたよ。蘭が会長で、城山が会計、僕は副会長。」

生徒会長がセクハラ野郎なのは伝統か？

「頭脳明晰なスポーツマンで硬派で爽やかで人気があったんだよ。」
「表向きはね。」
「裏で暴走族の総長してて抗争に巻き込まれた城山が大ケガしたんだよね。」
「城山君、ミュージカル俳優目指してたのに、その時のケガの後遺症で舞台に立てなくなったのよ。」
「それが切っ掛けで族を辞めた蘭は医者になったね。」
「城山君は一時荒れたけど、健太と颯のお陰で立ち直ったわよね。」
「そうなの？　ケン兄、覚えてる？」
「どっかのスタジオで姉貴の作った服着てたくさん写真撮ったことがあっただろ？」
「七五三の時？」
「それと学園の行事の度に、姉貴と雪成兄さんと一緒に来て写真とかビデオ撮ってたのが城山先生。」
「もともとカメラが趣味だったから、それで君たち撮って癒されてプロのカメラマンになったんだ。あと、舞台芸術のプロデューサーもしているよ。」
「ふーん、でも何で国語教師？」
「去年、産休に入った先生の教科が国語で演劇部の顧問だったから、教員免許持ってた城山に前理事長が臨時を頼んだんだよ。」
「健太の担任になれなかったって愚痴ってたわよね。」
「やっぱりグルか・・・」
ケン兄が呆れたように凪姉を見つめた。
「姉貴、城山先生とか双子たちが学園内で撮った俺と颯の写真、全部持ってるな？」
「ぎくっ」
「・・・？」
「俺は、まあ、好きでしてるから良いけど、颯には強制するなよ？」
「可愛いのに～、ね、京夜君？」
「着てしまった衣装は全て買い取りします。ですが、健太の言うように強制はしないで下さい。」
凪姉の言葉に京夜が目上の人向けの丁寧な言葉遣いと笑顔で応える。

んと・・・買い取り？
まさか・・・

「あのセーラー服、凪姉が作ったの？」
「女学院の制服って色が渋いから、夢可愛ゆめかわな色違いにアレンジしたのよ♡
あ、健太はスケ番タイプにアレンジしたのいる？」
「いる。」
「じゃあ明日、城山君呼んでるから健太はスタジオで撮影ね。颯と京夜君も見学する？」
「したい！　京夜、いい？」
「ああ・・・」
「決まりね、うふふっ　明日の撮影会、楽しみ～」