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第一章
初めての感覚
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私は近頃おかしい。エル君の事ばかり考えてしまう。生誕祭の時にエル君があんなに…あんなにいっぱい私を褒めるような事を言ったからだと思っている。
だからだとは思うのだけれど、その事を思い出しただけで何故か頬が熱くなり、心臓の鼓動が早くなる。なんなのかな、これ?病気じゃないよね? お父さんが私を褒めてくれる時とは違うこの感じ。本当になんなんだろう?
♢
生誕祭の翌日にエル君が領地に帰ると聞いた私は宰相のクララさんにエル君に会いに行く事が出来るか相談したの。エル君に会えばこのずっとモヤモヤした気持ちの正体が分かると思ったしね。
「クララさん!あ、あのね…その、エル君が今日帰ると聞いたんだけど…」
「そうみたいですね。もう少しゆっくりして頂きたかったのですが…。それでティア殿下はどうかされたのですか?」
「そのね、もう一度エル君に会っても…会いに行ってもいい?」
なんでクララさんに相談したかと言うとクララさんなら何とかしてくれると思ったから。いつも私を気がけてくれてるしね。お父さんには言ってない。言ったら絶対にお父さんは駄目って言いそうな気がしたから。
「クスッ…ええ、勿論です、ティア殿下」
クララさんは笑いながらそう言ってくれて、護衛をすぐに用意してくれたうえに、クララさんも私に付いてきてくれたの。
やっぱりクララさんは優しいし、頼りになるよね。
エル君が泊まってる宿に着いたら丁度エル君達は宿を出る所だったの。間に合って良かった。
「エル君!」
「ティア殿下どうしてここに!?」
私が来るとは思っていなかったエル君は本当にビックリしていた。そんなエル君を可愛いと思った。ただ、会話をしている間、ずっと私の事を殿下と呼んでくる。それが普通の事なんだけどその事に対しても何やらモヤモヤしてくる。他人っていうのか友達でもないみたいでとにかく嫌だった。
エル君には私を名前で呼んで欲しい。そう思った私はエル君との距離を詰め、ありのまま思った事を伝える事にした。
「ティア」
「んっ?」
「殿下はいらない。ティアって呼んでほしい…」
「それは…無理なんじゃ…」
「構いませんよエル殿?あなたにはティア殿下が名前で呼ばれたいとそう望まれていますし」
ナイスアシスト!グッジョブ、クララさん!やっぱりクララさんは頼りになるなぁ~。
「だからお願いエル君…ねっ?」
「分かったよ…ティア。コレでいい、ティア」
“トクン……トクントクン…”
まただ…また私の心臓?心?とにかく私の中の何かが心地よいリズムで早鐘を奏でる…。ただ名前を呼ばれただけなのに…。それを非常に嬉しいと感じる自分がいる。
「こ、今度はいつ王都に来る?」
「う~ん…遠いし…まだ分からない…かな」
しばらく会えない…。そう思うと自然に涙が出てきた。 エル君は右手の人差し指で私の涙をスッ―っと、すくい取り、私の頭をポンポンとした。触れられた箇所が異様に熱く感じる…。
「…出来るだけ早く王都に来る様にするから、泣かないでティア?」
「ほ、ホント?」
「約束するよ!」
「…うん、じゃあ…約束」
♢
そしてエル君は領地へと帰って行った…。エル君が帰った後も考える事はエル君の事ばかり…本当に私…どうしちゃったのかな?
クララさんに聞いたら「それはそのうちご自身で分かられる事ですので…。嗚呼…それとそのことは絶対に陛下には言わない方が宜しいですよ?」と、言われてこの気持ちがなんなのかは結局教えてもらえなかった。残念…。
あ~あ。エル君の事を考えていたらエル君に会いたくなってきちゃたな。今頃何してるかな? エル君…。
♢
~王の間~
「宰相よ…」
「…どうされました?」
「あの小僧に口説かれてからわしのティアの様子がおかしくないか?」
「…口説いた訳ではないと思いますが?」
「あんなの飲み屋の姉ちゃんを口説く時の言い方じゃねぇーかっ!?」
「そうは言っても陛下…将来エル殿かランス殿のどちらかがティア殿下と一緒になるのでは?」
「なぁっ…にぃぃぃぃぃーーー!?」
「いや…元から分かっていた事ではありませんか?当時は男の子はいつ王都に来るのかと心待ちにしていたではありませんか…」
「…わしが若い頃使ってた槍を持ってこい…」
「槍なら股間に持っているでしょう?古びて、折れて、錆びてますがっ…」
「宰相よ…。わしに対して毒吐きすぎじゃねっ!?」
「気のせいです…」
「がっぺぇ~むかつく!」
「…そのポーズに何か意味が?」
「…忘れろ」
♢
ティアがエルの宿に着いた直後、王都を後にしようとメインストリートを走っていく1台の馬車の姿。
「…どうして…ティア殿下が? それに…あれって…エル?」
「どうかしたの、ランス?」
「えっ!? ううん、何でもないよ」
「具合悪いなら止めましょうか?」
「ううん、本当に大丈夫だから…このまま走って?」
だからだとは思うのだけれど、その事を思い出しただけで何故か頬が熱くなり、心臓の鼓動が早くなる。なんなのかな、これ?病気じゃないよね? お父さんが私を褒めてくれる時とは違うこの感じ。本当になんなんだろう?
♢
生誕祭の翌日にエル君が領地に帰ると聞いた私は宰相のクララさんにエル君に会いに行く事が出来るか相談したの。エル君に会えばこのずっとモヤモヤした気持ちの正体が分かると思ったしね。
「クララさん!あ、あのね…その、エル君が今日帰ると聞いたんだけど…」
「そうみたいですね。もう少しゆっくりして頂きたかったのですが…。それでティア殿下はどうかされたのですか?」
「そのね、もう一度エル君に会っても…会いに行ってもいい?」
なんでクララさんに相談したかと言うとクララさんなら何とかしてくれると思ったから。いつも私を気がけてくれてるしね。お父さんには言ってない。言ったら絶対にお父さんは駄目って言いそうな気がしたから。
「クスッ…ええ、勿論です、ティア殿下」
クララさんは笑いながらそう言ってくれて、護衛をすぐに用意してくれたうえに、クララさんも私に付いてきてくれたの。
やっぱりクララさんは優しいし、頼りになるよね。
エル君が泊まってる宿に着いたら丁度エル君達は宿を出る所だったの。間に合って良かった。
「エル君!」
「ティア殿下どうしてここに!?」
私が来るとは思っていなかったエル君は本当にビックリしていた。そんなエル君を可愛いと思った。ただ、会話をしている間、ずっと私の事を殿下と呼んでくる。それが普通の事なんだけどその事に対しても何やらモヤモヤしてくる。他人っていうのか友達でもないみたいでとにかく嫌だった。
エル君には私を名前で呼んで欲しい。そう思った私はエル君との距離を詰め、ありのまま思った事を伝える事にした。
「ティア」
「んっ?」
「殿下はいらない。ティアって呼んでほしい…」
「それは…無理なんじゃ…」
「構いませんよエル殿?あなたにはティア殿下が名前で呼ばれたいとそう望まれていますし」
ナイスアシスト!グッジョブ、クララさん!やっぱりクララさんは頼りになるなぁ~。
「だからお願いエル君…ねっ?」
「分かったよ…ティア。コレでいい、ティア」
“トクン……トクントクン…”
まただ…また私の心臓?心?とにかく私の中の何かが心地よいリズムで早鐘を奏でる…。ただ名前を呼ばれただけなのに…。それを非常に嬉しいと感じる自分がいる。
「こ、今度はいつ王都に来る?」
「う~ん…遠いし…まだ分からない…かな」
しばらく会えない…。そう思うと自然に涙が出てきた。 エル君は右手の人差し指で私の涙をスッ―っと、すくい取り、私の頭をポンポンとした。触れられた箇所が異様に熱く感じる…。
「…出来るだけ早く王都に来る様にするから、泣かないでティア?」
「ほ、ホント?」
「約束するよ!」
「…うん、じゃあ…約束」
♢
そしてエル君は領地へと帰って行った…。エル君が帰った後も考える事はエル君の事ばかり…本当に私…どうしちゃったのかな?
クララさんに聞いたら「それはそのうちご自身で分かられる事ですので…。嗚呼…それとそのことは絶対に陛下には言わない方が宜しいですよ?」と、言われてこの気持ちがなんなのかは結局教えてもらえなかった。残念…。
あ~あ。エル君の事を考えていたらエル君に会いたくなってきちゃたな。今頃何してるかな? エル君…。
♢
~王の間~
「宰相よ…」
「…どうされました?」
「あの小僧に口説かれてからわしのティアの様子がおかしくないか?」
「…口説いた訳ではないと思いますが?」
「あんなの飲み屋の姉ちゃんを口説く時の言い方じゃねぇーかっ!?」
「そうは言っても陛下…将来エル殿かランス殿のどちらかがティア殿下と一緒になるのでは?」
「なぁっ…にぃぃぃぃぃーーー!?」
「いや…元から分かっていた事ではありませんか?当時は男の子はいつ王都に来るのかと心待ちにしていたではありませんか…」
「…わしが若い頃使ってた槍を持ってこい…」
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「気のせいです…」
「がっぺぇ~むかつく!」
「…そのポーズに何か意味が?」
「…忘れろ」
♢
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「えっ!? ううん、何でもないよ」
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