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公爵閣下が18回も結婚に失敗した理由
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「おおきな、アライグマ?」
しかもマントを羽織っている。首には金色の首飾りをしていて、まるで王様のようだけど。
「え……かわいい」
でもこんなに巨大なアライグマ、見たことない。
大きさはちょっと怖いけど、遠目で見る分にはそれほど問題はなさそう。まるで絵本の中に入り込んでしまったような感覚だ。
「でも怖くはないわ。むしろ、かわいすぎて思わずほかの人に話したくなってしまいそうな……」
「それだ」
隣にいたシルヴェストが指摘した
「あの姿かたちを見ると、他人にしゃべりたくなり、そして記憶をゆがめてなかったことにした後も、無意識に似た獣を飼いたがる。仕方なく、この試験に失敗した場合は、離婚後に実家の領地の端でしばらく静養してもらい、その状態が落ち着くのを待ってもらうしかないのだ」
時間が経てば、いくらかアライグマを飼いたい欲求は晴れるらしい。
「まさか死んだというのは……外へ出られないほど、執着してしまった? とか」
「結婚相手のほとんどが、私との結婚に踏み切るしかなかった相手だ。適齢期から外れたり、外れかかっている年齢の者が、さらに秘密を守るために精神が落ち着くのを待てば……完全な行き遅れだ。それを恥じた相手方が、病死したことにしてくれと言い、領地でひっそりと暮らさせたり、臣下に嫁がせたりしていると聞いている」
死んではいなかったようだ。
「それにしても、なんという罠……」
いっそ恐ろしければ、『彼』に殺されるかもしれないと口を閉ざす人も多いはずだ。でも、このマントを羽織った童話的なアライグマでは、ふとしたときに口走ってしまいそうで恐ろしい。
たとえばぬいぐるみを見た時に、マントを身につけさせてみたいとか。
それを人に「可愛いですね」とほめられたり、「どうしてマントを?」と聞かれた時に、うっかり「マントを着たアライグマ」のことを口を滑らせてしまうかもしれないのだ。
(これは徹底的に、アライグマについて話を避けなければ!)
なぜシルヴェストが今まで十八回も結婚に失敗したのかはわかった。だが、どうしてこのアライグマをかくまっているのか?
疑問が心に浮かんだ時、アライグマのほうがこちらに近づきつつ問いかけてきた。
「シルヴェスト、新しい花嫁候補かな?」
「そうです。ブロン殿」
「え、アライグマがしゃべった……って、え?」
動物はしゃべったりしない。
混乱する私に、そのアライグマがのっそりとさらに接近し、十数歩ほどの場所へやってきた。
「まぁ、見たことはないだろうな。自己紹介しよう。私はブロン。もう800年ほどは存在しているだろう、人間のいう魔物だ」
「ま、魔物!?」
しかもマントを羽織っている。首には金色の首飾りをしていて、まるで王様のようだけど。
「え……かわいい」
でもこんなに巨大なアライグマ、見たことない。
大きさはちょっと怖いけど、遠目で見る分にはそれほど問題はなさそう。まるで絵本の中に入り込んでしまったような感覚だ。
「でも怖くはないわ。むしろ、かわいすぎて思わずほかの人に話したくなってしまいそうな……」
「それだ」
隣にいたシルヴェストが指摘した
「あの姿かたちを見ると、他人にしゃべりたくなり、そして記憶をゆがめてなかったことにした後も、無意識に似た獣を飼いたがる。仕方なく、この試験に失敗した場合は、離婚後に実家の領地の端でしばらく静養してもらい、その状態が落ち着くのを待ってもらうしかないのだ」
時間が経てば、いくらかアライグマを飼いたい欲求は晴れるらしい。
「まさか死んだというのは……外へ出られないほど、執着してしまった? とか」
「結婚相手のほとんどが、私との結婚に踏み切るしかなかった相手だ。適齢期から外れたり、外れかかっている年齢の者が、さらに秘密を守るために精神が落ち着くのを待てば……完全な行き遅れだ。それを恥じた相手方が、病死したことにしてくれと言い、領地でひっそりと暮らさせたり、臣下に嫁がせたりしていると聞いている」
死んではいなかったようだ。
「それにしても、なんという罠……」
いっそ恐ろしければ、『彼』に殺されるかもしれないと口を閉ざす人も多いはずだ。でも、このマントを羽織った童話的なアライグマでは、ふとしたときに口走ってしまいそうで恐ろしい。
たとえばぬいぐるみを見た時に、マントを身につけさせてみたいとか。
それを人に「可愛いですね」とほめられたり、「どうしてマントを?」と聞かれた時に、うっかり「マントを着たアライグマ」のことを口を滑らせてしまうかもしれないのだ。
(これは徹底的に、アライグマについて話を避けなければ!)
なぜシルヴェストが今まで十八回も結婚に失敗したのかはわかった。だが、どうしてこのアライグマをかくまっているのか?
疑問が心に浮かんだ時、アライグマのほうがこちらに近づきつつ問いかけてきた。
「シルヴェスト、新しい花嫁候補かな?」
「そうです。ブロン殿」
「え、アライグマがしゃべった……って、え?」
動物はしゃべったりしない。
混乱する私に、そのアライグマがのっそりとさらに接近し、十数歩ほどの場所へやってきた。
「まぁ、見たことはないだろうな。自己紹介しよう。私はブロン。もう800年ほどは存在しているだろう、人間のいう魔物だ」
「ま、魔物!?」
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