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第三部
side健二郎
しおりを挟む「ぼ、僕と付き合って欲しいだす!」
「ごめんなさい!」
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─彼女との出会いはふとした事だっただす。入学式からしばらくして僕が落としたハンカチを拾ってくれたんだす…。その時優しく微笑みながら渡してくれたその顔が忘れられなかっただす…。彼女の三つ編み姿がわすれられないだす…。
その時の僕はまだ肥えていて、とても彼女とは釣り合わないと思っただす。突然ダイエットを始めた僕を見て、母ちゃんはビックリしてただすな…。駿は運動苦手どからアレだけど豊和は結構な頻度で朝のランニングに付き合ってくれただす…。
見事痩せる事が出来て見た目もある程度整った筈だす。これなら彼女の隣でもおかしくないだす?自分では分からないけど母ちゃんはカッコよくなったと言ってくれただす!母ちゃんが言うなら間違いないだすな!
そんな風に思っている時に駿が何と告白するという事を聞いただす!まさか駿も好きな人が居たとは…。相手はお姉さんと妹さんという事だす。これはうかうかしていられないだす!僕も敢えて2人に宣言するだす!僕にも好きな人がいて告白するつもりだと言っただす!2人共…僕に告白する勇気を貸して欲しいだす!
******
彼女の下駄箱に手紙をそっ─と、忍ばせた。放課後、体育館の裏に来て欲しいと…。
そして彼女に告白…。僕の…僕の人生で初めての告白…。結果は…
「ぼ、僕と付き合って欲しいだす!」
「…ごめんなさい!」
「ぼぼ…僕が…太ってたから…だすか?」
「…そんな訳ないよ…そんなの理由な訳ない。私ね…ずっと…………あっ─」
彼女のその先の言葉は聞けなかった…聞きたくなかっただす。僕は溢れる涙を止められなかったから…その場を走り去ったんだす。呼び出したのに…フラれたからといって逃げ出したら駄目だっただす…。
それから一週間。彼女と学校の廊下でたまたますれ違い、目が合うと逸らしてしまうだす…。フラれると辛いものだす…。そんな事したい訳じゃないのに…勝手にそんな風にしてしまうだす。その次の週は彼女の姿を見掛ける事はなかっただす…。どうやら用事で休んでいると噂で聞いただす。
彼女が学校を休んだ週の週末の日曜日…。豊和の配信が行われた。喋った言葉が文字になるチャット用マイクを装着して始まるのを待つ。最初は韓国の人か…。
うおっ!?すげぇな…。あんな格好でもするのか…。チャット欄も凄いな…。大シュキホールドって連呼するなよ…。確かに…彼女にならされたかったけど…。
1人目が終わったか…。今日も後、2人だよな?次はどんな…
「─嘘…だろ?」
画面には彼女の姿…。そっくりさんなんかじゃないだす…。見間違える訳ないだす。
「嘘…だ…」
僕は装着していたマイクを外し机に叩きつけた…。
「ま…待っ…て…」
聞こえる筈ないのに…
「あっ…止めて…くれ…」
画面にしがみつき…
「頼む!豊和ぅぅぅー!」
彼女が抱かれるのをただ見る事しか出来なかっただす…。自分がされたかった大シュキホールドを彼女が豊和に一生懸命…健気にしているのを…。
「君は…豊和が…好きだった…だすな…」
翌日から僕は部屋へと引き籠った…。豊和が悪い訳じゃない…。彼女が悪い訳じゃない…。そんなのは分かってる…。でも今は会いたくなかったんだ…。
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