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叔父は変わり者だった。偏屈で人嫌い。そのせいで他人とは距離を取り、他人からも距離を取られていた。生涯、独身だった。そして、収集家でもあった。
父からは「弟は昔から変なガラクタを集めている」としか聞いたことがなかったし、昔、叔父に何を集めているのかを訊ねたことがあったけれども教えてはもらえなかったので、何の収集家なのか知る由もなかったけれども。叔父が病気で亡くなり、彼の家の片付けを四万円の小遣いと引き換えに引き受けるまでは――
両手で足りるくらいしか訪問したことのない叔父の家に上がり、遺品整理をする。それを繰り返し始めて三日目。
書斎の最奥の壁に背を向ける形で設置された本棚の中身をダンボールに入れ終わった後、本棚と壁に不自然な隙間があることに気がついた。
気になる。僕は中身がなくなり軽くなった本棚をよいしょとずらした。すると――
「扉だ」
まるでミステリー小説みたいに、隠し扉が出てきた。試しにドアノブを回すと鍵はかかってはいなかったようで、あっさりと開いた。
耳障りな音とともに開いた扉の向こうには、結構な空間が広がっていた。書斎よりは狭いけれど、それなりに広さのある立派な部屋だ。
そこには所狭しと僕の背よりは低い木製の棚が置いてあった。不揃いな瓶が並べられている。
「一体、何の瓶なんだ? 何が入ってるんだ?」
独り言を呟きながら一番近くにあった瓶を手に取り、中身を見る。それには、丸められた紙が入っていた。
コルクを引き抜き、瓶の口から紙を抜き出して広げてみる。罫線に沿って文字が書かれていた。どうやら手紙のようだ。叔父は既に他界してしまっているし……と思うと、他人の書いた手紙を勝手に読むことに抵抗はなかった。
「あれ? これ、多分フランス語だ」
フランス語がからっきしな僕は、残念ながら読むことはできなかった。
読めなかったそれを元に戻して、他の瓶も次々と空けてみる。すると中身の手紙は筆跡も言語もバラバラだった。
「これ、多分ボトルメールってやつだ」
そう解釈すれば瓶が傷だらけなのにも、瓶の種類や手紙の筆跡や言語がバラバラなのにも納得がいく。
叔父が集めていたのはボトルメールだったんだ。僕は長年の謎がやっと解けてすっきりした。が、次の瞬間には、叔父はなぜこんな物を集めていたのか? という新たな疑問を抱えることになってしまった。
父からは「弟は昔から変なガラクタを集めている」としか聞いたことがなかったし、昔、叔父に何を集めているのかを訊ねたことがあったけれども教えてはもらえなかったので、何の収集家なのか知る由もなかったけれども。叔父が病気で亡くなり、彼の家の片付けを四万円の小遣いと引き換えに引き受けるまでは――
両手で足りるくらいしか訪問したことのない叔父の家に上がり、遺品整理をする。それを繰り返し始めて三日目。
書斎の最奥の壁に背を向ける形で設置された本棚の中身をダンボールに入れ終わった後、本棚と壁に不自然な隙間があることに気がついた。
気になる。僕は中身がなくなり軽くなった本棚をよいしょとずらした。すると――
「扉だ」
まるでミステリー小説みたいに、隠し扉が出てきた。試しにドアノブを回すと鍵はかかってはいなかったようで、あっさりと開いた。
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そこには所狭しと僕の背よりは低い木製の棚が置いてあった。不揃いな瓶が並べられている。
「一体、何の瓶なんだ? 何が入ってるんだ?」
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「あれ? これ、多分フランス語だ」
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「これ、多分ボトルメールってやつだ」
そう解釈すれば瓶が傷だらけなのにも、瓶の種類や手紙の筆跡や言語がバラバラなのにも納得がいく。
叔父が集めていたのはボトルメールだったんだ。僕は長年の謎がやっと解けてすっきりした。が、次の瞬間には、叔父はなぜこんな物を集めていたのか? という新たな疑問を抱えることになってしまった。
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