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第一部

唐突な呼び出し

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 天音のイベントがあった翌日の朝の事だ。教師が逮捕された事を受け、学校は三日間の臨時休校になった。土日を合わせると計五日間の休みだ。ベッドに横になりゴロゴロしていると─ 

“PURuuRuuRuu…PURuuRuuRuu…” 

 俺の携帯が電話の着信を伝えて来る。画面を見ると電話をしてきたのは優花だった。通話のマークをタップし、電話に出ると── 

「もしもし」 

『…………』 

「優花?」 

『…助け…て』 

 助けてって言ったよな!? 

「今どこだ!?何があった!?」 

『…自宅の…庭に…』 

自宅の庭!? 

「すぐ行く!」 

 優花の家は俺の家から近い。以前は遠かったんだけど今は自宅を出て、走ったら一分の場所にある。 俺は家を裸足で飛び出すと急いで優花の家へと向かった。 優花の家に到着すると同時に素早く門を開け、庭の中を必死に探して回った。 

「優花ぁっ!!どこだ!優花ぁーっ!」 





♢ 


『…こ、ここに居るわ!』 

 結論を言えば優花は無事だった…。優花の身に危険が迫ったわけではなかった。いや…危険なのかっ!?助けを呼ぶ位だしな…。ただ…とりあえず俺はホッっと一息が漏れる…。 

『豊和君そこに居るのよね!?早く助けてよっ!?』 

 優花の声が若干曇って聞こえる。顔は…見えないからだ…。 

「…居るけど。一ついいか?そんな所で何してんの?優花は…」 

 ついでに言えば優花の上半身も見えない。

『見て分かるでしょっ!?』 

「…いや、分からないから聞いてるんだけどっ!?俺がどれだけ心配したと思っているんだよ?」 

『っ!? し、心配してくれたの?』 

「そりゃあ当然だろ?」 

『ふ…ふ~ん♪そ、そんなに大事なんだ、私の事…』 

「当たり前の事を言わないでくれ」 

『そ…そっかぁ……ふふっ♡』 

「とにかく説明してくれるか?家の壁から下半身だけ出ている理由を?」 

 そう、そうなのだ…。俺の目の前には家の壁に上半身を突っ込み…下半身だけが取り残されている優花の姿…。これってよくエロゲやエロ漫画であるシチュエーションの壁尻って奴に見えるんだが?

 いや、敢えて言おう…壁尻であると…。 

 た、確かにそんなイベントもこのゲームには用意されているのだが……。 真面目に考えると優花にそんなイベントはない。コレもまさかイベントのズレなのだろうか? 

『…わ、訳は…言えない…』 

「はぁ?わ、訳は言えないって?じゃあ、麻美さんや使用人の人達は?」 

『…居ないわ…全員…出掛けてる』 

「俺しかいないわけか…」 

 道理で俺に助けを求めた訳だ…。まあ、正直に言えばこうなった理由を聞きたいんだけどな…。 

『と、とにかく…助けてよ?この通り嵌まってしまって抜けないのよ…』 

 優花はコレを見てよと言わんばかりにその場で足をジタバタジタバタ… 

「…あんまり動くとスカートが捲れるぞ?」

『み、見ないでよねっ!?と、豊和君のエッチ…』 

「…見てないし、見ないから安心しろ」 

『ま、まさか…そう言いながら…もうスカートの中を覗いているんじゃないのっ!?ば、馬鹿っ…へ、変態っ!?み、見るなら一瞬にしてよね!?』 

「そんな事しねぇーよ!?」 

 馬鹿と変態呼ばわりしないでくれ…。それに見るなら一瞬ってなんだよ?混乱してとんでもない事口走ってんぞ? 

「とにかく…俺はどうすれはいいんだ?腰を掴んでこっちに引っ張ればいいのか?それともお尻を押せばいいのか?」 

『…えっ!?ふ、触れるのっ!?』 

「他に助けようがないんだが?」 


 業者か何かを呼んで壁を壊してもらうか?

 でも、ここはエロゲの世界だしな…。変な奴等が今の優花を見たら…それこそエロに突入してしまう気しかしないしな…。いや、間違いなく優花に襲い掛かると思う…。 


『ううっ…わ、分かった…こ、腰を掴んで引っ張ってみて?』 

「…了解」 

 俺は優花に近付き腰に手を添える。そしてグッと腰を落とす…。コレはアレだな…。第三者が俺達を見たら…絶対に勘違いされる格好だぞ?ぶっちゃけて言うとバックの体勢だよな…これ…。 

『ひゃん!?』 

「…た、頼むから変な声出さないでくれ」 

『しょ…しょうがないでしょ!?くすぐったくて…んっ…♡』 

 んっ…じゃないんだよ?そんな色っぽい声出さないで欲しい。一応俺も男だからな? 

『そ、それに…な、なんか…お、お尻に硬いモノが…あたっ、当たって…』 

「ベルトだからな?当たってるのはベルトの金属の部分だからな!?と、とにかく引っ張っるぞ!」 

 本当にベルトだからな? 

『んっ…急に!?痛っ…痛い痛いっ!豊和君!?ストップストップっ!?む、胸が引っ掛かってるぅっ~!!』 

 俺は引っ張るのを止める…。


 ──と、なると残すは押すのみ… 

「優花」 

『な、何っ!?』 

「触るけど邪な感情はないからな?」 

『触るって…どこを!? んんっ~~~』 

 無我の境地でお尻を掴み…そのまま押す! 一瞬…柔らかいその感触に呑み込まれそうになるが…俺は耐えた…。 

 …最早押すのみ──


“グググッ” 

『ちょっ!?無理無理無理無理無理無理無理っ!!腰とお尻が痛いわっ!』 

 優花のその言葉に俺は押すのを止めた。手に残るその感触は考えない様にする…。   

「…優花」 

『な、何っ?』 

「…諦めよう」 

 うん…諦めるしかないな…。 

『ちょっと諦めないでよっ!?どうにか助けてよっ!?』 

「俺の理性が保たん時が来ているんだ」 

『理性? ──って…ふぇっ!?』 

「い、意味が分かったか?」 

『……そ、その…す、少しだけなら…私…』 

「そういう言葉がガリガリと理性を削っているんだがっ!?」 

『と、とにかく…お願いだから…私には豊和君しか…』 

「嗚呼!もうっ!」 

 俺は優花の腰を掴み… 

『んんっ~ ちょっ!ベルトじゃない硬いモノがあたっ、当たってるからっ!?い、いきなりは…だ、駄目ぇ…痛っ!?む、胸がもげるぅぅぅ~~~』 

 もう一度だけ力任せに引っ張ってみた…。 すると、“スポン…!”という感じで優花が壁から抜けて…俺達は勢いよく後方へと倒れ込んだ…。

「いたたたっ…」 

「……………」 

「な、何とか抜けたわね?ほ、本当に…あ、ありがとうね、豊和君?」 

「…………」 

「豊和君?」 



 敢えて言おう…純白であると… 敢えて言おう…いい匂いがしたと… 敢えて言おう…やはりここはエロゲの世界なのだと… 





*** 
あとがき 

芽依「ちょお~~~い!?ちょい待ち!?それ私の役目じゃないのっ!?」 

凛「こ、興奮し過ぎだよ、芽依ちゃん?」 

芽依「こういうのは私の役目でしょっ!?」 

日和「…ち、違うと思うぞ?」 

天音「わ、私も違うと思いますよ?」 

愛「はい、そういう訳でお嬢様の壁尻回でした☆」 

天音「な、何で…そもそもあんな事に?」 

愛「いい質問ですね、天音様☆まあ、言ってしまえば麻美奥様の仕業です☆」 

一同「「「「ええーっ!?そうなのっ!? 」」」」 

愛「奥様曰く…たまには刺激を…だそうです」

芽依「くっ…またもやお兄ちゃんの初めてが…」

凛「そ、そういえば優花ちゃんは?」 

愛「お嬢様ならショーツを見られた事とアソコの匂いを嗅がれた事により羞恥に悶えておりますね☆」 

芽依「くっ、優花さんめぇ~」
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