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五道転輪王

51、→身体なだらか←

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  五道転輪王が『親ガチャ』を引き、生まれ変わったのは中田佳那なかたかなという名前の22歳の人間のだった。 

性別は女性。 職業・新任教師。 

 顔の上に黄金比率に並べられたパーツはどれも美しい。瞳は黒。 

髪は根本は黒いが、肩まで伸ばした髪を少しだけ明るく染めあげている。

 職業柄、ピアスホールは開けてない。

 私はこの上から読んでも下から読んでも回文になっている新しい名前が気に入っていた。 


 
  私の住まいは1DKのマンションの2階の角部屋。 リビングは6畳ほどと狭い。  

だが、マンションは太いはりの特徴的なお洒落なデザイナーズマンションだ。 

家賃はそこそこ高い。

 転生した先のくだんの女性はミニマリストという生活スタイルを好む女性のようだ。 

家具ののほとんどがモノトーンで味気が無い。 

 唯一、カーテンが前世の五道転輪王と同じ深緑の生地が使われていた。  

 リビングのローテーブルの上には『高校1年生の数学・応用編』という本に鉛筆がしおり代わりに挟まれたまま置かれている。 

床には指導案を書き散らしたものが散乱していて足の踏み場がない。  

私は生まれ変わった後も整理整頓が苦手なさがらしかった。 

 パソコンの待ち受け画面は授業計画表になっている。  

 カチャッ 

私はパソコン用のブルーライトカット眼鏡を外しながらマンションから見える隣のベランダを見た。 

隣の ベランダには黄色や紫のビオラが咲いている。八分咲きくらいだ。 

カレンダーを見ると今はまだ5月。

今はちょうど春風の心地よい季節だ。 


「ん~。身体からだなだらか」


私は、 肢体からだを伸ばし、肺いっぱいに新鮮な朝の空気を吸い込む。

すると冷たく心地良い風が全身からだを駆け巡った。

 前世の人間道にんげんどう身体からだでは考えられないくらい健康的な身体からだ。 

 私は当たり前の幸せを噛みしめていた。


「いっけない。もう、学校に行く時間だわ……」 


私は窓辺から風に誘われるように振り返り壁に掛けられた時計を見た。

 もう、出勤の時刻だ。

書き散らかした指導案をカバンに押し込むと床に置かれた印刷機を踏まないように気を付けながら玄関へと急いだ。 

モノトーンの部屋の玄関先には両親と思われる老齢の男女と若い女性と私が肩を並べている写真が飾られていた。

 皆、仲良さそうに寄り添って笑っている。 

姉だと思われる年上の女性の優しい笑顔は心成しか斉嬀せいきに似ていた。 


「今回は『親ガチャ』は当たりなのかも!」


 ガチャッ

 私は真新しいパンプスに足を入れると学校に行くため内鍵を外し、ノブを右に回した。 

 時刻は6時50分。もうすぐ学校行きのバスの出発の時間だ。  
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