上 下
4 / 7

しおりを挟む
 しかし待って。
 キャロルの中身は犬要素が濃すぎるのよ!

「ぜったいぜったい、後で問題が起きるわ!」

 王子はキャロルが好むお菓子をくれるけど、他の人にもお菓子さえくれれば懐いてしまう。今はちょっと嫉妬するだけで済んでいるみたいだけど、そのうち大問題になりかねない。

「目に見えるようだわ……。他の男がキャロルの行動を勘違いして熱を上げ、王子と決闘をしてみたり。王子がキャロルの行動を浮気だと勘違いして、好きの反動で嫌うようになったあげくに、周囲の王子に取り入りたい人間がたきつけて、キャロルを魔女みたいに扱うようになる日が来る……!」

 なついてくれる可愛い妹が嬉しくて、二度の人生で続けて両親が素っ気なかったりと寂しい思いをしていたせいか、キャロルからの愛情が心地よくて、それを修正しなかった私のせい……。

 だからこの事態を回避するため、私は沢山シロップを作った。
 キャロルの心を引けるシロップを開発するために、沢山作りすぎて……。

「ごめんなさい。ちょっと町で売ってくれるかしら……?」

 部屋付召使いのマナや、執事のキアランに、そう頼むことも多くなっていた。
 しかし私のシロップに対抗するように、王子は私からキャロルを引き離そうと異国の珍しい菓子を作らせて貢いだ。

 この頃は、水面下で王子と私でキャロルへの貢ぎ物合戦をしていたようなものだった。
 キャロルは心揺れた末に、親代わりの私がちょっと強く「王子だけはやめておきなさい」と言ったせいで「お姉様は命令ばっかり!」と反発して、王子に軍配が上がってしまった。

 このままでは、王子に睨まれた家となり、そのうち没落の憂き目に……。

「ん? ……貴族と結婚できなくなればいいのよね?」

 没落しても、平民になるだけだ。
 平民生活なら、すでに一度経験しているので、それほど難しくはない。まぁ、前世と違ってかなり不自由な生活なんだけど。一日中仕事もしなくてはならないし、治安だって完璧ではないし。

「ん? 仕事?」

 昔みたいにあちこちで頼み込んで働かせてもらう必要はないのでは。なにせまだ私は貴族令嬢。資金はあの時よりもかなりある。
 シロップも思いのほかよく売れて、お砂糖を買って戻しても、まだおつりが出たのでそれは貯めていた。前世のくせで。

 だから今のうちに、お店を持てばいいのだとひらめいた。

 この状況になっても、姉か妹が王子と結婚したら家は問題ないと放置している両親は、頼れるわけがない。
 しかも私が婚約解消されても、「キャロルの邪魔になるだろうから、分家のあの人と結婚させたらいいんじゃないの?」と、二回りも年上の男に嫁がせて片付けようと考えているのだ。

 しかもこの両親、キャロルにかこつけて、王子にあれこれ要求していると執事のキアランから報告をもらい、ぐったりした気分になった。
 キャロルが王子の怒りを買ったら、即没落するような材料を増やしていたなんて!

 だから私がなんとかしなければ。
 元飼い主として、姉として、没落後にキャロルを養える状態にならなければ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

占い好きの悪役令嬢って、私の事ですか!?

希結
恋愛
前世でスピリチュアルグッズの販売をしていた私は、25歳の時に交通事故に巻き込まれてこの世を去った。それから転生し、ロラン子爵家の長女サシャとして生きてきたのだけど、ある日王家の秘宝【黒猫の涙】を期間限定の婚約内定者になって一緒に探してほしいと第2王子から依頼される。その探し物、何だかちょっと訳ありみたいだけど……提示された条件や、報酬はすっごく魅力的。お金至上主義の私は、報酬に心惹かれて王宮に足を踏み入れるのだった。 とある情景から【王宮迷宮(ラビリンス) 〜黒猫の涙を探して〜】という乙女ゲームの世界に転生していた事に気がついたけど、自分のポジションはまさかの悪役令嬢だった……!? 占いが得意な悪役令嬢(?)が、いつの間にやら王家の闇や秘密に首を突っ込んで巻き込まれていく事になる、ドタバタ王宮ラブストーリー。あ、恋愛要素もあるみたいですけど……お金って大事ですよね? ※R15指定は保険です。ノベルアップ+様でも投稿中。3/1より不定期更新になります。

その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。

ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい! …確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!? *小説家になろう様でも投稿しています

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】なぜか悪役令嬢に転生していたので、推しの攻略対象を溺愛します

楠結衣
恋愛
魔獣に襲われたアリアは、前世の記憶を思い出す。 この世界は、前世でプレイした乙女ゲーム。しかも、私は攻略対象者にトラウマを与える悪役令嬢だと気づいてしまう。 攻略対象者で幼馴染のロベルトは、私の推し。 愛しい推しにひどいことをするなんて無理なので、シナリオを無視してロベルトを愛でまくることに。 その結果、ヒロインの好感度が上がると発生するイベントや、台詞が私に向けられていき── ルートを無視した二人の恋は大暴走! 天才魔術師でチートしまくりの幼馴染ロベルトと、推しに愛情を爆発させるアリアの、一途な恋のハッピーエンドストーリー。

処理中です...