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恥ずかしい
しおりを挟む 言いたいことを口に出す前に、急に玄関のドアがバタンと開いた。
「ひゃっ!」
びっくりして変な声が出てしまった。開いたドアの内側から現れたのは、当然ながらお母さんだった。
「話し声がするから気になって開けちゃったんだけど……お邪魔だったかしら?」
お母さんが気まずそうに笑う。
それを聞いた私は、反射的にぴょんと跳ぶようにして従兄さんから身体を離した。でも、その拍子に身体が傾いて――あっ、転ぶ!
そう思った瞬間、とっさに従兄さんが肩を抱いてくれた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
腕の力が強すぎて、私は従兄さんの胸に倒れ込んでいた。まるで、しなだれかかるような体勢だ。お母さんの前なのに、恥ずかしい。
「大丈夫、椿?」
「大丈夫……」
小さな声で答えながら、私は顔が熱くなった。
一人で勝手に転びそうになったことも恥ずかしいけど、この状態をお母さんに見られてしまったことが、泣きそうなくらい恥ずかしい。
「従兄さん、ごめんね。後で連絡するから」
私は早口でそう言うと、二人の顔を見ないようにして家の中に入った。まるで逃げ出したみたいに。
「あっ、ちょっと、椿!」
お母さんの声が後ろからしたけれど、振り返れないまま廊下を早足で進んでいった。
自分の部屋に慌てて入ってドアを閉めた途端、ほっとして溜め息が漏れた。
「従兄さん……」
従兄さんのぬくもりを思い出しながら、もう一度息を吐く。
従兄さんともっと話したかったな。というか、親に「お邪魔だった?」とか言われるのってものすごく恥ずかしい。もう、お母さんてば!
そう思ってちょっと怒っていると、突然ドアをノックする音が二回響いてきた。きっとお母さんだ。
ドアのすぐそばに立っていた私は、ほとんど反射的にドアノブを回していた。
「お母さん」
そう呼びながらドアをわずかに押した私は、廊下に立っていた人物を見て、一瞬で頭が真っ白になってしまった。
「俺だ、椿」
「えっ!?」
どうして従兄さんがいるの?
私の思考を読み取ったかのように、従兄さんは説明してくれた。
「叔母さんから、今日、椿が世話になったからお礼に夕飯を食べて行かないかって誘われた。椿は自室にいるだろうから、話しでもして待っててくれって言われたんだ」
な、なんでそんな余計なことするの!? もう、お母さん!!
私は慌ててドアを閉めようとしたけど、従兄さんが外側からドアノブを引っ張って邪魔をしてきた。
「おい、なんで閉めようとしてるんだ」
「だって、さっき従兄さんに抱きとめられたところをお母さんに見られたのが恥ずかしかったんだもん」
「俺はそのお母さんじゃないだろう。恥ずかしがる必要がどこにある」
「だって……従兄さんとは……もう今日は顔を合わせないと思ってたから」
俯きながら言った。
「今日はもう、俺に会いたくないということか?」
少し悲しそうな声に、慌てて首を左右に振る。
「違う、違うよ。……その、逆」
「逆?」
「まだ話したかったの。従兄さんと、もっと一緒に居たかったから――」
恥ずかしい気持ちを抑えながらボソボソと伝えている最中に、ドアが強引に開けられた。
「わっ!」
「俺もだ、椿」
そう言って、従兄さんが微笑んだ。伸びてきた両腕を拒絶しないで受け入れると、ゆっくりと腕の中に閉じ込められてしまう。
……どうしよう。家の中なのに、お母さんがあっちにいるのに。こうしていたいと思っているなんて。
「椿」
呼ばれて顔を上げると、あごに指をかけられてそのままキスをされた。唇の間から熱い舌が入ってきて身体が震える。
だめ! エッチなキスは……!
私は慌てて従兄さんの胸を押した。すると、従兄さんはちゃんと舌を抜いて顔を離してくれた。
顔が熱い。鼻の頭に汗をかいてる。身体も熱い。
「だめ……お母さん……あっちにいるのに……ドアも開いたままなのに……」
目を逸らしながら言うと、従兄さんは一度振り返ってから右手でドアを閉めた。鍵まで締めてしまう。
「これならいいか?」
「だめ……お母さんがいつ呼びに来るかわからないでしょ?」
答えながら、私は心臓をどきどきさせていた。本当は、キスしたい。抱き締められたい。……お母さんがいる時にこんないやらしいこと、思っちゃだめなのに。
私がもじもじしていると、従兄さんは「叔母さんだって、ノックくらいするだろう?」なんて言ってきた。私がキスを断る口実を無くそうとするように。
「そうだけど……でも」
「キスをされたくないならそう言ってくれ。我慢するから」
「そんなのまるで、利口な犬みたい」
「お前が望むなら、利口な犬のフリくらいする」
そう話す従兄さんの両眼には、私を欲しがる欲望のようなものがにじんでいた。恥ずかしくてとっさに目を逸らすと、急にぎゅっと抱き締められてしまった。温かい。従兄さんの匂いが鼻の奥まで入ってくる。
『されたくない』なんて言えない。本当は言わなきゃだめなのに。
「従兄さん……猛従兄さん」
私は従兄さんの広い背中に両腕を回して、一生懸命抱き締め返した。
ライバルが現れたら困るだとか、私が他の人を好きになっちゃうんじゃないかとか、そんな心配ばかりする。
「ひゃっ!」
びっくりして変な声が出てしまった。開いたドアの内側から現れたのは、当然ながらお母さんだった。
「話し声がするから気になって開けちゃったんだけど……お邪魔だったかしら?」
お母さんが気まずそうに笑う。
それを聞いた私は、反射的にぴょんと跳ぶようにして従兄さんから身体を離した。でも、その拍子に身体が傾いて――あっ、転ぶ!
そう思った瞬間、とっさに従兄さんが肩を抱いてくれた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
腕の力が強すぎて、私は従兄さんの胸に倒れ込んでいた。まるで、しなだれかかるような体勢だ。お母さんの前なのに、恥ずかしい。
「大丈夫、椿?」
「大丈夫……」
小さな声で答えながら、私は顔が熱くなった。
一人で勝手に転びそうになったことも恥ずかしいけど、この状態をお母さんに見られてしまったことが、泣きそうなくらい恥ずかしい。
「従兄さん、ごめんね。後で連絡するから」
私は早口でそう言うと、二人の顔を見ないようにして家の中に入った。まるで逃げ出したみたいに。
「あっ、ちょっと、椿!」
お母さんの声が後ろからしたけれど、振り返れないまま廊下を早足で進んでいった。
自分の部屋に慌てて入ってドアを閉めた途端、ほっとして溜め息が漏れた。
「従兄さん……」
従兄さんのぬくもりを思い出しながら、もう一度息を吐く。
従兄さんともっと話したかったな。というか、親に「お邪魔だった?」とか言われるのってものすごく恥ずかしい。もう、お母さんてば!
そう思ってちょっと怒っていると、突然ドアをノックする音が二回響いてきた。きっとお母さんだ。
ドアのすぐそばに立っていた私は、ほとんど反射的にドアノブを回していた。
「お母さん」
そう呼びながらドアをわずかに押した私は、廊下に立っていた人物を見て、一瞬で頭が真っ白になってしまった。
「俺だ、椿」
「えっ!?」
どうして従兄さんがいるの?
私の思考を読み取ったかのように、従兄さんは説明してくれた。
「叔母さんから、今日、椿が世話になったからお礼に夕飯を食べて行かないかって誘われた。椿は自室にいるだろうから、話しでもして待っててくれって言われたんだ」
な、なんでそんな余計なことするの!? もう、お母さん!!
私は慌ててドアを閉めようとしたけど、従兄さんが外側からドアノブを引っ張って邪魔をしてきた。
「おい、なんで閉めようとしてるんだ」
「だって、さっき従兄さんに抱きとめられたところをお母さんに見られたのが恥ずかしかったんだもん」
「俺はそのお母さんじゃないだろう。恥ずかしがる必要がどこにある」
「だって……従兄さんとは……もう今日は顔を合わせないと思ってたから」
俯きながら言った。
「今日はもう、俺に会いたくないということか?」
少し悲しそうな声に、慌てて首を左右に振る。
「違う、違うよ。……その、逆」
「逆?」
「まだ話したかったの。従兄さんと、もっと一緒に居たかったから――」
恥ずかしい気持ちを抑えながらボソボソと伝えている最中に、ドアが強引に開けられた。
「わっ!」
「俺もだ、椿」
そう言って、従兄さんが微笑んだ。伸びてきた両腕を拒絶しないで受け入れると、ゆっくりと腕の中に閉じ込められてしまう。
……どうしよう。家の中なのに、お母さんがあっちにいるのに。こうしていたいと思っているなんて。
「椿」
呼ばれて顔を上げると、あごに指をかけられてそのままキスをされた。唇の間から熱い舌が入ってきて身体が震える。
だめ! エッチなキスは……!
私は慌てて従兄さんの胸を押した。すると、従兄さんはちゃんと舌を抜いて顔を離してくれた。
顔が熱い。鼻の頭に汗をかいてる。身体も熱い。
「だめ……お母さん……あっちにいるのに……ドアも開いたままなのに……」
目を逸らしながら言うと、従兄さんは一度振り返ってから右手でドアを閉めた。鍵まで締めてしまう。
「これならいいか?」
「だめ……お母さんがいつ呼びに来るかわからないでしょ?」
答えながら、私は心臓をどきどきさせていた。本当は、キスしたい。抱き締められたい。……お母さんがいる時にこんないやらしいこと、思っちゃだめなのに。
私がもじもじしていると、従兄さんは「叔母さんだって、ノックくらいするだろう?」なんて言ってきた。私がキスを断る口実を無くそうとするように。
「そうだけど……でも」
「キスをされたくないならそう言ってくれ。我慢するから」
「そんなのまるで、利口な犬みたい」
「お前が望むなら、利口な犬のフリくらいする」
そう話す従兄さんの両眼には、私を欲しがる欲望のようなものがにじんでいた。恥ずかしくてとっさに目を逸らすと、急にぎゅっと抱き締められてしまった。温かい。従兄さんの匂いが鼻の奥まで入ってくる。
『されたくない』なんて言えない。本当は言わなきゃだめなのに。
「従兄さん……猛従兄さん」
私は従兄さんの広い背中に両腕を回して、一生懸命抱き締め返した。
ライバルが現れたら困るだとか、私が他の人を好きになっちゃうんじゃないかとか、そんな心配ばかりする。
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