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いつもと違う食卓
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少しの間ぼんやりしていると、従兄さんが口を開いた。
「怒らないのか?」
「え?」
急な質問に驚く私に、従兄さんは「前は怒っていただろう? 強引にいやらしいことをするな、ひどいって」と言った。
「私、ちゃんと言ったじゃない……従兄さんのせいにしたりしないって。そ、それに……」
恥ずかしさのせいで言葉に詰まる。頬がかあっと熱くなった。
「それに?」
「き、気持ち良くしてほしいって、思っちゃったんだもん。だから触られるの、嫌じゃなかったの」
視線を下に向けながら言うと、従兄さんに頬を優しく撫でられた。
「そんなにクリトリスでイクのが気に入ってるなら、夫婦になったら毎晩、椿のクリトリスを触ってやる。お前が気持ち良いと思うことを好きなだけしてやる」
それって、従兄さんと結婚したら毎晩イカされちゃうってこと?
あんなに気持ち良いことを毎日されちゃうの?
そう考えたら、アソコがぬるぬるしてきてしまった。やだ、濡れちゃうっ。
「そんなのダメ……毎日触られたら、きっと身体が変になっちゃう」
「大丈夫だ、安心しろ。感じやすくはなるかもしれないが、変になったりはしない」
「感じやすくなるなんてヤダ。ただでさえ従兄さんにイカされると失神しちゃうのに」
「失神するのが嫌なのか?」
「ヤダ。だって意識が遠くなると、このまま死んじゃうんじゃないかって不安になるんだもん」
これは本当だ。イッてる状態だから気持ち良さの方がまさっているけど、意識が遠退いていく最中は不安になる。もうこのまま目が覚めないんじゃないかって。
「でも、今日は俺に気持ち良くしてほしいと思ったんだろう? 失神するかもしれないと分かっていたのに」
従兄さんがちょっとだけ目元を緩ませながら、嬉しそうに言ってきた。もう、意地悪!
「ふん、いいもん。そうやって意地悪なこと言うなら、もし従兄さんと結婚したって同じお部屋では寝ないから。毎日、そうするから」
私はぐるんと身体を反対側に向けて、布団を首まで被り直した。
拗ねた私に対して、従兄さんは無言で頭を撫でてくる。
「わかった。結婚したら毎日、別々の部屋で寝よう」
「……え?」
絶対「嫌だ」って言うと思ってたのに。驚いて振り返ったのもつかの間、従兄さんは「お前の寝ている部屋まで夜這いに行く」と言いだした。……はあ、いつもの従兄さんだ。
「それじゃあ、別の部屋で寝る意味ないじゃない」
「そうか? 一緒に寝るよりいいと思うぞ」
「どうして?」
不思議がる私に、従兄さんは真顔で「毎日一緒の部屋で寝ていたら、毎日お前に欲情しそうで危ないからだ」と答えた。
「……男の人って、毎日セ……セックスしたくなったりするの? そんなに性欲が盛んなの?」
びっくりしながら訊ねると、「人によると思うが、若いうちは盛んは盛んだろうな。男は種を残したくなるように出来ているから」なんて淡々と返してくる。
オープンスケベって怖い。
「そんなの、獣と変わらないじゃない」
「実際、男は獣だぞ」
そう言うと、従兄さんはもう一度私の頭を撫でた。触れている手はさっきよりも少し熱くて、従兄さんが抑えている欲望の表れなんじゃないかと勘ぐってしまった。
少し経ってから、お母さんが部屋のドアをノックして、お夕飯が出来たことを伝えてくれた。
……お母さんが来たのがヘンなことをしている時じゃなくて良かった。心底ほっとしながら、私は従兄さんと一緒に食事が用意してある居間へと向かった。
この家で、お母さん以外の人も交えてご飯を食べるのは久しぶりだ。お父さんが死んでからは二人だけの食事が普通だったから、なんだか不思議な感じがする。
「あ、お夕飯を食べてから帰るってこと、ちゃんとお家に連絡してあるの?」
私からの今更な質問に、従兄さんは頷きながらたくあんを噛んだ。ボリボリと小気味よい音が聞こえてくる。
いつの間に本家に連絡したんだろうと思ったけれど、すぐに察した。私が気絶した後――もとい寝ていた時だ。……抜け目がないなぁ。
私がぐったり――もしくはぐっすり――していた間に、従兄さんはお家に連絡しているくらい余裕だったんだ。
そう考えたら、なんだか少し面白くなくなってしまった。もっと焦ったり、どきどきしたり、そういう風になったっていいのに。
気付いたら、口がへの字に曲がっていた。声も言葉もそっけなくなる。
「ふーん」
急に機嫌が悪くなった私に従兄さんが言葉を掛けてくる前に、お母さんが厳しい声を出す。
「椿。そんな風に雑な返事をしたら、猛くんに嫌われちゃうわよ」
はーい。そう返そうとした矢先に、従兄さんが口を挟んできた。
「叔母さん。俺はそんなことで椿のことを嫌ったりしません。俺は椿のことが心から好きですから」
…………。どうしてお母さんの前でそういうこと言うんだろう。
恥ずかしすぎて席を立ちたくなったけれど、お行儀が悪いからぐっと我慢した。
代わりに顔が熱くて仕方がない。二人に顔を見られたくなくて、こらえきれずに俯いた。
「怒らないのか?」
「え?」
急な質問に驚く私に、従兄さんは「前は怒っていただろう? 強引にいやらしいことをするな、ひどいって」と言った。
「私、ちゃんと言ったじゃない……従兄さんのせいにしたりしないって。そ、それに……」
恥ずかしさのせいで言葉に詰まる。頬がかあっと熱くなった。
「それに?」
「き、気持ち良くしてほしいって、思っちゃったんだもん。だから触られるの、嫌じゃなかったの」
視線を下に向けながら言うと、従兄さんに頬を優しく撫でられた。
「そんなにクリトリスでイクのが気に入ってるなら、夫婦になったら毎晩、椿のクリトリスを触ってやる。お前が気持ち良いと思うことを好きなだけしてやる」
それって、従兄さんと結婚したら毎晩イカされちゃうってこと?
あんなに気持ち良いことを毎日されちゃうの?
そう考えたら、アソコがぬるぬるしてきてしまった。やだ、濡れちゃうっ。
「そんなのダメ……毎日触られたら、きっと身体が変になっちゃう」
「大丈夫だ、安心しろ。感じやすくはなるかもしれないが、変になったりはしない」
「感じやすくなるなんてヤダ。ただでさえ従兄さんにイカされると失神しちゃうのに」
「失神するのが嫌なのか?」
「ヤダ。だって意識が遠くなると、このまま死んじゃうんじゃないかって不安になるんだもん」
これは本当だ。イッてる状態だから気持ち良さの方がまさっているけど、意識が遠退いていく最中は不安になる。もうこのまま目が覚めないんじゃないかって。
「でも、今日は俺に気持ち良くしてほしいと思ったんだろう? 失神するかもしれないと分かっていたのに」
従兄さんがちょっとだけ目元を緩ませながら、嬉しそうに言ってきた。もう、意地悪!
「ふん、いいもん。そうやって意地悪なこと言うなら、もし従兄さんと結婚したって同じお部屋では寝ないから。毎日、そうするから」
私はぐるんと身体を反対側に向けて、布団を首まで被り直した。
拗ねた私に対して、従兄さんは無言で頭を撫でてくる。
「わかった。結婚したら毎日、別々の部屋で寝よう」
「……え?」
絶対「嫌だ」って言うと思ってたのに。驚いて振り返ったのもつかの間、従兄さんは「お前の寝ている部屋まで夜這いに行く」と言いだした。……はあ、いつもの従兄さんだ。
「それじゃあ、別の部屋で寝る意味ないじゃない」
「そうか? 一緒に寝るよりいいと思うぞ」
「どうして?」
不思議がる私に、従兄さんは真顔で「毎日一緒の部屋で寝ていたら、毎日お前に欲情しそうで危ないからだ」と答えた。
「……男の人って、毎日セ……セックスしたくなったりするの? そんなに性欲が盛んなの?」
びっくりしながら訊ねると、「人によると思うが、若いうちは盛んは盛んだろうな。男は種を残したくなるように出来ているから」なんて淡々と返してくる。
オープンスケベって怖い。
「そんなの、獣と変わらないじゃない」
「実際、男は獣だぞ」
そう言うと、従兄さんはもう一度私の頭を撫でた。触れている手はさっきよりも少し熱くて、従兄さんが抑えている欲望の表れなんじゃないかと勘ぐってしまった。
少し経ってから、お母さんが部屋のドアをノックして、お夕飯が出来たことを伝えてくれた。
……お母さんが来たのがヘンなことをしている時じゃなくて良かった。心底ほっとしながら、私は従兄さんと一緒に食事が用意してある居間へと向かった。
この家で、お母さん以外の人も交えてご飯を食べるのは久しぶりだ。お父さんが死んでからは二人だけの食事が普通だったから、なんだか不思議な感じがする。
「あ、お夕飯を食べてから帰るってこと、ちゃんとお家に連絡してあるの?」
私からの今更な質問に、従兄さんは頷きながらたくあんを噛んだ。ボリボリと小気味よい音が聞こえてくる。
いつの間に本家に連絡したんだろうと思ったけれど、すぐに察した。私が気絶した後――もとい寝ていた時だ。……抜け目がないなぁ。
私がぐったり――もしくはぐっすり――していた間に、従兄さんはお家に連絡しているくらい余裕だったんだ。
そう考えたら、なんだか少し面白くなくなってしまった。もっと焦ったり、どきどきしたり、そういう風になったっていいのに。
気付いたら、口がへの字に曲がっていた。声も言葉もそっけなくなる。
「ふーん」
急に機嫌が悪くなった私に従兄さんが言葉を掛けてくる前に、お母さんが厳しい声を出す。
「椿。そんな風に雑な返事をしたら、猛くんに嫌われちゃうわよ」
はーい。そう返そうとした矢先に、従兄さんが口を挟んできた。
「叔母さん。俺はそんなことで椿のことを嫌ったりしません。俺は椿のことが心から好きですから」
…………。どうしてお母さんの前でそういうこと言うんだろう。
恥ずかしすぎて席を立ちたくなったけれど、お行儀が悪いからぐっと我慢した。
代わりに顔が熱くて仕方がない。二人に顔を見られたくなくて、こらえきれずに俯いた。
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