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高等部 一年目 卯月

010 駄犬VS忠犬 1

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**健太視点**

「健太!」
剣道場で素振りをしていると駄犬が泣きながら転がり込んで来た。
「上書きしてくれよ~」
駄犬の要求?は無視して、再会してから疑問に思っていた事を訊いてみた。
「すばる、何で髪の毛染めてアフロにしたんだ?」
「ああ、これ?」
駄犬がフッと笑って自分の髪の毛をサッと撫でた。
「初等部の学習発表会を年長さんクラスで見学しに行ったときに、健太のクラスは桃太郎だったじゃん。健太は鬼の役でアフロに眼鏡だったよな。」
「そうだな。」
眼鏡というかサングラスだったが?

「颯っちがさ、『モコモコふわふわ、かっこよかったね♡』って健太の鬼の絵を描いたんだ。」
「・・・」
「その時の颯っちの笑顔がさ、すっげー可愛いくてさ」

あー、あれか・・・
サングラスを上手く塗れなくてグルグルになってたな。
アフロもグルグル眼鏡も幼稚舎での颯のお絵描きが原因だったのか・・・
しかも、ズラを被ればいいのに、わざわざ地毛・・・

俺は思わず駄犬アフロの髪を引っ張った。
「颯と仲良くなりたかったらアフロとグルグル眼鏡は辞めた方がいい。」
「えぇー」
「それと、颯の食べ物を勝手に取るな。」
「だって、颯っちに給餌ア~ンしたいぃ~」
「親でも兄弟でも無い奴にそんな事をされたら気持ち悪いだけだ。」
「えっ?! でも、京夜はしてるじゃん!!」
「京夜は颯の番だから良いんだよ。」
「がーーん」
「・・・」
ああ、本当に厄介な駄犬だな。

「俺と健太の颯っちがぁ~」
「・・・ん?」
「酷くない? 俺に一言の挨拶もなく勝手に番にするなんてさ。」
「お前、颯の何のつもりなんだ?」
「・・・お父さん?」
「何故?」
「幼稚舎で、初めて健太を見たときに颯っちを抱っこしてた。
その姿を見て『運命』だって思った。
何か良く分かんないんだけど、すんごい昔に無くしたものを見つけた、って思ったんだ。
健太は俺の運命で、颯っちは俺たちの運命に関わる特別な子。
きっと俺たち、前世で親子だったんじゃないかな?」

すばるには前世の記憶は無いようだ。
あればこんな無邪気な笑顔でいられる筈が無い。

「健太、俺達さ、運命の番なのにどっちもアルファで男じゃん。」
すばるの手が俺の肩を掴んだ。
「アルファで男同士だから運命でもないし、番にもなれないな。」
「健太はどっちが先がいい?」

相変わらず、人の話を訊かずにマイペースすぎだろ・・・

「どっち、って何?」
「抱く方と、抱かれる方!」
「・・・お前、双子に何か吹き込まれた?」
「リバ? お互いに両方経験するのが大人の嗜み?って言ってた!」
「・・・・・・」
俺は天を仰いだ。

双子!
腐りすぎ!!

「俺的には、先に健太の処女をじっくりと開発?」

ちゅっ

いいかげん黙らせる為に、すばるの唇に一瞬だけ自分の唇を重ねてやった。
「!!」
すばるは真っ赤になって股間を押さえて座り込んだ。
「バカ! 何で勃ってんだよ!」
「だって、キ、キス・・・」
「上書きして欲しかったんだろ? この程度でお前、童貞か!」
俺はすばるを引きずってシャワールームに向かった。
そして、すばるを個室にぶち込む。
「誰を開発するって?」
「け、健太?」
「駄犬には躾が必要、だよな?」

前世の記憶が無い奴に仕返しするのは間違っているかもしれない。
だから、これはただ八つ当たりだ。



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次話はR18
ミイラ取りがミイラに・・・
需要はあるかな?
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