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一週間も経てば

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 高校生活も一週間も経てば自然と馴染んで慣れてくると思う。少なくとも俺はそうだ。まあ、相変わらず朝一番で男子生徒が連れ込み教室に連れて行かれる様子を羨ましく見るのもある意味日課になっているともいえるだろう…。なにしろ教室ではボッチだしな…。 


「お…おはよう…隼…君」 

「…んっ?」 


 そんなボッチの俺に珍しく声が掛かる…だとっ!?声の主は隣の席の女の子だ。名前は確か…小野寺幸子おのでらさちこさんだったと思う。薄っすらと茶色掛かった髪が特徴の可愛い女の子だ。 


 ──俺に挨拶をしてくれたで間違いないよな?周りを念の為にキョロキョロと見渡してみる。隼って苗字は他にいなかったよな?それらしい人も周りにいないみたいだし、やっぱり俺に挨拶してくれたで間違いないようだ…。 

「おはよう、小野寺さん…だよね?もしかしてなんだけど…俺に何か?」 

「あっ…その…うん…」 

「そっかぁ、何でも言っていいよ?」 

「この間ね…シャーペンを拾ってくれたから…あ、改めてお礼を言いたいなって…ずっと思ってたんだけど…なかなか話せる機会がなかったというか…話し掛ける勇気が出なくて遅くなっちゃったというか…とにかく…ありがとう…」 


 そういえばそんな事もあったなと思い出す。 

「そんな事は気にしなくても…それよりも超絶不細工の俺と喋ってるとおかしいと思われるかもよ?」 

 ちょっと自虐的過ぎたかな?しかし、本当の事だしな。

「えっ!?そんなことなんてなくて…隼君は…不細工なんかじゃなく…逆だと思うんだけどな…」 

 あれ…そういえばシャーペンを拾った時もこう思ったんだっけ…。もしかして小野寺さんって俺の事が? 

 ──って。 

「もしかしてなんだけど…小野寺さんって俺の事がちゃんと見えてる?」 

 気になった俺は単刀直入に聞いてみる事に。 

「えっ…と…そ、その…見えてるというのがどういう事なのか分からないけど…本人の前で言うの…物凄く恥ずかしいな…あっ…こう言えばいいかな?やっぱり待ってっ!?…あの…どう言っても…恥ずかしいよね…。よ、よしっ!わ、私はみんなの言う事が分からないんだよね…ずっと…」 


 マジか…。心が綺麗な子がこんなに身近にいるなんて…。 

「うん?ずっと…?」 

「ひゃっ!?そ、それは…その…と、とにかく…よ、良かったらなんだけど…放課後…私と遊びに「行く!」いき…えっ?」 

 いや、そんなの行くに決まってる!これってば人生で初のお誘いなんだぜっ☆日和ってる奴居る?居ねぇーよな? 

「あ、あの…私…まだ途中だったんだけど…」 

「ごめん。クラスの子から…しかも女子から誘われるなんて…なかったからさ…」 

「あっ…こっちこそ…なんかごめんね?」 

 いや…そこで謝られると何気に肯定されてるみたいで辛いんだが? 

「じゃあ…授業が終わったら…」 

「いや、校門でいいよ?なんなら駅前でも…。教室から一緒に行動したら変に思われるだろうしね」 
 
「私は…気にしないよ?」 


 居たわ…天使が居たわ。天使通り越してこんなの女神じゃん…ピュアじゃん…こんな世界にも綺麗に咲く花ってあったんだな…。 

「あっ…あのね…隼君の心の声が漏れていて…私凄く…恥ずかしいん…だけど…」 

「がふっ…」 

 そう言って俯く小野寺さんの顔は真っ赤に染まっていて…まるでラブコメのヒロインを彷彿させている。マジ可愛よ!まあ、可愛い過ぎて俺もそういうのに耐性がないからダメージを受けるんだけどな…。 

「ふぁっ!?ふぇっ!?うぇっ!?ちょっ、ちょっと隼君、だ、だからじぇんぶ洩れてるからねっ!?お、お願いだからそれくらいにしておいてよっ!?こ、これ以上は私の心臓がもたないよ…」 

「すまない。俺の悲しみは深淵の奥底深くに封印されていたんだけど、悲しみが嬉しさに変換されて奥底から這い上がって来て、その這い上がってきた嬉しさがどうやら天元突破し過ぎて天まで昇り突き破ってしまったみたいだ」 

「な、何言ってるのかあまり分からないけど…要はそれだけ喜んでくれた…ってことかな?あってるかな?も、もしそうなら良かったと思うよ?」 

「まあ、とにかく誘ってくれてありがとうな!じゃあ、とりあえず今日は学校が終わったら校門のところで待ってるよ!」 

「うん」 



♢ 


 学校が終わると同時に俺は校門前へ全力ダッシュっ!暫く待っていると小野寺さんがやって来た。 

「それでどこに行くの?」 

「カフェなんてどうかな?ゆっくりと話せると思うし…」 

「カフェっ!?」 

「ふぇっ!?もしかして嫌…だった?」 

「違う違う。逆逆。カフェなんてなんか青春している感じがして…」 

 前世でもカフェなんて女の子と行った事なんて…ましてや学校帰りに行くなんて漫画の中だけの話だと思っていたよ…。俺の中でそれは軽く都市伝説と化していたからな…。

「よ、良かったよ。カフェが嫌なら…本屋とか…ゲームセンターとか…一応色々考えて来てたんだ…」 

「誘ってくれるだけで嬉しかったよ。ホントに…じゃあ、行こうか」 

「うん」 




♢ 


 うほぉ~~~。コレがカフェ!?話には聞いた事があるが…なんて…お洒落な場所なんだ!?しかも女の子と二人っきり…。デートじゃん?コレってデートじゃねっ!?間違いなくデートだよ!?コレはアレか!?春かっ!?俺にも春が来たのか!?まさかのまさかがあったりするのかっ!?カフェからのラブホテルはこの世界の確か常識な筈…。 

「隼君は何にする?」 

「えっ…じゃあ、小野寺さん一択で」 

「ふ…ふぇっ…!?」 

 俺の言葉に顔を染めて狼狽える小野寺さん。いかんな…いつまでも見ていられる気がするわ…。反応が童貞男子のこの俺を殺しに来ているな…。だが…まだだ…まだ終わらんよっ!! 

「は、初めてなので優しくお願いします…」 

「ちょっ、ちょっと!?か、カフェのメニューを聞いたんだけど!?そ、そういうのは…仲良くなってからというか…あわわわっ…」 

 何だこの可愛い生き物は……。

 もしかして俺はまた別の世界に転生したのか?そう思える程、この世界では見掛けない類の女性の姿がここにある!あっ…妹も同じだな。シスコンの俺は妹を立てるのも忘れない。俺は出来る漢だからだ。 

「裏メニューも宜しくお願いします!」 

「そそそ、そんなメニューないからっ!?こ、コーヒーとケーキ…でいい?いいよね?注文しちゃうから」 

 照れた表情をオカズにしてご飯が三杯はいけそうだ。別の意味でもオカズをありがとうございますと頭を下げておく。 ホントに…今日はいいものが見れた… 

「我が人生に一片の悔いなし!」 

「は、隼君!?そんなところでラ◯ウのポーズとりながら叫ばないでっ!?ちゅ、注文したから…早く席に行くよ!」 

「あ、はい」 

 そんなわけで小野寺さんとカフェテラスへと向かった。
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