男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴

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第一章

初めての外出

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「エル!今日は村に行くわよ。領民への顔見せってやつね!」 

「奥様…顔見せとエル様に言われても分からないのでは?」 

「ううん、そんな事ないわ。エルは賢いから理解してると思うわよ、ミーニャ」 

「…そう言われてみると…言葉の理解も確かに他の子と比べても早かったですね…まさか、天才…?」 

 ミーニャ、僕は天才ではないからね?まあ、何故か分かるだけだから… いわゆる転生チートってやつかも知れない。まあ、勝手にそう思うとしよう。

「とにかく行くわよ!」

「は~い」


 ♢


 屋敷から村へはどうやら一本道で繋がっているみたいだった。その一本道は車が大体一台余裕で通れる位の広さだ。道の両脇は畑や田に囲まれている。ある程度近くには山々も見え、自然に囲まれている。まさにのどかな田舎という感じだね。 

 一本道を俺、母さん、レーティーの3人で手を繋ぎながら歩いていく。俺は当然2人の真ん中に挟まれている。

「ほらほらっ、エル! あそこにトンボが飛んでるわよ?」 

「おおーっ!」 

「ん、トンボがいっぱい」   

 そういえば、久しぶりにトンボなんて見たな。俺が小さい頃はよく見かけていた気がする。そう懐かしいと感じる気持ちについつい素ではしゃいでしまう。 

「ふふっ…本当にエルは可愛いわね」 

「ん、奥様の言う通り控え目に言ってもエル様最高!」 

 そんな事を言われると恥ずかしくなるんだが…。俺は恥ずかしさを誤魔化す様にタイミングよくレンガ造りの家がちらほらと視界に入ってきたので話を変える事にした。 

「あっ、お母様、家が見えてきました」 

「この辺の家に住んでる人は畑や田で米や野菜等を色々育てているのよ?」 

「そうなんですね」 
 
「もう、エルったら…」 

「どうかしましたか?」 

「いつも言ってるんだけど、私達しか居ない時はママに対してもう少し砕けて話して欲しいな?」 

 そういえば聞いた話では貴族みたいだから礼儀正しくとしないといけないと思って、ついこんな喋り方にしたんだっけ…。流石に3歳児が喋る話し方ではなかったか? 

「は~い、お母さん」

 こんな感じだろうか?何気に難しいな。



 ♢

 
 母さん達と話をしながら歩き続けていると、住宅が密集した場所へ。やがて村の中心部へと辿り着く。中心部は広場になっており既に村の人達も集まっていた。

「領主様だっ」 
「領主様よ」
「領主様が来られたぞぉー!」 
「もしかして…領主様の後ろを歩いているあの御子が…」 
「マリア様の…」 
「だな…間違いねぇーよ!」 
「ホントに男の子なのね…」
「アレが男の子…」 
「まだ3歳とお聞きしているのにうちの娘と違って落ち着いて堂々としてるわ…」 
「ほんに賢そうだべ…」

 んっ? 何だろう?

 村の人達を見ていると何だか違和感を感じるんだが…。何だろうか、このモヤモヤは…。そう思っているとこの村の村長さんが一度俺達に挨拶を交わした後、村の人達へと向け喋り始めた…。 

「みんな…よく聞きなさい!本日は領主のマリア様が息子のエル様を我々の為に顔見せに来て下さった!そのお顔をっ!そのお声をっ!心に刻み込む様に!!!」 

「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」

 村がよく纏まってるいるというか、村人の連帯感というか、とにかくそういうのが凄いと思った。これは母さんの人柄のお陰かもと思った。でも、何故かモヤモがとれない…。なんなんだろうな。もどかしいな。

「皆さん…今日は息子の為に集まってくれて本当にありがとう!嬉しいわ」 

「当然です!」
「槍が降っても来ますって!」 
「マリア様のお陰でこの村は安泰なのですから!」 
「頭をおあげ下さい、マリア様!」 
「領主様…勿体ないお言葉…」 
「こちらの方こそありがとうございます!」 

 すげぇな…。母さんの人気。しかも母さんのお陰で村が安泰って…。村の人達にとって母さんはよっぽどいい領主なんだろう。慕われているのが見て取れる。そんな母さんを息子としては誇らしく思う。 

「どうかこのでもある私の息子を温かく見守って頂きたい…そして守るという事にどうか皆さんの力を貸して欲しいと思います!」 

「任せて領主様!」 
「ですです!」 
「村一丸となって護りますともー!」 
「当然だぁぁぁー!!!」
「私の命に代えても!」

 そうかっ!!!違和感の正体がやっと解った。男性が一人も居ないからだ…。一体どういう事なんだ?何で男性が居ないんだ?後で母さんに詳しく聞かないと…。 

「では、私の息子のエルです!エル、こっちへ」 

「はい」 

「あれが…」 
「確か…3歳?」 
「しっかりしてるわね…」 
「この村も安泰じゃな…」 
「私の娘と同じ歳だわ…」 
「母から話があったエルです!どうか宜しくお願いします!」 

「「「「「エル様~!」」」」」 

 凄い歓声があがる。なんか芸能人になった様な気分だな。

「お~ありがたや~」 
「みんな…護ろうね?」 
「…ったりめぇ~よ!」 
「だな!」 

 村の人達には快く受け入れてもらえたようで良かったと安心した。母さんもとびっきりの笑顔だ…。 





  こうして村の人達への顔見せも終わったその帰り道の事。 

「…母さん」 

「どうかしたの、エル?」 

「ここら辺って男性って少ないの?」 

「少ない…というよりも…私が治めるこの地方には男性は居ないわね…」 

「…えっ?」 

「他の地方も…まばらね…」 

「ん、男性を見かけるのって稀」

 この地方に男性は居ないって…しかも他の地方でもまばらって…一体どういう事ぉ!?この世界どうなってるの!?
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