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第43話 100万ポイント

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「セシル……? クオラ……?」

俺は力尽きたように地面に降り立った。足元がふらつき、視界の端で晴れつつある爆煙の中、変わり果てた姿のセシルとクオラ、そしてラプラスが、無惨な形で横たわっていた。

「嘘、だろ……」

俺がやったのか? この手でコイツらを……? どうしてこんなことになってしまった? こいつらが、急に現れたから。いや、リヴァイアサンなんて存在がそもそも現れなければ……。つーか、ラプラスはなんでこんな危険な場所に来たんだよ。そこに俺たちが心配して来て……。こいつらまで巻き込まれて……。全員、馬鹿だろ。

いや……違う。おかしいのは俺だ。俺が力の使い方を誤ったんだ。興奮のままに目の前の刺激を追い求めて、他人のことなんて一切考えずに暴れまわった。完全にラリっていた。こいつらは、必死に俺に訴えかけてた。俺を正気に戻そうとしてくれたんだ。それなのに、俺は奴らを責めようとしていた。俺は、最低だ。終わってる。

【100000ポイント獲得】

目の前に浮かび上がったゲームのU画面I。ポイントを獲得したということは……リヴァイアサンは討伐されたのか。だが、達成感なんて微塵もない。虚無だけが心に渦巻いていた。

力なく足を引きずりながら、俺は3人に近寄った。腰を下ろすと、彼女らの様子を確認するまでもなかった。3人とも、息をしていない。死んでいる。俺が殺したんだ。

自然と涙が溢れ、頬を伝ってこぼれ落ちた。

「……気持ち悪ぃ……」

俺が何を泣いている? 人を殺しておいて、一丁前に涙を流す資格がどこにある? 自己嫌悪が心を支配し、押し寄せてくる。泣いたところで、何も許されるはずがない。怒りを覚えたところで、何も戻ることはない。すべては、もう手遅れだ。

「ど、どうすれば……………」

償い方なんて分からない。どうしたらいいのか、何をすればいいのか……頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。俺はパニックに陥り、ただ膝を抱えて震えていた。

そんな中で、未だに光を放つゲーム画面が視界の隅に映り込んだ。そのまばゆい光に、俺は思わず顔を上げる。

「なんだ……?」

ゲーム画面には、新たなメニューが表示されていた。

【100万ポイントメニューを選んでください】

「100万、ポイント……?」

恐る恐るメニューを開くと、そこには3つの選択肢が並んでいた。

『① 死んだ者を1人蘇らせる』
『② ステータスとレベルをアップする』
『③ ゲームをリセットする』

「あ……!」

俺は、しばらく呆然と画面を見つめた。死んだ人を……蘇らせることができる? そんなことが……。だが、選べるのは1人だけ。画面にははっきりと「1人」と書かれている。つまり、残りの2人を蘇らせるには、あと200万ポイントが必要になるのか……。

俺の手は、震えながらも①を選んだ。

【誰を蘇らせますか?顔を思い浮かべ、下記の欄に名前を記入してください】

突然、画面に五十音順のパネルが現れる。俺は、3人の顔を順に思い浮かべた。セシル、クオラ、ラプラス……誰を選ぶべきなんだ?
どうすればいい? 人の命に優先順位なんてあってはならない。けど、俺はどうしてもアイツに聞きたいことがある。まずは、あいつを蘇らせる。

震える指で、名前を打ち込む。200万ポイント、必ず貯める……。そして、残りの2人も蘇らせる。これは、俺の責任だ。

【それでは、ラプラス・レイザーを蘇らせます】

その瞬間、ラプラスの身体がまるで天空から降り注ぐ暖かな光に包まれた。柔らかく、しかし、確かな存在感を持つその光は、あたりを淡い黄金色に染め上げ、どこか神聖な雰囲気さえ漂わせていた。まるで、死という呪縛から解き放たれる瞬間を象徴しているかのように。

「うっ……!」

思わず、俺は目を閉じた。光の強さが、一瞬視界を奪い取ったからだ。まぶしさが肌にまで届くような感覚に、心がざわつく。今、何が起こっている? 本当にラプラスが蘇るのか? 胸の奥に湧き上がる不安と期待がないまぜになり、全身が震えた。

光が、ゆっくりと収まっていく。俺は恐る恐る目を開けた。

そこにいたのは───。

「……ラプ…ラス……?」

彼女は、キョトンとした表情を浮かべていた。どこか呆けたように、まるで今この場所がどこで、何が起こっているのか理解できていないかのようだった。膝を抱え、地に座り込むその姿は、なんとも言えない可愛らしさと儚さが混在していて、俺の胸に鋭く突き刺さる。

本当に、蘇ったんだ。

「あ…………」

声をかけようとして、言葉が喉に詰まった。何を言えばいい? 蘇らせたことをどう伝えればいい? 俺は何も考えられなかった。言葉が、出てこない。まるで心が空白になったかのようだった。

ラプラスは、ぼんやりとしたまま俺の方を見上げ、ゆっくりと口を開いた。

「……ここは……どこだ……。ボクは………」

その声は弱々しく、どこか遠くを見ているようだった。目の前にいるのに、まるで触れられない存在のような感覚が俺を襲う。

確かに、ラプラスは一度死んだ。

その事実が重く、俺の心にのしかかった。だが、今、彼女はこうして目の前にいる。蘇らせた俺の手によって。だがそれは、まだ2人を残したままで───。







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