貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴

文字の大きさ
上 下
61 / 108

これは…

しおりを挟む
「買う…か…?いや…しかしなぁ…。あ、あたいがこんなの買っても…馬鹿にされるだけだよな?でも…可愛いしっ…一点物だしっ…くっ…しかし…万が一こんなところに入ってるところを知り合いに見られでもしたら…」 

 街にある一件のファンシーショップの店内。余談だが、ファンシーショップといえば主に十代~二十代をターゲットにした若者向けのグッズを扱う店舗のことを意味している。扱っているのは、キャラクター商品や比較的安価なファッション雑貨、化粧品、文房具など幅広い事で有名だろう…。(※ネット調べ) 

 そんな店内で見知った顔がこの世界で大人気のキャラクター、ゲロゲロゲロッピーのキャラクターのイラストが描かれたシャーペンを手に取り、ブツブツと一人事を言っているではないか…。 

「それ、可愛いですよねっ♪」 

「そうなんだよなぁ~♪めちゃくちゃ可愛くてよぅ。これを買おうかどうしようか迷ってるんだよ。残り一点しかないしな。どうすっかなぁ~」 

「残り一点なら買いでしょっ?」 

「やっぱりそうだよなぁ……………って、お前はっ!?隼っ!?」 

「お久しぶりです、姉御っ!」 

「姉御って呼ぶんじゃねぇーよっ!おめぇは何回言えば分かるんだっ!?ああん?」 

「まあ、そんなことより…」 

「そんなことよりじゃねぇーよっ!?勝手にあたいの話を変えようとしてんじゃねぇーよっ!?」 

「そのシャーペンを買うつもりなら、こっちの消しゴムと筆箱とそのシャーペンもついてるセットの方がお得ですよ」 

「んなっ…!?そんなものまで出てたのかよっ!?なら…そっちを買っ……買わねぇーよっ!?何言ってんだ!!おめぇはっ!?」 

 そう言うと…慌てて手にしていたゲロッピーのシャーペンを棚に戻す鬼ケ原先輩。 

「…鬼ケ原先輩」

「ああん?」 

「好きなんでしょうっ?」 

「ばっ!?ちげぇからな!?か、勘違いしてんじゃねぇーよ!馬鹿っ!」

 「素直に可愛いものは可愛い!好きなものは好きと言った方がいいですよ?それが推し活ってヤツです!世の中には推しは推せる時に推せという神託があるんですよ?」 

「いや、ねぇーだろっ!?とにかくこれはちげぇからなっ!?た、たまたまっ、これは何だろうなぁ~と目についただけだから、勝手に思い込むなよなっ!?分かったかっ!?そ、それじゃあなっ!」 

「あっ!?姉御っ!?」 

「あっ、姉御って呼ぶんじゃねぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~っ──」 

 その場を駆け出した姉御は、あっという間にその姿が見えなくなる。 

「…あちゃあ~ ヤッちまったな…」 

 こういうところが俺の悪い癖なんだろうな。だから童貞だったんだろう。そっとしておいてあげるべきだったな。買いたそうにしてたからその背中を後押ししてあげようと思ったのが裏目に出ちまった…。 

 それにしても…ツッぱってる女性が可愛いものが好きというのはなんだか性癖というかモロに突き刺さるものがあるな…。この気持ちを分かってくれる同志はいるだろうか?いるよな? 
たぶん…いる筈…だ…。




♢ 


「嘘だよなっ…?う、売り切れていやがる…あの文具セットもねぇー…」 

 終わった…。クソッたれがっ…。あの時…変に意地を張らずに素直に買ってさえいれば…ゲロッピーはあたいのモノだったのに…。仕方ないので店を後にしたんだが…異様にムシャクシャするな…。誰彼構わず喧嘩を吹っ掛けてしまいそうだ…。今のあたいは誰だろうと容赦しねぇぞ?止まらねぇーぞ?ああんっ? 

「くそったれがよぅ…」 

 あたいの不機嫌さが分かるのか、道行く女達があたいを大幅に避けてすれ違っていく。なのに…そんなあたいに向かって声を掛ける馬鹿がいやがった。 

「鬼ケ原先輩っ!」 

「ああん? ──って、テメェは隼っ!?」 

 今はあんまり見たくなかった顔…。コイツのせいであたいのゲロッピーがぁ… 。

「先程振りです!」 

「先程振りです!じゃあないんだわっ!頭沸いてんのか、テメェ!」 

「そ、そんなに…怒らないで下さいよ…」 

「べ…別にっ…お、怒ってねぇーよ!」 

 やべっ…あたいも悪いのに…流石に言い過ぎちっまったか? 

「そうっすか。なら、よかったっす!」 

 いや、はぇーよっ!?そこはホントに怒ってません?とか返してくるところだろっ!? 

「…やっぱり一発殴っていいか?」 

「なんでですかっ!?」 

「おめぇのその態度がムカつくから…」 

「まあ、そんな事よりも…」 

「殴っていいよな?そんな事とか言ってんヤツは殴っていいよな?」 

“パチンっ…” 

「……へぁっ?」 

 あたいの拳が出る前に隼の手があたいの頭部へと伸びてそんな音がした。何をされたのか分からなかったあたいから呆けた声が洩れてしまう。 

「うん!思った通りだ。先輩の綺麗な髪には大きな赤いリボンがあしらわれたゲロッピのヘアアクセサリーがよく似合いますね」 

 そんな事をほざきながら笑う隼の笑顔にあたいは──


 “ドギューーーン♡トゥンク♡トゥンク♡ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン♡♡♡” 


 自分でどうにもならないほどに心臓の鼓動が高まる…な、なんだよ…これ…。 

 ま、まさか…動悸、息切れってヤツか? 

「後、これは2回も助けられたお礼です!それとさっきはすいませんでした!それではまた、学校でっ!」 

「っ!?まっ 待て──」 

 何やら訳が分からないまま紙袋を隼から強引に手渡されて…隼はそのままその場を後にする。後で、紙袋の中を確認すると、あたいが買おうとしていたゲロッピーのシャーペン。そして…ゲロッピーの文具セット…。 

「ばっ、馬鹿…やろうが…こんな…カッコつけることしやがって…しかも…あたいの頭にヘアアクセサリーまで…つけやがって…」 



 この時の胸の高鳴りが恋だとあたいが気がつくのは……まだまだ先の事になる…。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。

転生したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

やまいし
ファンタジー
気が付くと、男性の数が著しく少ない歪な世界へ転生してしまう。 彼は持ち前の容姿と才能を使って、やりたいことをやっていく。 彼は何を志し、どんなことを成していくのか。 これはそんな彼――鳴瀬隼人(なるせはやと)の青春サクセスストーリー……withハーレム。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

処理中です...