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第四章

何の匂い…?

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 朝を迎えた…。目を覚ますと真横にはスヤスヤと眠るエルの姿…。大好きな人が傍に居るってなんて幸せな事なんだろう。エルは最後迄、私と一緒に眠るのを渋っていたけど我儘を通して良かったと思う…。

 昨日は恥ずかしい姿を見られちゃったけど、結果的には良かったのかも知れない。い、いずれは…その、ねっ?全部見せちゃうんだしさっ…。それに、を見て鼻血を出したって事はレーティさんの言う通り興奮したって事だよね?

 エルを挟んで向こう側には同じ様に目を覚まして私と同じ様にエルを愛おしそうに見つめるマリンさんとレイラちゃんの姿。昨日の添い寝は私とマリンさんとレイラちゃんの3人だった。私達はエルを挟み込む様にして寝ていた。レイラちゃんはマリンさんの横と言う事で少し不満気味だったけど、羨ましい事にいつもはエルの横に寄り添う様に一緒に寝ているらしいし、私が居る間位は譲ってね?

 エルの匂いをマリンさんが堪能する様にスゥッ~っと息を吸い込んだんので私も負けじと息を吸い込む。

「すぅ~~  んっ?」

 いつものエルのいい匂いとは別に何かの匂いがする…。何だろう?

「すんすん…なんか…今日は…イカ匂いするし?」 

 マリンさんが言う。

「すんすんすん…確かに…。何か独特な匂いがしますね? 記憶にこれと同じ様な匂いを嗅いだ記憶がある気が…」

 レイラちゃんもエルに近付き匂いを確かめながらそう言った。

「あ~しもどこかで嗅いだ記憶があるし…」 

 私も同じ様に思う。すんすん…。何だったかな、この匂い?もう少しで思い出せそうなんだけど…。

「すんすん…はっ!?」 

 レイラちゃんが何か気付いたみたい。

「何か分かったし?」
「何か分かったの?」 

「これって…春頃咲く栗の花の匂いでは…?」

「「っ!? 」」

「そ、そうだし!それに間違い無いっしょっ!」 

「…確かに…すんすん…うん、間違いないと思う…」

「「「でも…何でそんな匂いが…(するし)?」」」 

「だよね?」

 エルの部屋の中には栗の花なんて勿論ない。 

「んっ…それは後で答える。今は…」 

「「「えっ?」」」 

 どこから現れたのか、いつこの部屋に入って来たのか全然分からなかった。声の方に視線を向けると私達が横たわるベッドの傍にレーティさんがいつの間にか立っていた…。

 全く気配に気付かなかったんだけど!?私も鍛えているというのに!?気配に敏感なマリンさんですら気付かなかったみたいでその顔は驚愕の表情を見せている…。 

「(しぃ~)」

 人差し指をピトッと、唇にあてがい静かにっと私達に合図を出すレーティさん。

 そんなレーティさんの仕草に一瞬心を奪われた私達。レーティさんはその一瞬でエルへと近付き、エルの鼻と口に白い布の様な物をあてがう…。 

 …って、エルに何をしてるんですかっ!?声をあげようとする私達をレーティさんは視線だけでそれを止めた…。威圧だろうか?とにかくミーニャさんもそうだけど、レーティさんも凄すぎない!?

「んっ…3人共もう喋っていい…」

  暫くしてからレーティさんがそう言った。

「え、エルに何をしたんですか?」

「え、エル様に何を?」 

「エ、エルに…な、何したし!?」 

 私達は同じ様な事を尋ねます…。レーティさんの意図が全く分かりません。窓に視線を向けると外はまだ暗い…。まさか…エルを裏切るつもりとかっ!?

 そんな考えも頭をよぎってしまう…。 

「な、何で居るし!?それよりもエルにあてがっている布は何っしょっ!?」 

「んっ…これには―――という薬品が染み込ませてある」 

「「「…はっ?」」」

 それって確か… 

「強力な麻酔薬っしょっ!?何してるしっ!?」 

 私もその薬品の名は聞いた事がある…。医療で主に使う薬品の名だ…。それを悪用するとしたら誘拐する時によく使われる薬品…。

 レーティさんは…敵っ!?私達3人は構えます。警戒を怠りません…。もう…エルと離れ離れは絶対に嫌…。エルは私が守る…。

 「ん?…3人共何で構えてる? もしかして…この分かってない?」 

「「「それは…」」」 

 私とマリンさんとレイラちゃんは顔を見合わせます…。この匂い…って、栗の花の匂いの事ですよね?それにレーティさんは私達と言いましたね…。

「匂いって…この栗の花の匂いの事ですよね?」 

「んっ…そう」 

「…どっかでイカでも焼いてるし?」 

「ん…そんな訳ない」 

「全く分かりません」 

「私も…分かりません」

「ん…3人共まだまだお子ちゃま」

「「「!?」」」 

 お子ちゃま!?私だって…胸は少し大きくなったもん! 

「ん~っ。しょうがない。教えてあげてもいい…。その代わり…今から起こる事は私達だけの秘密にする事…それが条件」 

 私とマリンさん、レイラちゃんはまたもや顔を見合わせ…お互いに頷きあい、条件を呑むことにしました…。 

「分かりました。ですが…」

「分かったし…。でも…」 

「…私も守ります…。でも…エル様に危害を加えるおつもりでしたら…私達はレーティさんがいくらお強くても…」 

「ん…その志は立派。心配はしなくていい…。私もエル様が大好きだからそこに嘘はない」 

「分かりました…。それでは、レーティ様はエルに何をされるおつもりで?」 

「んっ…まずこの匂いはそこから出ている」

 レーティさんが指を指した方を見ましたが…全く分かりません。そんな私達を見兼ねたのか… 

「んっ…分からないのならこれを見るといい3人共…」  

 レーティさんはエルが掛けている布団を剥ぎました…。そしてまた指を指します。その指し示す場所はエル………の股間? 

「んんっ…?まだ分からない?」 

「「ううっ…すいません。分かりません…」」 
「分かるわけないしっ!?」

 レーティさんが何を言いたいのか、レーティさんの指が何を指し示しているのかが全く分かりません。おねしょ…ってオチじゃないよね?

「ん…ならば…刮目せよ?」

 レーティさんはエルの下半身に身に着けているものを一気にずりおろし…ブルンっと天を突くドリルが…。その瞬間、俺のドリルは天を突くドリルだとか聞こえてきた気がする…。

「「「あばばばばっ…」」」

 両手で視界を塞ぎつつ…塞いだ様に見せかけて指の隙間からしっかりと確認はします…。だ、だって、何が起こってるのかは確認しないといけないよね!?わ、私がエッチな訳じゃあないからねっ!?そ、そう!レーティさんがおかしな事をしないか確認しないといけないではないですか!?そうでしょっ!? ほ、ホントだよ?

「ん…これが答え」 

「「「こ、これは!?」」」 

 私達がそこで見たものは…私の想像を遥かに超えて天元突破したものなのでした…。
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