上 下
17 / 66
第一部

歌羽天音①

しおりを挟む
 私は小さい頃からアイドルになるのが夢だった。テレビ等で歌って踊って輝いているその姿を観る度に私もああいう風になりたいと心からそう思っていた。 幼い頃からピアノに踊りに歌のレッスン。勿論勉学も疎かにはせずに上位をキープ。

 自分磨きも勿論忘れない。美容に良いことや食べる物にまで気を遣った。その甲斐あってか小学生の時にオーディションを受けて見事合格。大手の芸能事務所に所属する事が出来た。

 どんなに小さな仕事でも確実に堅実に一つずつこなしていく。そのうちにドラマへの出演の話が私の元へ。しかも主演だというお話。より飛躍する大きなチャンスだと思えた。

 毎日台本を読みながら演技の練習── 

 でも…そんな時に私が所属する芸能事務所の不祥事が発覚した。所属するアイドルを議員にしていた事が公になった…。当然それは世間を賑わせる事になって、ドラマの話は一度流れる事になった。 

 事務所が無くなり途方に暮れそうになったんだけど、また一から…オーディションからやり直そうと思いなおした。そんな矢先に今の芸能事務所から声を頂いたの。 

「はじめまして、歌羽さん。私はホロホロプロダクションの赤星《あかほし》と申します」

「ホロホロプロダクション?」 

 聞いた事がない芸能事務所の名前だ…。 

「うちはまだ設立されたばかりなので聞いた事ないですよね?私はそこでスカウトする職に就かせてもらってます。単刀直入に言わせて下さい。歌羽さんに是非うちの事務所に所属してもらいたいのです」 

「そうなんですね。私を…」 

「はい。私達の事務所は設立されたばかりですし、大手の芸能事務所であんな不祥事もあった事ですから、おいそれとは返答をいただけないのは重々承知しておりますよ」 

 設立されたばかりの事務所…。そこが気になったのを覚えてる。 

「ただ…」 

「…ただ?」 

「うちに所属して頂けるのなら、一番最初の仕事の依頼としてドラマに出演してもらう事になります。しかも主演です」 

「ドラマにっ!?しかも…主演…」 

「そのドラマは元々歌羽さんが出演予定だったあのドラマになります」 

「ホントにっ!?」 

「ええ。しっかりと契約書もありますし、ドラマの後は歌手デビューもお約束します。このデモテープを聴いてみてください。これがあなたのデビュー曲になる予定の曲になります」 

 私は渡された音楽再生機器を手に取り、イヤホンを耳にあてる。スイッチを押して再生すると…音楽が流れ始め── 

「っ!?」 

 それは今まで聴いた事がない音楽。歌っているのは誰だか分からない。歌声が合成されているから…。でも…こ、こんな素晴らしい歌を私が歌えるのっ!? 

「こ、コレは誰が作ったの?あっ、すいません。この歌は誰が作ったんでしょうか?」 

「ああ、作ったのはうちの社長ですね。それは差し上げますので、返事が決まりましたら─」

「ま、待って下さい!返事は今させて下さいっ!どうかっ、私をそちらの事務所に入れて下さい!」 

「えっ…と…よ、宜しいのですか?返事は今すぐではなくても私どもは歌羽さんをお待ちしていますよ?」 

「いえ、お願いします!私はもう決めましたので」 

「…分かりました。ありがとうございます!決して後悔はさせません」 

「はい!」 

 そうして今の事務所に入った私の初の仕事は一度流れてしまったドラマへの出演からだった。お話でもあった通り主演で、しかもドラマは月九の枠だった。月九といえば人気のドラマが数多くあり、視聴者に観てもらえる時間帯でも有名だ。

 私は演技指導を受けながら、役を熱演。ドラマは高視聴率を叩き出し、ドラマのアカデミー賞の主演女優賞を頂き、一躍時の人に。 

「同情するなら愛をくれっ!」 

 ドラマで私が言ったこの台詞は流行語大賞にも選ばれる事に。

  そして、ドラマが終わると私の歌手デビュー。デビュー曲はトリプルミリオンを達成。私はナンバーワンアイドルと呼ばれる様になった…。でもそれは…歌と音楽のお陰だと私は思っている…。 




*** 
あとがき 

優花「あのドラマ好きだったなぁ」 

凛「ホントにね」 

日和「泣けるんだよなぁ…」 

芽依「物語がまたいいし、主題歌がまた良かったんだよね」 

愛「ああ。その曲もトリプルミリオン達成してましたね☆」 

優花「ホント誰が歌ってたのかしら?」

 愛「おやぁ~おやおやぁ~~」 

優花「…何よ、愛。その私は知ってますよ?お嬢様は知らないのですか?とでも言いたそう様な表情は?」 

愛「ホントにお分かりでない?」 

優花「…まさか…嘘っ…」 

凛「嘘でしょ?」 

日和「そうなのかっ!?」 

優花「まさか…お父さん?」 

「「「「「それはない!」」」」」

芽依「優花さんて…天然?」

優花「違うわよっ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

処理中です...