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第五章
帰城
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陛下が王都へと戻った…。その報せを聞いたクララは急ぎ王の間へと向かった。王の間には戦いの痕跡がまだ数多く刻まれている…。と ある柱に刻み込まれている傷を手でなぞるように触れている陛下の姿をクララの視界はしっかりと捉えた…。そしてそれは王も同じだった…。
「陛下っ!」
「クララっ!」
陛下の御前という事で自身の膝を地面に着こうとするクララの動きを遮り、レインローズはクララを強く抱き締めた…。あの頃を思い出すかの様に…
「っ!?へ、陛下っ…!?さ、流石にこれは…もし…誰かに見られたらどうするのですっ!?」
「構うものかっ!わしがっ…わしがどれだけお主の事を心配したと思っておるっ! ?わしがどれだけ今でもお主の事を愛していると思っておるのだっ!そんな事さえ分かってもらえぬのかっ!?」
「…陛下…お戯れは…」
「あの頃の様に…あの頃のように…今だけでもウィルと呼んでくれないか…」
「…ウィル」
若い頃2人は愛し合っていた…。クララは次期王妃になるだろう…誰もがそう思って止まなかった… しかし2人を悲劇が襲う…。若い2人は婚約前から睦み合っていたのに関わらず…一向に妊娠する気配がなかったのだ…。ウィルは気にしなかった…。
わしに何か問題があるのだろう…と。 先代も子沢山ではなかったしと笑っていた。
そして…クララもまた…私自身に問題がある…そう思っていた…。だからこそ…クララは自ら婚約を破棄した。
ウィルはクララに婚約の破棄は認めぬ!生涯傍におってくれと懇願。王妃になるように説得するもクララが首を縦に振る事は終になかったのだった…。 クララは代々受け継がれてきた知に優れていた一族の血を引き継いでいた…。王妃と宰相…道は違えど王に尽くす事だけは変わらなかった…。
それは…愛する男の為に…
「…お主は…そこで何を解説しておるのじゃ、ティーネ?」
「ティーネ様っ!?」
慌ててクララはウィルから距離をとる…
「ええい!いい加減ティーネは解説を止めんかっ!」
「あまりにもお二人が熱かったのでつい、テヘペロ!」
「て、テヘペロ等…王妃が使う言葉ではございませんよ?」
「ふふふっ…いつものキレがありませんわね、クララさん?」
「っ!?」
「―して、何用なのじゃ?」
「ちょうど、良かったので余生のお話をと思いまして…」
「…余生じゃっと?」
「余生…ですか…?」
2人の声がハモる…
「実況はいらんわい…それで余生とはどういう事じゃっ?」
「王の座を…譲られるおつもりですよね、陛下は?」
「…そうか…気付いておったか…」
「!? 陛下!? 今のお話はっ!?」
「クララも知っての通り…もう…何年も前から決めておったし…口癖の様にわしは言っておったじゃろうて?」
「で、ですが…」
「それに…レインローズは先日陥落したじゃろ?」
「私が…私が守れなかったばかりに…」
「それは違うぞ…」
「ですが…」
「新しい時代が来たのじゃ…これからは新しくエルやランス…それにティアや孫達が時代を作ってくれるじゃろうて…。わしは孫と戯れながら…残りの余生はお主とも過ごしたいのじゃ…クララ」
「そ、それは…」
「もう、よいじゃろう?わしの残りの余生…全てお主とも分け合っても…」
「ですが…私…は…」
「そうしましょうよ、クララさん?ティア達みたいに…愛する人の傍に…」
「クララ…頼む…わしはもっと早く…お主にこの想いを伝えるべきじゃったのじゃっ!生ある限り…わしの傍に…おってくれ!おると言うてくれぬか、クララ。あの頃のようにわしの名を呼んでおくれ…」
「…はい…ウィル…」
「陛下っ!」
「クララっ!」
陛下の御前という事で自身の膝を地面に着こうとするクララの動きを遮り、レインローズはクララを強く抱き締めた…。あの頃を思い出すかの様に…
「っ!?へ、陛下っ…!?さ、流石にこれは…もし…誰かに見られたらどうするのですっ!?」
「構うものかっ!わしがっ…わしがどれだけお主の事を心配したと思っておるっ! ?わしがどれだけ今でもお主の事を愛していると思っておるのだっ!そんな事さえ分かってもらえぬのかっ!?」
「…陛下…お戯れは…」
「あの頃の様に…あの頃のように…今だけでもウィルと呼んでくれないか…」
「…ウィル」
若い頃2人は愛し合っていた…。クララは次期王妃になるだろう…誰もがそう思って止まなかった… しかし2人を悲劇が襲う…。若い2人は婚約前から睦み合っていたのに関わらず…一向に妊娠する気配がなかったのだ…。ウィルは気にしなかった…。
わしに何か問題があるのだろう…と。 先代も子沢山ではなかったしと笑っていた。
そして…クララもまた…私自身に問題がある…そう思っていた…。だからこそ…クララは自ら婚約を破棄した。
ウィルはクララに婚約の破棄は認めぬ!生涯傍におってくれと懇願。王妃になるように説得するもクララが首を縦に振る事は終になかったのだった…。 クララは代々受け継がれてきた知に優れていた一族の血を引き継いでいた…。王妃と宰相…道は違えど王に尽くす事だけは変わらなかった…。
それは…愛する男の為に…
「…お主は…そこで何を解説しておるのじゃ、ティーネ?」
「ティーネ様っ!?」
慌ててクララはウィルから距離をとる…
「ええい!いい加減ティーネは解説を止めんかっ!」
「あまりにもお二人が熱かったのでつい、テヘペロ!」
「て、テヘペロ等…王妃が使う言葉ではございませんよ?」
「ふふふっ…いつものキレがありませんわね、クララさん?」
「っ!?」
「―して、何用なのじゃ?」
「ちょうど、良かったので余生のお話をと思いまして…」
「…余生じゃっと?」
「余生…ですか…?」
2人の声がハモる…
「実況はいらんわい…それで余生とはどういう事じゃっ?」
「王の座を…譲られるおつもりですよね、陛下は?」
「…そうか…気付いておったか…」
「!? 陛下!? 今のお話はっ!?」
「クララも知っての通り…もう…何年も前から決めておったし…口癖の様にわしは言っておったじゃろうて?」
「で、ですが…」
「それに…レインローズは先日陥落したじゃろ?」
「私が…私が守れなかったばかりに…」
「それは違うぞ…」
「ですが…」
「新しい時代が来たのじゃ…これからは新しくエルやランス…それにティアや孫達が時代を作ってくれるじゃろうて…。わしは孫と戯れながら…残りの余生はお主とも過ごしたいのじゃ…クララ」
「そ、それは…」
「もう、よいじゃろう?わしの残りの余生…全てお主とも分け合っても…」
「ですが…私…は…」
「そうしましょうよ、クララさん?ティア達みたいに…愛する人の傍に…」
「クララ…頼む…わしはもっと早く…お主にこの想いを伝えるべきじゃったのじゃっ!生ある限り…わしの傍に…おってくれ!おると言うてくれぬか、クララ。あの頃のようにわしの名を呼んでおくれ…」
「…はい…ウィル…」
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