上 下
61 / 140
第三章

幕間 エル9歳、ミミ9歳

しおりを挟む
『イチ♪ニィ♪サン♪シ~♪ありがと~う♪ありがとうが聞こえな~い♪熟成♪ショタ神レクイエ~ム♪』 

 今、俺が聞いているのはレコードだ。かの有名なエジソンが発明したと言われるアレだ。何でこの世界にそんなものがあるのかって?それはようやくこの世界にもレコードが誕生したからだ。

 ちなみにですが俺が作った訳ではないよ? 少しだけ関わってはいるけどね。いや~天才というか凄い人ってのはどこにでもいるよね…。俺が分かる範囲で仕組みを伝えて、発明に発明を重ねてレコードが出来てきたんだから…。
 
 俺が伝えた事と言えば針と溝が彫られた円盤、そしてそれが回転…。これだけだよ?それでレコードが出来るんだから人間ってホント凄いと感心する…。ヤればホント何でも出来るという証明だな。

 とにかく、レコードが出来たからには音楽を聞きたい!誰だってそう思うだろ?特に現世の音楽とかを聞きたくなった。異世界だし著作権とかそんなの関係ねぇ~!おっぱぴー♪ 





 ―というわけで、9歳になってすぐに俺が向かったのは王都だ。何で王都かって?ふふふっ…それは彼女をアイドルにスカウトする為だ。そして、かの有名な歌を彼女に歌って欲しかったからだ。その曲を歌えるであろう人物に俺は心当たりがあったというわけだ。 

「―と、いうわけで…君もアイドルにならないか?」

 これまた有名なあのアニメの台詞を俺なりに取り入れて使わせてもらった。この言葉で彼女を勧誘するんだぜっ! 

「とととと、突然尋ねて来たと思ったら唐突に意味が分からない事を言わないでよ、エル君!?アイドルってまず何なのっ!?」 

「曲のイメージに合うのがミミしかいないんだよ?頼むから今日からし◯れミミになってくれ!なっ、頼むっ!」 

「何その名前!?まずどういう事なのか最初から詳しく説明してよっ!?」 

「それもそうだな」

  彼女の名はミミ。彼女との出会いは3歳の頃…。彼女が迷子になっていた時にティアと2人でミミのお母さんを捜してあげた事が始まりだ。

 それからの付き合いだから…ティアやランスと同じで俺の幼馴染みたいなもんだな…。 だから…彼女が歌が上手い事も、体型がロリっぽいのも、猫耳と猫の尻尾が堪らない所も、9歳になった事も知っている。

 そんな彼女に俺はアイドルとは何かを丸一日を費やして伝えた。少しだけ熱くなってしまったがなんとか分かって貰えたと思う。 

「つ、つまり…私が人前でダンスしながら歌を歌ったり、その…私の歌った歌が何回も機械で流れるという事?」 

「うん、簡単に言えばそうだよ?猫耳や尻尾をピコピコ動かすのも忘れないでね?」 

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!? 人前で歌って踊るなんてっ!?それに耳と尻尾まで曲に合わせて動かせって!?」 

「大丈夫!ミミなら出来る!ミミだけに耳が抜群に可愛いから!」 

「…な、なんでそんな絶大な信頼があるのか分からないけど…私には無理だからっ!?可愛いってエル君に言われるのは嬉しいけど無理だからっ!?」 

「ミミよ。よく聞いてくれ…。世の中にはこんな言葉があるんだ。ヤれば出来るさっ、道っ!!!」 

「ないよっ!?ないからっ!?そんな言葉ないからねっ!?どこの言葉なの!?ヤれば出来るさ道って曖昧過ぎるよっ!?」 

「頼むよ…ミミしかいないんだ…。それに…」

「そ、それに何?」 

「アイドルとは特別なモノなんだ。数多のアイドルが誕生し…競い合いながらナンバーワンの座を目指す…。だからこそナンバーワンアイドルになれば何でも願いが叶うんだよ…」 

「…え~と…願い?」 

「そうだよ?陛下にも既に許可は取ってきたよ?」 

「…行動力があり過ぎるよ、エル君…。でも…」

「でも?」 

「アイドルって…その…今は居ないんだよね?なのに…ナンバーワンアイドルって…何?私がアイドルになったしても1人しか居ないんじゃあ競う相手もいないし意味ないんじゃないの?」 

「そこら辺は大丈夫!これから増やしていくし、事務所も設立するしね。でも最初のアイドルにはミミになって欲しいんだ!みんなに夢を与える職業だと言えるように!だからこそナンバーワンアイドルになって本人が望めば貴族にだって何にでもなれる…。流石に王族とかは無理だろうけど…。とにかくそんな風に夢を与える様にしたいんだ!それで、1年に一回、ファン投票やらなんやらで誰がその年のナンバーワンアイドルなのか?のアンケートなんかをとったりして票を取って決めるんだ」 

「…1年に一回…。その…ナンバーワンアイドルになれば…本当に…願いが叶うの?」 

「うん…そのつもり…まあ、勿論願いにも限度はあるけど…貴族になるとか、お金とかは大丈夫!」 

「…その…す、好きな人と…あの…その…結婚…とかは…出来たり?」

 んっ?何でチラチラ俺を見るんだ? 

「ミミは好きな人…結婚を考えている人がもういるの?」 

「ふぇっ!? あっ…うん…居る…よ?」 

「なるほどな…。ぶっちゃけ問題ないんじゃない?」 

「それって…ほほほ、ほんとにぃー!?」 

「だってナンバーワンアイドルと結婚よ?断る人なんて居ないだろうし、俺なら喜んで結婚するな」 

「ほほほほほほ、本当の本当にっ!?」 

「任せロリ!男に二言はないっ!」 

「…それ女に二言はないだからね?間違えたら駄目だよ? と、とにかく分かったよ、エル君…。私…頑張ってみるよ!」 

「よ~し!その意気だ、ミミ!」 

 そして…この年、初めてのアイドルがローズレインに誕生した。ホ◯ライブで例えるならときの◯らちゃんだな。彼女がホ◯ライブの◯チューバー界隈の礎を築いたと言っても過言ではないだろう。俺はそう思っている。

 前世で大好きだったんだよな。歌声が大好きでCDもグッズも買ってたんだよな。おすすめはスタースタース◯ートが収録されたアルバム。これがまた何度も聴きたくなる程クセになるんだよ。そして振り付けがまた素晴らしいんだ。可愛くて何度観ても飽きない。気になったら是非チェックしてくれよな?

 まあ、ちょっと熱く語り過ぎてしまったのだが何が言いたいかと言うと、アイドル業界の礎をミミが築いてくれたって事だな。

 閑話休題…。

 そしてアイドルデビューが決まったミミはアイドル活動を懸命にこなしていったんだ。そしてとうとう待ちに待ったレコードが発売された。ミミが出したレコードは3枚。 

『ショタ神セレナーデ』 

『スタースターゴール』 

『猫耳可愛い過ぎて・ご・め・ん♡』 

 いずれも言わずもがな、大ヒットも大ヒット!レコードの生産が追い付かない事態に…。

 その年数多くのアイドルがデビューしたのだが、ミミはその年、翌年、翌々年のナンバーワンアイドルとなった。ブイスリー達成。

 やはり…俺の目に狂いはなかった…。冒頭の俺が聞いていた曲はそんな彼女のデビュー曲『ショタ神セレナーデ』だ。 

 そして、見事ナンバーワンアイドルの座を射止めた彼女はまず願いを一つだけ叶えたんだ。まず彼女は貴族になった。もしかしたらだけどミミの結婚したい人は爵位が高いのかも知れない。そう思った。

 で、後の2つの願いは今の所だが保留にしているみたいだ。何を叶えるつもりなのかは聞いていないけど、一つはその誰かとの結婚だろうな…。

 まぁ、余談になるのだが、ナンバーワンアイドルになれば願いが叶うと言う事でアイドルを志望する者が増えた。まあ、当然と言えば当然の結果なんだけど…。ちょっとだけやり過ぎた感はある…。ごめんねテヘペロっ!
 

「エ、エル君!?」

「んっ?どうした?スケジュールの確認?」

 一応ミミのマネージャーは俺が兼任している。

「違うの。そうじゃなくて…あのね…じゅ、15になったら…私はアイドルを引退するから…だから…その後は…どうするか勿論分かってくれてるんだよね?」

  ミミが最近になってそう言ってきたんだけど…引退は分かるんだけどその後って何だろうな?アイドルじゃなくてタレントとかそういう事をしたいという事かな?それともマネージャーか?いや、違う!結婚したい人との段取りを準備して欲しい…そういう事かっ!?

 そう思った俺は… 

「当たり前だろ?勿論全部分かってる…。ミミの事は俺に任せとけっ!」 

 そう言ったんだ…。そしたらさぁ、ミミは顔を紅く染めながらもとびきりの笑顔で…

「約束…だよ?」

 勿論約束は守ると言っておいたんだけど…何かマズった感がするのは気のせいだよな?

 とりあえず今日も猫耳と尻尾をモフらせてもらおうかな…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でスローライフを満喫する為に

美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます! 【※毎日18時更新中】 タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?

かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。 主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。 ここでの男女比は狂っている。 そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。 この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。 投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。 必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。 1話約3000文字以上くらいで書いています。 誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。

恋愛ゲームのモブに転生した俺!~ヒロインキャラが全員好感度MAXなのは気のせいでしょうか?

美鈴
ファンタジー
恋愛ゲームのヒロイン全員を攻略し終えた瞬間何故かゲームのモブに転生していた。モブだから平穏に生きようと決めたのにヒロイン全員寄って来るのですがなんでですか?しかもゲームはまだ本編始まってないですよね? ※エロには★がついています。 ※カクヨム様にも投稿しておりますが内容が異なります。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...