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第一部

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 露店への買い出し。商品を見て回る。ふと視界に入る見慣れた顔。

 俺は目を疑った。何度も目を擦りもう一度見る。ソイツは消えない。拳を固く握り締める。爪が肉に食い込み血が垂れて来る。痛みがあるのだ。間違いない。どうやってこの世界に来たのかは分からない。だが奴の顔を見る度、された事に対する憎しみが怒りが次々に沸いてくる。

 落ち着け。まずはあいつにもレベルがあるのか確認するのが先決の筈…落ち着け。息を整えろ。俺は復讐の為に生きているんだろ!

「ふぅ、ふぅ…『ステータス』」

───

ジュンコ・オオスギ

level     1

❬職業《ジョブ》❭地球人

───

 レベルは1、スキルは無い。ジョブに関しては姿で来たからだろう。

 キャラメイクされていたら分からなかった。神がいるのかは分からないが感謝しよう。悪役らしく悪魔に感謝した方がいいか?
とにかく1人目に復讐する機会をくれてありがとうと…

 そして2人の存在が認識されない様になる魔法をジュンコにされた事を思い返しながら解き放つ「『プレベント』!」空間が2人だけを包み込む。



*****


「流星《りゅうせい》兄さんはカッコいいのにあんたは何なのよ!気色悪いったらありゃしない!」

「近くに来ないで臭いから」

「早く死んでくれない!あんたがいると友達も連れて来づらいのよ!」

 毎日毎日ジュンコからの罵倒は当たり前だった。俺の家族は俺以外見た目は良かった。

 物心ついた時には両親からは名前すら呼ばれた事はない。両親と兄貴からは殴られ妹からは罵倒。食事も酷い物だった…目の前であいつらは美味しい料理、高級な料理を見せびらかす様に食べていた。俺には残り物、腐った物、最後に貰った料理はそこら辺の草。

 そんな辛い毎日でも必死に生きた!死ぬ勇気すら前世の俺には無かったからだ。

 中学を卒業してからは人に会わないですむバイトを探して金を稼いだ。仕事は探せば色々ある。家から出る為の金が欲しかったからだ!

…思い返してみるとジュンコ以外も必ず出てくる嫌な人生だな。ジュンコにだけ絞ると稼いだお金を勝手に取る事、罵倒、親の金を盗み俺のせいにしたこと。殺されるには十分な理由だろ?


*****


「もー今度は何よ!これゲームの筈でしょ。妙に全てがリアルだし…さっきつまづいて転んだ時本当に痛い気がしたし、挙げ句さっきまでどっかの街の人混みにいた筈なのになんか急に消えたし最悪なんですけど~!」

「おい」

「!?…びっくりするじゃない!何、何かのイベントが始まったの?ログアウト出来ないし、やるんじゃなかったこんなクソゲー!」

「『キャプチャー』!」

「何よ!何よ!何、この変な鎖は…離して、離しなさいよ!もー」

「黙れ!ジュンコ!」

「あれ、私…自分の名前入れたっけ?」

「ここはゲームの世界であって現実だ!」

「ハイハイ!そういう設定なのね。スキップはどこよスキップは!」

「馬鹿には言葉だけでは分からないか?」

俺は弓矢を取り出し左足の甲に向かって放つ

『ピシュっ』

「!?…痛い痛い痛い何でゲームなのに痛いのよー…グスッ」

「分かったか?ジュンコ。現実なんだよココは!」

「ウ、ウッ、現実でも何でもいいから離して!もう私は帰るの!帰りたいの…グズっ」

「帰りたいなら今から言う質問に答えろ!お前はどうやってここに来た?」

「ウ、ウッ、現実でも何でもいいから離して!もう私は帰るの!帰りたいの…グズっ」

「帰りたいなら今から言う質問に答えろ!お前はどうやってここに来た?」

「ううっ、知らないわよ!そんなものこっちが聞きたいわよ!」

「チッ、この世界に来る直前の事を答えろ!答えないなら右足の甲も射貫く!」

「…死んだ馬鹿の部屋に置いてあったのよ!クラスでこのゲームが流行っていたから、グスッ…なのに、頭に装着したとたん急にゲームが始まって街に居たのよ!ついさっきの話よ!ううっ…」

(…やっぱり向こうの俺は死んだんだな…分かってはいたがやはりショックなもんだ…しかしコイツの話では俺のVR機を使ったみたいだが俺のだからこっちに来れたのか?不味いな、向こうに早く行かないと俺みたいに力を持ったら厄介だし、キャラメイクされてたら見付けるのは無理だ)

「ちょっと聞いてるの!言ったんだから帰しなさいよ!ううっ、足が痛むんだから」

「うるさい。相変わらず俺のモノを盗んだお前の自業自得だろうが!」

「俺のモノって何よ!これは…」

「…セイヤ…オオスギセイヤの持ち物だろ!」

「…何でよ、あんたが何で馬鹿の名前を?」

「姿変わってて分からないだろ、俺がセイヤだよ。お前にずっと金取られたり罵倒されてた!」

「嘘よ!何よこのゲーム、あんな糞の話をするゲームなんておかしいわ!…そうよ!あいつが作って私に幻を見せているのよ!」

「まぁ、普通信じられない、か。お前が理解する迄俺が受けた痛みをお前に分けてやるさ!あ~楽しみだ」

俺はジュンコの右手首を掴み、

「何すんのよ!触んないでよ!」

「そうそう。ジュンコ知ってるか?昔何かで見たか聞いたかした事なんだが、お前はこの手で俺のモノを盗んだだろ?だからこんな手はいらないよなぁ~『ニヤッ』」

「えっ?」

 アイテムボックスから園芸用のハサミを取り出した。商人が持っていたものだ。俺が有効に使ってやる!

 ハサミで小指を挟みゆっくり切っていく…

「嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘『ブシュッ』いやぁー痛い痛い痛い痛い痛い、止めろー止め、『ゴリュッ』指が私の小指がぁぁ痛『バツン』ああわーぁぁ痛いよー」

「おいおいおい、まだ1本目だし、ここはゲームの世界なんだろ?クックックッ」

「もー痛いのは嫌ー信じ、信じるから!もーやめ『バツン』いぎゃーぁぁぁあ『バツン』ぁぁうおでがい、『バツン』う『バツン』」

「ほら、見てごらんよジュンコ、指が無くなって綺麗になったぞ!まだまだ先は長いから血が無くなってしまわないよう焼いてやる」

『ジュー…ジュッ…ジュッジュッ…ジュッ』

「あああぁあぁ──────────っ」

『シャドウフレイム』で焼いて止血。うんうん。完璧だな!

「もー…おでがいですがら止めて、うう」

「金を盗んだお前に俺は言ったよなぁ、止めろと。その時のお前は何て言った?」

「…ううっ…」

「あんたのモノじゃない。あんたのモノはこの家には無いの!私のモノよ!って言ったんだぜ!一字一句俺は覚えているぞ」

「本当にセイヤ、お兄ちゃんなのね?」

「名前もそうだがお兄ちゃんなんて呼ばれた事ないけどな」

「お兄ちゃん、わ、私が悪かったの。ううん、リュウ兄が…リュウ兄から命令されてたの!だから私は…」

「そんな嘘誰が信じるんだ?心配しなくてもちゃんとリュウセイのクソにも報いは受けさせるに決まっているだろうがぁ!」
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