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第三十六話

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「歩美から聞いたよ、聖夜!なんでもキスしたんだって?」 

「はぇーよ、情報が…」 

「歩美がそりゃあ、もう、嬉しそうに言うからさぁ~」 

「それを聞いた俺はどんな反応すればいいんだよ…」 

「歩美の気持ちに応えればいいと思うよ」 

「どこかで聞いた様なアニメのセリフをパクるんじゃねぇーよ!?」 

 歩美が帰ってから2時間後の事だ。俺の家に輝昭がやって来たという訳だ。

 俺の部屋に入ってくるなり開口一番言った事がまさに冒頭になるわけなのだが…。 
 2時間前の出来事を早速掘り返すんじゃないってぇーの。こっちは未だに歩美の唇の感触が鮮明に残っているんだぞ! 

「まあ、元を辿れば聖夜が全部悪いんだけどね?」 

「…俺が?」 

「鈍感過ぎるし、なのに…無自覚に堕としていくから」 

「た、確かに鈍感なのは…認めるけども…後半の堕としていくというのは明らかに違うだろ!?」 

「いやいや…思い出してみなよ?」 

「…何をだよ?」 

「幼稚園に通っている時に同じ組だった、あんりちゃんとかなでちゃんって覚えてる?」 

「……ああ、覚えてるけど…」 

「あの2人、それこそ中学生2年生迄毎年バレンタインチョコを聖夜にあげてたよね?」 

「…何故それを輝昭が知ってるんだよ…。でも、アレは…アレこそ義理だぞ、義理っ」 

「馬鹿なの?聖夜は本当に馬鹿だよね?」 

「…お前がそう言うって事は…」 

「本命に決まってるよね?見てて分かるよね?それこそあの2人も歩美達程ではないにしても聖夜に対して好意を抱いていた事は分かりやすかったでしょっ!?」 

「…なん…だと―」 

「それだけじゃないよ!まだまだ他の子も―」 

「まだあるのかよ!?今の俺にはお腹いっぱい過ぎるんだがっ!?」 

「ふぅ…とにかく!いかに自分が鈍感で無自覚にたらし込んでいたか分かった?」 

「ぐぬぬっ…ふ、二股野郎に言われたくない!」 

「僕は別に2人の事を好きなんだし、将来も誓い合ってるからいいんだよ、聖夜と違ってね」 

「くっ…輝昭が眩しすぎるぜ…」 

 これが主人公の力か!?そういえば主人公には不思議な主人公補正という力もあるらしいしな。眩しいのはその力か!? 

「また変な事を考えてるね?」 

「何故バレたし!?」 

「何年の付き合いだと思ってるのさ…」 

「…幼稚園の頃からだな」 

「歩美は勿論の事、結伊ちゃん、それに美優ちゃんも付き合いが長いよね?」 

「…ああ」  

「出来るなら…友達として…友達の泣き顔やショックを受けた姿は僕は見たくないから…だから誰一人泣かせて欲しくないけどね?」 

「…ハーレー厶王になれってか?」 

「ありなんじゃない?」 

「………俺は…」 

 俺だって…泣かせたくなんてないけど… 

「じゃあ、僕はそろそろ帰ろうかな!」 

「…何しに来たんだよ、お前は!」 

「聖夜をからかいに」 

「帰れっ!」 

「うわ、怖い怖い。じゃあ、また来るよ」 

「二度と来るな!」 

 そんな事を言い合いながら輝昭は部屋の入口に向かう…。そして部屋を出て、俺の部屋のドアを閉めようするその時… 

「…聖夜」 

「…なんだよ」 

「…僕はいつでも君の力になるからね?」 

「…ありがとうな、輝昭」

  親友か…。前世ではそんなもん居なかったしな。しっかりまずは自分自身で考えて…それでも解決しない時は頼らせてもらおうかな…。なぁ、親友? 

 そんな風に輝昭が帰った後、俺は思ったのだった。





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