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第一章 亡霊、大地に立つ
第九話 大切断 #2
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巻き上がった土煙が、降り注ぐ雨に叩き落とされて消えていく。
ミーシャは泥混じりの水を、全身からダバダバと滴らせながら、呆然と座り込んでいた。
彼女は目の前に落ちてきた巨大な十メートルの切れ端を、左から右へと虚ろな目で見回した後、すーっと息を吸い込んで、
「うそでしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
驚愕の叫びを上げた。
――騒がしい奴だな。
そんな呟きとともに、デスワームの身体の上で立ち上がる、一匹のゴブリン。
その姿を見つけたミーシャは、指を差しながら声を震わせた。
「で、でた……」
――出たって……幽霊でも見たような物言いだな。
「いや、アンタ、生霊でしょうが……じゃなくて!」
――ん?
「デタラメすぎんのよぉぉ! あんた! なんでそんなに平然としちゃってんの!? 自分が何を倒したか分かってんでしょ!」
――でっかいミミズ。
「うわあぉ! ミwwwミwwwズwwwって、バカッ!」
――なんだ? 違うのか?
「違わないけど! そうだけど! 普通あんなの倒せないし、倒そうなんて思わないわよ。あれは怪物なんてレベルじゃないのよ、竜巻とか! 台風とか! 地震とか! そういうのと同じ、災害みたいなものなのっ!」
――倒せたぞ。
その一言に、ミーシャは一瞬、ひくひくっと頬を引き攣らせた後、ガクリと肩を落とす。
「そうなのよねぇ……倒せちゃったのよねぇ……」
背負ったままの背嚢がなんだか更に重みを増したような気がした。
デスワームをあっさりと真っ二つにするゴブリンって……。
もはや存在そのものが、悪い冗談としか思えない。
ましてや、それが自分の旅の相棒だというのだから、心強いとか何とかいう以前に、ドン引きである。
「でも……」
レイの正体が私の推測通りの人物なら、そういう事も有り得るのか。
と、胸の内で独り呟いた。
「なんかもう、私だけ騒いでたら、バカみたいじゃない」
――そうだな。
「なっ!? あんたねぇ! そこは否定しなさいよ! フォローの出来ない男はモテないわよ」
――ゴブリンの時点で、モテないと思うぞ。
ごもっともである。
ミーシャは、気まずそうに眼を泳がせると、取り繕う様に口を開いた。
「ま……まあ、アンタ、魂はそこそこ綺麗だし、そうね。元の身体を取り戻したら、このミーシャちゃんが一回ぐらいデートしてあげてもいいわよ」
――お断りします。
「なんでよッ!?」
ミーシャは泥混じりの水を、全身からダバダバと滴らせながら、呆然と座り込んでいた。
彼女は目の前に落ちてきた巨大な十メートルの切れ端を、左から右へと虚ろな目で見回した後、すーっと息を吸い込んで、
「うそでしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
驚愕の叫びを上げた。
――騒がしい奴だな。
そんな呟きとともに、デスワームの身体の上で立ち上がる、一匹のゴブリン。
その姿を見つけたミーシャは、指を差しながら声を震わせた。
「で、でた……」
――出たって……幽霊でも見たような物言いだな。
「いや、アンタ、生霊でしょうが……じゃなくて!」
――ん?
「デタラメすぎんのよぉぉ! あんた! なんでそんなに平然としちゃってんの!? 自分が何を倒したか分かってんでしょ!」
――でっかいミミズ。
「うわあぉ! ミwwwミwwwズwwwって、バカッ!」
――なんだ? 違うのか?
「違わないけど! そうだけど! 普通あんなの倒せないし、倒そうなんて思わないわよ。あれは怪物なんてレベルじゃないのよ、竜巻とか! 台風とか! 地震とか! そういうのと同じ、災害みたいなものなのっ!」
――倒せたぞ。
その一言に、ミーシャは一瞬、ひくひくっと頬を引き攣らせた後、ガクリと肩を落とす。
「そうなのよねぇ……倒せちゃったのよねぇ……」
背負ったままの背嚢がなんだか更に重みを増したような気がした。
デスワームをあっさりと真っ二つにするゴブリンって……。
もはや存在そのものが、悪い冗談としか思えない。
ましてや、それが自分の旅の相棒だというのだから、心強いとか何とかいう以前に、ドン引きである。
「でも……」
レイの正体が私の推測通りの人物なら、そういう事も有り得るのか。
と、胸の内で独り呟いた。
「なんかもう、私だけ騒いでたら、バカみたいじゃない」
――そうだな。
「なっ!? あんたねぇ! そこは否定しなさいよ! フォローの出来ない男はモテないわよ」
――ゴブリンの時点で、モテないと思うぞ。
ごもっともである。
ミーシャは、気まずそうに眼を泳がせると、取り繕う様に口を開いた。
「ま……まあ、アンタ、魂はそこそこ綺麗だし、そうね。元の身体を取り戻したら、このミーシャちゃんが一回ぐらいデートしてあげてもいいわよ」
――お断りします。
「なんでよッ!?」
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