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そして、私はそのままブツブツと何かを呟くお父様に対して更にこう続けた。

「お父様、それに私が死のうとしているのはそれだけが理由ではないんですよ?」

お父様はそんな私の言葉に静かに再びこちらに目を向け、私はそんなお父様の姿を見てから外で仕事をしているメイドや執事に目を向けた。

「お父様は昔から私に興味がなく、過去に何度か故意ではなくとも私に怪我をさせたメイドや執事にもなんのお咎めも与えなかった。だから私あそこにいるメイドや執事からずっと嫌がらせをされてましたの」

途端にその場から勢いよく立ち上がり庭にいるメイドや執事に目を向けるお父様。

でも、メイドや執事がそうなってしまったのは全てお父様のせいじゃない。

私は静かににこやかな笑みを浮かべながら「主人が居ないもののように扱い、怪我をさせてしまっても咎めがない娘。そんな娘自分達以下だと彼らが思っても仕方ないのでは?」と言う。

途端に「そんなわけがない!私はお前を娘として大切に思っている!!私はただ……」と呟くお父様。

娘として大切に思っている?

ならば何故その大切に思う娘を見る使用人達の冷たい視線に気付かなかったのかしら?

私は言い訳を言うお父様の言葉に思わず軽く吹き出し、呆然とした様子でこちらを見たお父様へお父様が続けたかったであろう言葉を口にした。

「私はただお前を見るとお前を産んだ時に亡くなった妻を思い出してしまって辛かったとでも言うんですか?」

その言葉を聞くなりお父様は勢いよく私から視線を逸らし、私は「図星ですわね」と呟く。

私のお母様は私が生まれると同時にこの世から去った。

幼い頃から身体が弱い人で、子供を産めば死ぬと医師から言われていたにも関わらずお父様との子を授かりたいと懇願した末に私を出産して直ぐに亡くなってしまったらしい。

私はお父様からしたら最愛の妻の命を奪った存在ですものね。

そりゃあ会うのも嫌になるのも分かりますわ。

私は一切こちらを見なくなったお父様へできるだけ優しい声色でこう告げた。

「私を見るのが辛いのでしょう?私と会うのが嫌なのでしょう?ならば殺してしまえば、死なせてしまえばいいじゃないですか。何故そんな簡単なことが出来ないのですか」

すると、今にでも消えそうな声量でお父様は唇を噛みながらこう呟いた。

「……リリスに、お前の母親に頼まれたんだ。お前を愛し守ってくれと」

「あら、じゃあお父様はお母様との約束を守れていませんわね」

すかさずニッコリと手を合わせながら私が笑えば、悔しそうな顔をしたお父様。

私はそんなにお父様に対して小さく首を傾けた。

「何故そんなお顔をするのですか?今更そんなお話をされても今までの私への態度などを考えるとどう考えてもお父様はお母様との約束を守れていないじゃありませんか。今までの私に対しての接し方を思い出してみて下さい。お父様はお母様との約束を守れていましたか?」

「……守れて、いなかった。だが、口にも態度にも出さずとも私はお前を本当に娘として大切に思っていた。それだけは信じてくれ」

口にも態度にも出してもいなかったのに娘として大切に思っていた?

この人は一体何を言っているんだろう。

私は本当に意味が分からず首を傾けながらこう告げた。

「口にも態度にも出されていなかったのにそんなの信用出来るわけがないじゃないですか。それよりも私の事を大切と思っているならお父様が今すべきことは私に私の好きなようにさせることですわ」

「……そうすればお前は死ぬのだろう?」

「ええ」

「ならば、私はお前に好きにさせることは出来ない。お前まで失ったら私はこれからどうすれば......」

「再婚相手でも見付ければよろしいのでは?厄介者が居なく無くなるのですしお父様の容姿なら直ぐにいい人が見つかりますわ!」

「私が愛しているのはリリスとお前だけだ。再婚なんて絶対にしない」

お父様はそう言うと私に背を向けてこう告げた。

「暫くお前は謹慎部屋に入って貰う。そうすれば変な気も起こさないだろう」

「そういう私への態度がメイドや執事達が私を見下す原因になっているのが分かっているんですか?」

私は無言でこちらを見詰めるお父様に対して内心呆れかえりつつ、そのまま『謹慎部屋の中にも何かしら自殺に使えそうな物や道具が落ちている可能性もあるし大人しくした方が良さそうね』と考えながら溜息を吐いた。



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みんなの感想(1件)

芍薬14
2023.02.21 芍薬14
ネタバレ含む
花咲千之汰
2023.02.21 花咲千之汰

ご指摘ありがとうございました!
先程修正致しました!!

その点についてはこれから書いていこうと思っておりますので何卒よろしくお願いいたします( ..)"

解除

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