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久し振りのデートは
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先生の話が終わってから教室を出て、すぐにスマホの電源を入れた。画面に表示された時間を見る。あと十分で三時だ。
「従兄さん、もう来てるかな」
独り言を呟きながら、私は建物の出入り口から外に出た。そのまま駐車場に向かうと、見覚えのあるシルバーの車が視界に入ってきた。
途端に心臓がどきどきと騒ぎ始めて、私から落ち着きを奪っていく。頬が自然とゆるんでしまうのを止められない。
私に気付いたらしい従兄さんが、車のエンジンをかけてから、運転席側の窓を少し下ろした。
「椿」
少し大きな声で名前を呼ばれた瞬間、頬が熱を帯びたのがわかった。従兄さんの声を直接聞いたのが久し振りで、そんなことだけで高揚してしまっている。
今、きっと顔が赤いだろうな。恥ずかしい。
「猛従兄さん」
呼び返しながら近寄ると、従兄さんは目を細めて優しい表情をした。ますますどきどきしてしまう。
「お待たせ。迎えに来てくれてありがとう」
「いや、それより疲れただろう。乗ってくれ」
促された私は乗車した。ドアを閉めてからシートベルトを締めていると、従兄さんが「模試はうまく出来たか?」と訊いてきた。
「たぶん。いつもより頑張れたと思う」
「そうか、良かったな。お疲れ」
優しい声と共に、大きな手が私の頭に置かれた。そのまま繰り返し撫でてくれる。頭も心もむずむずしてきて、私の頬はまた熱くなってしまった。
「うん。ありがとう……」
はにかみながらお礼を告げる。すると従兄さんの手が止まった。するりと下りてきた左手の指が私の頬に触れてくる。
「顔が赤い。熱か?」
もう。そんなこと訊かないでよ。
「違うよ。ちょっと恥ずかしいのと……嬉しいのが顔に出ちゃっただけ」
正直に答えながら顔を逸らすと、従兄さんの指は離れていった。
それから少しの間、従兄さんの視線を感じた。恥ずかしさで居心地が悪くなっていると、「お前は可愛いな。可愛すぎて、抱きたくなってくる」なんて、とんでもないことを言った。
「もう! それ以上セクハラするなら車から降りるから」
私は怒りながら従兄さんの顔を見た。
「セクハラってなんだ。恋人同士なんだから構わないだろう」
「構います。ここ、学習塾の駐車場だよ? 不健全な話をする場所じゃないと思うんだけど」
ホント、中高生の学びの場で従兄さんは何を言ってるんだろう。それに、どうしてそんなにスケベなんだろう。
そう思っていると、従兄さんは「じゃあ、塾の駐車場から出ればいいんだな」そう言って、きょろきょろと周りを確認した後に車を発進させた。
「これからどこに行くの?」
「どこがいい?」
視線は前を向いたまま、従兄さんが訊き返してくる。
「決めてないの?」
「あるにはあるが、どこか行きたいところがあるならそこに変更する」
行きたいところは特になかった。ただ会えることが嬉しくて、具体的なことは考えていなかったからだ。
「ううん、行きたい場所は特にないよ。どこでもいい」
「そうか」
「うん。だから、従兄さんが行こうと思ってる場所に連れて行って」
私が言うと、従兄さんは「わかった」と短く答えながらハンドルをきって交差点を左折した。私の知らない道に出る。
「どこに向かってるの?」
「ホテルだ」
え……ええっ? 私が沈黙していると、従兄さんは「ホテルはホテルでも、ラブホテルじゃなくてシティホテルだから安心しろ」と付け加えてきた。
そもそもラブホテルに行ったとしても、私が入れるわけがない。どう見ても十八歳じゃない外見をしているんだから。
なら、シティホテルだったら安心できるのかと言えばそれは違う。だって、“ホテル”だし。
「全然、安心できないってば……」
「別に、ホテルに行っておかしなことをしたりはしない。お前が嫌がることはしない。俺はお前と別れたくないからな」
「従兄さん、もう来てるかな」
独り言を呟きながら、私は建物の出入り口から外に出た。そのまま駐車場に向かうと、見覚えのあるシルバーの車が視界に入ってきた。
途端に心臓がどきどきと騒ぎ始めて、私から落ち着きを奪っていく。頬が自然とゆるんでしまうのを止められない。
私に気付いたらしい従兄さんが、車のエンジンをかけてから、運転席側の窓を少し下ろした。
「椿」
少し大きな声で名前を呼ばれた瞬間、頬が熱を帯びたのがわかった。従兄さんの声を直接聞いたのが久し振りで、そんなことだけで高揚してしまっている。
今、きっと顔が赤いだろうな。恥ずかしい。
「猛従兄さん」
呼び返しながら近寄ると、従兄さんは目を細めて優しい表情をした。ますますどきどきしてしまう。
「お待たせ。迎えに来てくれてありがとう」
「いや、それより疲れただろう。乗ってくれ」
促された私は乗車した。ドアを閉めてからシートベルトを締めていると、従兄さんが「模試はうまく出来たか?」と訊いてきた。
「たぶん。いつもより頑張れたと思う」
「そうか、良かったな。お疲れ」
優しい声と共に、大きな手が私の頭に置かれた。そのまま繰り返し撫でてくれる。頭も心もむずむずしてきて、私の頬はまた熱くなってしまった。
「うん。ありがとう……」
はにかみながらお礼を告げる。すると従兄さんの手が止まった。するりと下りてきた左手の指が私の頬に触れてくる。
「顔が赤い。熱か?」
もう。そんなこと訊かないでよ。
「違うよ。ちょっと恥ずかしいのと……嬉しいのが顔に出ちゃっただけ」
正直に答えながら顔を逸らすと、従兄さんの指は離れていった。
それから少しの間、従兄さんの視線を感じた。恥ずかしさで居心地が悪くなっていると、「お前は可愛いな。可愛すぎて、抱きたくなってくる」なんて、とんでもないことを言った。
「もう! それ以上セクハラするなら車から降りるから」
私は怒りながら従兄さんの顔を見た。
「セクハラってなんだ。恋人同士なんだから構わないだろう」
「構います。ここ、学習塾の駐車場だよ? 不健全な話をする場所じゃないと思うんだけど」
ホント、中高生の学びの場で従兄さんは何を言ってるんだろう。それに、どうしてそんなにスケベなんだろう。
そう思っていると、従兄さんは「じゃあ、塾の駐車場から出ればいいんだな」そう言って、きょろきょろと周りを確認した後に車を発進させた。
「これからどこに行くの?」
「どこがいい?」
視線は前を向いたまま、従兄さんが訊き返してくる。
「決めてないの?」
「あるにはあるが、どこか行きたいところがあるならそこに変更する」
行きたいところは特になかった。ただ会えることが嬉しくて、具体的なことは考えていなかったからだ。
「ううん、行きたい場所は特にないよ。どこでもいい」
「そうか」
「うん。だから、従兄さんが行こうと思ってる場所に連れて行って」
私が言うと、従兄さんは「わかった」と短く答えながらハンドルをきって交差点を左折した。私の知らない道に出る。
「どこに向かってるの?」
「ホテルだ」
え……ええっ? 私が沈黙していると、従兄さんは「ホテルはホテルでも、ラブホテルじゃなくてシティホテルだから安心しろ」と付け加えてきた。
そもそもラブホテルに行ったとしても、私が入れるわけがない。どう見ても十八歳じゃない外見をしているんだから。
なら、シティホテルだったら安心できるのかと言えばそれは違う。だって、“ホテル”だし。
「全然、安心できないってば……」
「別に、ホテルに行っておかしなことをしたりはしない。お前が嫌がることはしない。俺はお前と別れたくないからな」
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