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久し振りの触れ合い
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歩き始めてから間もなく、従兄さんに左手を握られた。手を繋いで歩くのは初めてのことじゃないのに、なぜだか妙にドキドキしてしまう。こうやって手を繋ぐのが久し振りだからかもしれない。顔が熱い。自然と歩き方が変になっちゃう。
ぎこちない私の動きに気付いた従兄さんが、「手、嫌か?」と訊いてきた。だから慌てて首を左右に振った。
そんな私を見た従兄さんが「そうか。よかった」と言って少しだけ笑う気配がした。その直後、余計に心臓がうるささを増した。
無意識に緊張しているのか、握られている左手が汗ばんでいくのがわかって私は焦った。だって汗まみれの手を触られているなんて、恥ずかしい。
「ごめんね。手に汗かいちゃってる」
私が謝ると、従兄さんに「緊張してるのか?」と不思議がられてしまった。
「うん、そうみたい。自分ではそんなつもりないんだけど……なんだかドキドキしてる」
正直にそう答えると、急に従兄さんの足が止まった。そうして、私をじっと見下ろしてくる。
従兄さんの行動を不思議に思って口を開こうとした次の瞬間、「キスしてもいいか?」と訊かれてしまった。どうしようと思って視線をさ迷わせているうちに、「嫌ならいいんだ」と従兄さんにしては珍しく遠慮がちな言葉を言ってきた。
……別に嫌なわけじゃない。だけど、従兄さんとキスをするのなんて久し振りだから、妙にどぎまぎしてしまう。
きょろきょろと辺りを見回して誰もいないことを確認した後、私は意を決して「してもいいよ」と言いながら従兄さんを見上げた。
そうしたら、左手が解放された代わりにすぐに肩を掴まれて、従兄さんの顔が迫ってきた。慌ててぎゅっと目を閉じた直後、唇に柔らかいものが触れた。
ひゃああ、キスされてる。久し振りなせいかすごくすごく恥ずかしい。身体の温度が一気に上がっていく。暑い。
数秒間触れ合った後、唇はそっと離れていった。その後、私は恥ずかしさのせいで、従兄さんの顔をまともに見られなくなってしまった。気分が落ち着かない。
結局、ろくな会話も出来ない状態で森林公園の小道をぐるりと一周して、そのまま家に帰ることになった。
車で家の前まで送ってもらって、従兄さんと別れた。別れ際もろくに目を合わせられなかった。……というかキスした後、私ずっとおかしかった。
ああもう! 男の人と付き合うのって大変。不安になったり、ドキドキしたりして、頭が変になっちゃいそう。
今日は手を繋いだり、キスを一回されたりしただけなのにこんな風になるなんて。……私、従兄さんとは既にエッチなことをしてあるのに。
そう考えた瞬間、あの日の記憶が蘇ってきて頬が燃えるように熱くなった。さらには、今日は触れ合うだけのキスを一度されただけだったなと思ってしまった。
これじゃ、エッチなことを期待していたみたいだ。あんなにも会うのを怖がっていたくせに。
セックスは嫌なのにセックスじゃないエッチなことはされたいだなんて、わがままだしいやらしい。そんな自分が嫌になった私は頭を激しく左右に振って、煩悩を振り払った。
従兄さんと次に会ったのは、お盆に本家へお邪魔した時だった。
六月に呼び出された時以来お会いしていなかったお祖父様たちは、従兄さんと私が付き合っていることを知っていた。従兄さんから聞いたのだという。なんだか恥ずかしい。
本家のみんなーー特にお祖父様ーーは私たちの交際を喜んでくれていた。伯母様からは、「将来、椿ちゃんがお嫁に来てくれるなら嬉しいわ」と言われてしまった。だいぶ気が早いと思うけど……。
私はお母さんに猛従兄さんとお付き合いしていることを話していなかったので、お母さん一人だけがびっくりしていた。
驚いたままのお母さんに、従兄さんが「今まで黙っていてすみません」と謝罪した。それにならって、私も「黙っていてごめんなさい」と謝った。
お母さんは全然怒らなかったけど、その代わりに「猛くん、椿が迷惑かけてない?」と失礼なことを言った。
「もう! 迷惑なんてかけて……」
ない。そう言おうとしたら、初めてのデートの時に従兄さんの前から逃げ出してしまった時のことを思い出して、私は言葉が続かなくなった。迷惑、かけてた。
黙ってしまった私の代わりに、従兄さんが「摩季叔母さん。椿はしっかりしていますから、迷惑をかけられるようなことはありません」と言った。
「猛従兄さん。そう思ってくれるのは嬉しいけど、私、迷惑かけちゃったことあるし……しっかりしてないよ」
私が訂正すると、隣に座っている従兄さんに優しく右手を握られた。
「俺はお前に迷惑なんかかけられていない。むしろ俺の方が、お前を困らせてばかりだ」
困らせたって……それってエッチなことについて? そう思ったけど、そんなことこの場では訊けるはずもなくて、私はつい黙ってしまった。
エッチなことに関しては、困ったというよりは戸惑ったり、不安になったりしたという方が正しかった。だって私、まだ中学生だもん。
ぎこちない私の動きに気付いた従兄さんが、「手、嫌か?」と訊いてきた。だから慌てて首を左右に振った。
そんな私を見た従兄さんが「そうか。よかった」と言って少しだけ笑う気配がした。その直後、余計に心臓がうるささを増した。
無意識に緊張しているのか、握られている左手が汗ばんでいくのがわかって私は焦った。だって汗まみれの手を触られているなんて、恥ずかしい。
「ごめんね。手に汗かいちゃってる」
私が謝ると、従兄さんに「緊張してるのか?」と不思議がられてしまった。
「うん、そうみたい。自分ではそんなつもりないんだけど……なんだかドキドキしてる」
正直にそう答えると、急に従兄さんの足が止まった。そうして、私をじっと見下ろしてくる。
従兄さんの行動を不思議に思って口を開こうとした次の瞬間、「キスしてもいいか?」と訊かれてしまった。どうしようと思って視線をさ迷わせているうちに、「嫌ならいいんだ」と従兄さんにしては珍しく遠慮がちな言葉を言ってきた。
……別に嫌なわけじゃない。だけど、従兄さんとキスをするのなんて久し振りだから、妙にどぎまぎしてしまう。
きょろきょろと辺りを見回して誰もいないことを確認した後、私は意を決して「してもいいよ」と言いながら従兄さんを見上げた。
そうしたら、左手が解放された代わりにすぐに肩を掴まれて、従兄さんの顔が迫ってきた。慌ててぎゅっと目を閉じた直後、唇に柔らかいものが触れた。
ひゃああ、キスされてる。久し振りなせいかすごくすごく恥ずかしい。身体の温度が一気に上がっていく。暑い。
数秒間触れ合った後、唇はそっと離れていった。その後、私は恥ずかしさのせいで、従兄さんの顔をまともに見られなくなってしまった。気分が落ち着かない。
結局、ろくな会話も出来ない状態で森林公園の小道をぐるりと一周して、そのまま家に帰ることになった。
車で家の前まで送ってもらって、従兄さんと別れた。別れ際もろくに目を合わせられなかった。……というかキスした後、私ずっとおかしかった。
ああもう! 男の人と付き合うのって大変。不安になったり、ドキドキしたりして、頭が変になっちゃいそう。
今日は手を繋いだり、キスを一回されたりしただけなのにこんな風になるなんて。……私、従兄さんとは既にエッチなことをしてあるのに。
そう考えた瞬間、あの日の記憶が蘇ってきて頬が燃えるように熱くなった。さらには、今日は触れ合うだけのキスを一度されただけだったなと思ってしまった。
これじゃ、エッチなことを期待していたみたいだ。あんなにも会うのを怖がっていたくせに。
セックスは嫌なのにセックスじゃないエッチなことはされたいだなんて、わがままだしいやらしい。そんな自分が嫌になった私は頭を激しく左右に振って、煩悩を振り払った。
従兄さんと次に会ったのは、お盆に本家へお邪魔した時だった。
六月に呼び出された時以来お会いしていなかったお祖父様たちは、従兄さんと私が付き合っていることを知っていた。従兄さんから聞いたのだという。なんだか恥ずかしい。
本家のみんなーー特にお祖父様ーーは私たちの交際を喜んでくれていた。伯母様からは、「将来、椿ちゃんがお嫁に来てくれるなら嬉しいわ」と言われてしまった。だいぶ気が早いと思うけど……。
私はお母さんに猛従兄さんとお付き合いしていることを話していなかったので、お母さん一人だけがびっくりしていた。
驚いたままのお母さんに、従兄さんが「今まで黙っていてすみません」と謝罪した。それにならって、私も「黙っていてごめんなさい」と謝った。
お母さんは全然怒らなかったけど、その代わりに「猛くん、椿が迷惑かけてない?」と失礼なことを言った。
「もう! 迷惑なんてかけて……」
ない。そう言おうとしたら、初めてのデートの時に従兄さんの前から逃げ出してしまった時のことを思い出して、私は言葉が続かなくなった。迷惑、かけてた。
黙ってしまった私の代わりに、従兄さんが「摩季叔母さん。椿はしっかりしていますから、迷惑をかけられるようなことはありません」と言った。
「猛従兄さん。そう思ってくれるのは嬉しいけど、私、迷惑かけちゃったことあるし……しっかりしてないよ」
私が訂正すると、隣に座っている従兄さんに優しく右手を握られた。
「俺はお前に迷惑なんかかけられていない。むしろ俺の方が、お前を困らせてばかりだ」
困らせたって……それってエッチなことについて? そう思ったけど、そんなことこの場では訊けるはずもなくて、私はつい黙ってしまった。
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