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第一部
歌羽天音⑥
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“ガシャァァァ――――ン!!”
諦めて絶望していた私の耳に何かが割れた音が聴こえた…。
「なっ、何だっ!?」
その音に先生が慌てて私から離れてくれた。
「よっこらせっ!」
そんな声とともにギュウッバリバリッ…と、ガラスを踏みしめながら歩く足音が聞こえてくる…。その足音はこちらへと近付いて来ている様で、やがて普通の足音へと変わった。
「お、お前は何をしたのか分かっているのかっ!?」
先生の怒鳴るような声。
「いやいや…それはこっちの台詞だと思いますよ…立物先生?こんなところで素っ裸で何をしているんです?」
この声…聞いた事ある。私は視線をその声の方へと向ける。虚ろになって涙が溢れていた目が見開いたのが自分でも分かった…。
「…と…よかず君?」
何でここに…?
「大丈夫か?まだ何もされてない?」
「っ……ぅん…私……わた…し」
私を助けに来てくれた…
「いや……これはっ…う、歌羽、な…何を泣いているんだっ…!?せ、先生が話を聞いてやるからっ!とりあえず先生と一緒にっ…保健室にっ…」
「何が先生とですか…。先生がしようとした事は分かっていますから…歌羽さんをレイプしようとしたんでしょ?」
「ばばばっ、馬鹿なっ!?せ、先生がそんな卑猥な事をするわけないだろっ!?お前は何か誤解しているぞっ!?せ、先生はだなっ…その…う、歌羽に誘われてだなっ…」
「わっ、私はっ!そ、そんな事しません!」
「う、歌羽はっ…だ、黙っていなさいっ!歌羽はきっと混乱しているんだっ!」
「…先生? とりあえず言い訳は見苦しいので先生が黙っていて下さいね?」
「…はっ?」
豊和君はそう言うとその場を駆け出すと先生に向かって蹴りを放ち…
「おごっ……うっ…お、おまっ…ううっ…」
先生が勢いよく前のめりに倒れて悶絶している。そ、そこって…男性にとって大事なところなんじゃ…
「ガラスの割れた音で人が駆けつけて来るでしょう。もう終わりですよ、立物先生?」
先生が脱いだジャージを拾い上げ先生を縛りあげる。そして呻く先生に先生が履いてた下着を口に突っ込んでいるみたい…。
そ、それはともかく…見なかった事にして…。 それらを済ませた豊和君がすまなさそうな顔をして私に近付いて来る…。
「助けに来るのが遅くなってごめんな?」
「う、ううん…そんな事ない…」
「怖かっただろ…歌羽がとにかく無事で良かったよ。立てるか?」
私は差し出された豊和君の手を借りて立ち上がり──
「痛っ…」
「おっと…」
その拍子に足に痛みが走ってしまいよろけそうになった私を抱き受け止めて助けてくれた。と、当然…そうなると私は彼の胸元に顔が埋まった形になる訳で…。 でも…不思議と心から安心出来た。
「もしかして足かどこか怪我してる?」
「…うん…右足を捻ったみたいで…」
「ごめんな」
「豊和君…そんなに謝らないで?豊和君が謝る事じゃないよ?豊和君は私を助けてくれたんだから…」
「ホントに…歌羽が無事で良かったよ…」
私はようやく安心出来たのか…意識せずに彼に抱きついて背に腕を回し、彼の胸の中で泣いた。ホッとしたからだと思う。止まっていた涙がまた溢れてくる。彼は少し戸惑っていたものの、私の頭に優しく手を添えると、
「大丈夫、もう大丈夫だから」
と優しく言葉を掛けてくれながら頭を撫で続けてくれた。 私が泣き止む迄、ずっと…
耳を彼の胸に当てると彼の心臓の音が聞こえてくる。その鼓動は彼が作る音楽の様に優しくて…心地良くて…いつまでも聴いていたい…そう思えるような音色を奏でていた…。
♢
それからすぐに…豊和君が割ったガラスの音を聞きつけた先生達が何事かと集まって来る。それにいつ来たのか分からなかったけど警察の人達の姿も視界に入る…。
私はその瞬間…自分がどういう状況かを把握する。慌てて彼に回していた腕を離し、少しだけ…距離をとった。すると豊和君は何故かブレザーを脱ぎながら警察の一人に何かを話し始めた。 話を終えた豊和君が私に近付いて来る。すると私の頭にふわっと脱いだブレザーを被せ てきた。な、何だか爽やかな匂いが鼻腔をくすぐり……彼に包まれているみたいで心臓が早鐘を打ち、かぁ~~~っと顔や体が熱くなっていく。
「嫌かも知れないけどそれで顔を隠してて?今から病院に向かうからさっ!歌羽さんだとバレない様にね?それでなんだけど、抱えさせてもらってもいい?」
「あ、うん」
んっ?顔を隠す?抱える?誰を?
「じゃあ、よっと!」
「…えっ?えっ?」
まるで無重力空間を味わうようにふわっと私の体が浮かび上がる。
「嫌かも知れないけど少しの間だけ我慢してね?」
間近に豊和君の顔が…あわわわっ!?
「ひゃい!?」
こ、これってお姫様抱っこだよね!?わ、私お姫様抱っこされてるぅぅ!?
「お、重くにゃいでしゅか!?」
は、恥ずかしくて気の利いた事言えないよぉ~~~。
「ううん、軽いよ?」
「しょっ、しょうですか…」
と、とにかく…私はまるで物語に出てくるお姫様みたいにお姫様抱っこをされて、校舎を出る事に…そして…彼が手配したと思われる車に乗り込み病院に向かったのでした…。
***
あとがき
優花「あっ…あ、アウトーっ!と、豊和君の馬鹿っ!私だってまだなのにっ!!」
凛「ホントアウトだよ!ここに豊ちゃん居たら説教ものだよ!」
日和「それな!」
芽依「お、お兄ちゃんの初めてがっ…」
優花「ちょっ!?芽依ちゃん!?ちょっと言い方が卑猥だよっ!?」
凛「そそそそ、そうだよ、卑猥過ぎるよ!見てよ、初夏さんがまたバグってるじゃない」
日和「は、初めて!?えっ?えっ?ふわぁ~~~!?」
芽依「どこが卑猥なの!そういう事を考えるのが卑猥なんだよ?」
愛「芽依ちゃんの言う通りですね。お嬢様は卑猥なんですね。プププッ☆」
優花「愛!?あ、あんたねぇ~」
芽依「や~いや~い!優花さんのスケベ」
優花「ぐぬぬっ…」
諦めて絶望していた私の耳に何かが割れた音が聴こえた…。
「なっ、何だっ!?」
その音に先生が慌てて私から離れてくれた。
「よっこらせっ!」
そんな声とともにギュウッバリバリッ…と、ガラスを踏みしめながら歩く足音が聞こえてくる…。その足音はこちらへと近付いて来ている様で、やがて普通の足音へと変わった。
「お、お前は何をしたのか分かっているのかっ!?」
先生の怒鳴るような声。
「いやいや…それはこっちの台詞だと思いますよ…立物先生?こんなところで素っ裸で何をしているんです?」
この声…聞いた事ある。私は視線をその声の方へと向ける。虚ろになって涙が溢れていた目が見開いたのが自分でも分かった…。
「…と…よかず君?」
何でここに…?
「大丈夫か?まだ何もされてない?」
「っ……ぅん…私……わた…し」
私を助けに来てくれた…
「いや……これはっ…う、歌羽、な…何を泣いているんだっ…!?せ、先生が話を聞いてやるからっ!とりあえず先生と一緒にっ…保健室にっ…」
「何が先生とですか…。先生がしようとした事は分かっていますから…歌羽さんをレイプしようとしたんでしょ?」
「ばばばっ、馬鹿なっ!?せ、先生がそんな卑猥な事をするわけないだろっ!?お前は何か誤解しているぞっ!?せ、先生はだなっ…その…う、歌羽に誘われてだなっ…」
「わっ、私はっ!そ、そんな事しません!」
「う、歌羽はっ…だ、黙っていなさいっ!歌羽はきっと混乱しているんだっ!」
「…先生? とりあえず言い訳は見苦しいので先生が黙っていて下さいね?」
「…はっ?」
豊和君はそう言うとその場を駆け出すと先生に向かって蹴りを放ち…
「おごっ……うっ…お、おまっ…ううっ…」
先生が勢いよく前のめりに倒れて悶絶している。そ、そこって…男性にとって大事なところなんじゃ…
「ガラスの割れた音で人が駆けつけて来るでしょう。もう終わりですよ、立物先生?」
先生が脱いだジャージを拾い上げ先生を縛りあげる。そして呻く先生に先生が履いてた下着を口に突っ込んでいるみたい…。
そ、それはともかく…見なかった事にして…。 それらを済ませた豊和君がすまなさそうな顔をして私に近付いて来る…。
「助けに来るのが遅くなってごめんな?」
「う、ううん…そんな事ない…」
「怖かっただろ…歌羽がとにかく無事で良かったよ。立てるか?」
私は差し出された豊和君の手を借りて立ち上がり──
「痛っ…」
「おっと…」
その拍子に足に痛みが走ってしまいよろけそうになった私を抱き受け止めて助けてくれた。と、当然…そうなると私は彼の胸元に顔が埋まった形になる訳で…。 でも…不思議と心から安心出来た。
「もしかして足かどこか怪我してる?」
「…うん…右足を捻ったみたいで…」
「ごめんな」
「豊和君…そんなに謝らないで?豊和君が謝る事じゃないよ?豊和君は私を助けてくれたんだから…」
「ホントに…歌羽が無事で良かったよ…」
私はようやく安心出来たのか…意識せずに彼に抱きついて背に腕を回し、彼の胸の中で泣いた。ホッとしたからだと思う。止まっていた涙がまた溢れてくる。彼は少し戸惑っていたものの、私の頭に優しく手を添えると、
「大丈夫、もう大丈夫だから」
と優しく言葉を掛けてくれながら頭を撫で続けてくれた。 私が泣き止む迄、ずっと…
耳を彼の胸に当てると彼の心臓の音が聞こえてくる。その鼓動は彼が作る音楽の様に優しくて…心地良くて…いつまでも聴いていたい…そう思えるような音色を奏でていた…。
♢
それからすぐに…豊和君が割ったガラスの音を聞きつけた先生達が何事かと集まって来る。それにいつ来たのか分からなかったけど警察の人達の姿も視界に入る…。
私はその瞬間…自分がどういう状況かを把握する。慌てて彼に回していた腕を離し、少しだけ…距離をとった。すると豊和君は何故かブレザーを脱ぎながら警察の一人に何かを話し始めた。 話を終えた豊和君が私に近付いて来る。すると私の頭にふわっと脱いだブレザーを被せ てきた。な、何だか爽やかな匂いが鼻腔をくすぐり……彼に包まれているみたいで心臓が早鐘を打ち、かぁ~~~っと顔や体が熱くなっていく。
「嫌かも知れないけどそれで顔を隠してて?今から病院に向かうからさっ!歌羽さんだとバレない様にね?それでなんだけど、抱えさせてもらってもいい?」
「あ、うん」
んっ?顔を隠す?抱える?誰を?
「じゃあ、よっと!」
「…えっ?えっ?」
まるで無重力空間を味わうようにふわっと私の体が浮かび上がる。
「嫌かも知れないけど少しの間だけ我慢してね?」
間近に豊和君の顔が…あわわわっ!?
「ひゃい!?」
こ、これってお姫様抱っこだよね!?わ、私お姫様抱っこされてるぅぅ!?
「お、重くにゃいでしゅか!?」
は、恥ずかしくて気の利いた事言えないよぉ~~~。
「ううん、軽いよ?」
「しょっ、しょうですか…」
と、とにかく…私はまるで物語に出てくるお姫様みたいにお姫様抱っこをされて、校舎を出る事に…そして…彼が手配したと思われる車に乗り込み病院に向かったのでした…。
***
あとがき
優花「あっ…あ、アウトーっ!と、豊和君の馬鹿っ!私だってまだなのにっ!!」
凛「ホントアウトだよ!ここに豊ちゃん居たら説教ものだよ!」
日和「それな!」
芽依「お、お兄ちゃんの初めてがっ…」
優花「ちょっ!?芽依ちゃん!?ちょっと言い方が卑猥だよっ!?」
凛「そそそそ、そうだよ、卑猥過ぎるよ!見てよ、初夏さんがまたバグってるじゃない」
日和「は、初めて!?えっ?えっ?ふわぁ~~~!?」
芽依「どこが卑猥なの!そういう事を考えるのが卑猥なんだよ?」
愛「芽依ちゃんの言う通りですね。お嬢様は卑猥なんですね。プププッ☆」
優花「愛!?あ、あんたねぇ~」
芽依「や~いや~い!優花さんのスケベ」
優花「ぐぬぬっ…」
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