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第一部
初夏日和⑤
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アタシは女性の刑事さんに付き添われて家へと帰る事に…。 程なくして…家に着いて…後は家の中へ入るだけ…。
手を玄関のノブに掛けて…。
「入らないのですか?」
「…流石に…入り辛くて」
パパとママが家で私の事を待ってる事も心配してくれてる事も聞いてはいる。でも…ホントに?と、思ってしまうんだ…。
「大丈夫ですよ。子供を心配しない親なんていませんから。さぁ、両親が待ってますよ?」
「…うん」
“カチャッ──”
意を決し…家の中に入ると、アタシに飛び付く勢いで迫る2つの影…。
「「日和っ!!」」
「…パパっ!…ママっ!」
影はパパとママだった。
2人してアタシをコレでもかという程強く抱き締めてくれる…。
「日和…本当に…本当に…無事で良かった…」
「凄く…心配…してたのよ…?」
「ごめん…心配掛けて…ごめん…なさい…」
アタシは幼い子供の様に両親に包まれたままワンワンと泣いた。ずっと寂しかった事等の不満もそのままの勢いで両親にぶつけた。
女性の刑事さんは気を利かせてくれたのか、あるいはアタシを送り届けたのを見届けたのか…とにかくその場を後にしていた…。
♢
3人とも落ち着いてからリビングへと移動。事のあらましというか、何があったかは両親には大方説明されているとあの女性刑事さんからは聞いていた。
テーブルを親子3人で囲み──
こんな時だけど思ってしまう。こんな風にテーブルを家族で囲むのはいつ以来だろうかと…。
「──話は全て先程の刑事さんから聞いているよ、日和…」
テーブルに着いてから一番最初に口を開いたのはパパだった…。
「なんでそんな事をしでかしたのかも聞いてる」
そりゃあそうだよね。
「どんな理由があろうとも…万引きは悪い事だと…犯罪だと分かってるか?」
「…うん。分かってる。アタシが馬鹿だっただけ…」
「そうか…その場に立ちなさい…日和」
「…うん」
パパがアタシの目の前に立つ。パパは右手を振り上げ… 叩かれるのは当然だと思い目を瞑る。
“パシィィィーン──”
「っ!?」
肌を叩いた音がリビングに響き渡る。
(……あれ…痛っ…くない…?)
そ──っと、目を開くとパパは自分で自分の頬を強く叩いたんだろう…。手形がくっきりと頬に刻まれ赤く染まっている。
「すまなかったな…日和…本当に寂しい思いをさせてしまった…。これは父さんへの戒めだ…。日和を決して蔑ろにしない為のな」
「っ…パパ…」
「日和…。私からも謝らせて…本当にごめんね、日和…」
「っ…ママ…あ、アタシも…ごめん…もっと…2人にちゃんと…思ってる事を伝えれば良かった…」
「いや…父さん達が悪かったんだ。日和との…大事な娘との時間を取らなかったのだから…」
「パパの言う通りよ、日和。私達が悪かったの。でも…これからはしっかりと家族の時間をとるからね?」
「…ホントに?」
「ああ。パパ達は会社を辞めたんだ」
「…えっ?そ、それって…大丈夫なわけっ!?」
「心配ないわよ。もう次の仕事も決まってるから。前の仕事場よりも高待遇なの。休みも多いし、それに勤務時間だって長くないの。これからは昔みたいに私が夕飯も作るからね?」
「…これを言うと…言い訳に聞こえるかも知れないんだが…以前の私とママは日和の事を考えられなかったんだ。余裕がなかったのかも知れない。今…思い返すとあんなに寂しい表情をさせていたにも関わらずな…」
「ううん…ううん…構わないよ…これからは…違うんでしょっ?」
「「勿論。約束する!」」
「うん♪」
三人…また抱き合って…それからママが作った久し振りの手料理に舌鼓を打つ事に。
「あっ…それと日和」
「何?」
「明日から日和は1週間学校が休みになるだろ?」
「えっ…うん」
事件は表沙汰にはならないみたいなんだけど…あんな事があったから1週間、アタシの精神面等を考慮して学校を休む事になったんだよね。
「急なんだが明日から旅行に行くから」
「勿論家族3人でね♪」
「えっ? か、会社は!?」
「心配しなくても大丈夫だ。入社する前に言われてもいるんだ。今迄休まず働いた分、1週間程家族で旅行にでも行って羽を伸ばして来たらいいとね」
「ホントにっ!?ヤッタァー!」
家族で旅行なんて何十年ぶりかな?アタシが幼い時以来だよね。
「写真もビデオもたくさん撮るわよ!久しくそういうのも撮っていないしね!」
「うん、うん」
「ホント…彼の言葉は私達に「あなたっ!」…っと…すまない。何でもない…」
「…彼?」
そういえば…あの議員のオッサンも彼って言ってたような──
「ほ、ほら、これ見てみて。日和」
「こ、コレ…アタシが好きなバンドのライブチケット!?」
「それ明後日のライブチケットなんだけど、旅行の最中にライブにも行くわよ!私と日和の二人でね」
「父さんは二人がライブに行ってる間は旅館で飲んで待ってるからな?」
「あなたはこういうの嫌いだものね?」
「ああ…」
「パパも来たらいいのにっ!最高だよ、このバンドっ!」
「いや、パパは飲む方がな──」
好きなバンドの事、家族旅行の事でアタシの心は埋め尽くされていき…アタシが彼を知るのはまだ先の事となる。
***
あとがき
優花「初夏さん。本当に良かった…。家族とうまくいって……でも…彼の事は知らないでいいんじゃないのっ!?」
凛「本当に良かったけど…ソレねっ!?一番気になるところだよね!?」
優花「初夏さんパパがうっかり口滑らせそうなのよね…」
凛「ああ~~~ あり得るよねぇ~」
優花「私の時代はいつ来るのっ!?まだ?」
日和「来ねぇだろ」
優花「何故ここにっ!?」
日和「さぁ?アタシの時代だからじゃねっ?」
優花&凛「絶対に違うわっ!!」
手を玄関のノブに掛けて…。
「入らないのですか?」
「…流石に…入り辛くて」
パパとママが家で私の事を待ってる事も心配してくれてる事も聞いてはいる。でも…ホントに?と、思ってしまうんだ…。
「大丈夫ですよ。子供を心配しない親なんていませんから。さぁ、両親が待ってますよ?」
「…うん」
“カチャッ──”
意を決し…家の中に入ると、アタシに飛び付く勢いで迫る2つの影…。
「「日和っ!!」」
「…パパっ!…ママっ!」
影はパパとママだった。
2人してアタシをコレでもかという程強く抱き締めてくれる…。
「日和…本当に…本当に…無事で良かった…」
「凄く…心配…してたのよ…?」
「ごめん…心配掛けて…ごめん…なさい…」
アタシは幼い子供の様に両親に包まれたままワンワンと泣いた。ずっと寂しかった事等の不満もそのままの勢いで両親にぶつけた。
女性の刑事さんは気を利かせてくれたのか、あるいはアタシを送り届けたのを見届けたのか…とにかくその場を後にしていた…。
♢
3人とも落ち着いてからリビングへと移動。事のあらましというか、何があったかは両親には大方説明されているとあの女性刑事さんからは聞いていた。
テーブルを親子3人で囲み──
こんな時だけど思ってしまう。こんな風にテーブルを家族で囲むのはいつ以来だろうかと…。
「──話は全て先程の刑事さんから聞いているよ、日和…」
テーブルに着いてから一番最初に口を開いたのはパパだった…。
「なんでそんな事をしでかしたのかも聞いてる」
そりゃあそうだよね。
「どんな理由があろうとも…万引きは悪い事だと…犯罪だと分かってるか?」
「…うん。分かってる。アタシが馬鹿だっただけ…」
「そうか…その場に立ちなさい…日和」
「…うん」
パパがアタシの目の前に立つ。パパは右手を振り上げ… 叩かれるのは当然だと思い目を瞑る。
“パシィィィーン──”
「っ!?」
肌を叩いた音がリビングに響き渡る。
(……あれ…痛っ…くない…?)
そ──っと、目を開くとパパは自分で自分の頬を強く叩いたんだろう…。手形がくっきりと頬に刻まれ赤く染まっている。
「すまなかったな…日和…本当に寂しい思いをさせてしまった…。これは父さんへの戒めだ…。日和を決して蔑ろにしない為のな」
「っ…パパ…」
「日和…。私からも謝らせて…本当にごめんね、日和…」
「っ…ママ…あ、アタシも…ごめん…もっと…2人にちゃんと…思ってる事を伝えれば良かった…」
「いや…父さん達が悪かったんだ。日和との…大事な娘との時間を取らなかったのだから…」
「パパの言う通りよ、日和。私達が悪かったの。でも…これからはしっかりと家族の時間をとるからね?」
「…ホントに?」
「ああ。パパ達は会社を辞めたんだ」
「…えっ?そ、それって…大丈夫なわけっ!?」
「心配ないわよ。もう次の仕事も決まってるから。前の仕事場よりも高待遇なの。休みも多いし、それに勤務時間だって長くないの。これからは昔みたいに私が夕飯も作るからね?」
「…これを言うと…言い訳に聞こえるかも知れないんだが…以前の私とママは日和の事を考えられなかったんだ。余裕がなかったのかも知れない。今…思い返すとあんなに寂しい表情をさせていたにも関わらずな…」
「ううん…ううん…構わないよ…これからは…違うんでしょっ?」
「「勿論。約束する!」」
「うん♪」
三人…また抱き合って…それからママが作った久し振りの手料理に舌鼓を打つ事に。
「あっ…それと日和」
「何?」
「明日から日和は1週間学校が休みになるだろ?」
「えっ…うん」
事件は表沙汰にはならないみたいなんだけど…あんな事があったから1週間、アタシの精神面等を考慮して学校を休む事になったんだよね。
「急なんだが明日から旅行に行くから」
「勿論家族3人でね♪」
「えっ? か、会社は!?」
「心配しなくても大丈夫だ。入社する前に言われてもいるんだ。今迄休まず働いた分、1週間程家族で旅行にでも行って羽を伸ばして来たらいいとね」
「ホントにっ!?ヤッタァー!」
家族で旅行なんて何十年ぶりかな?アタシが幼い時以来だよね。
「写真もビデオもたくさん撮るわよ!久しくそういうのも撮っていないしね!」
「うん、うん」
「ホント…彼の言葉は私達に「あなたっ!」…っと…すまない。何でもない…」
「…彼?」
そういえば…あの議員のオッサンも彼って言ってたような──
「ほ、ほら、これ見てみて。日和」
「こ、コレ…アタシが好きなバンドのライブチケット!?」
「それ明後日のライブチケットなんだけど、旅行の最中にライブにも行くわよ!私と日和の二人でね」
「父さんは二人がライブに行ってる間は旅館で飲んで待ってるからな?」
「あなたはこういうの嫌いだものね?」
「ああ…」
「パパも来たらいいのにっ!最高だよ、このバンドっ!」
「いや、パパは飲む方がな──」
好きなバンドの事、家族旅行の事でアタシの心は埋め尽くされていき…アタシが彼を知るのはまだ先の事となる。
***
あとがき
優花「初夏さん。本当に良かった…。家族とうまくいって……でも…彼の事は知らないでいいんじゃないのっ!?」
凛「本当に良かったけど…ソレねっ!?一番気になるところだよね!?」
優花「初夏さんパパがうっかり口滑らせそうなのよね…」
凛「ああ~~~ あり得るよねぇ~」
優花「私の時代はいつ来るのっ!?まだ?」
日和「来ねぇだろ」
優花「何故ここにっ!?」
日和「さぁ?アタシの時代だからじゃねっ?」
優花&凛「絶対に違うわっ!!」
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