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〘160〙白昼堂々
しおりを挟むアカラギの帰りが予定より遅い。うたた寝をしてしまったハルチカは、目が覚めたとき、帳場の長椅子に横たわり、掛け布団があてがわれていた。
「……ヒシクラさん? ん、んんッ!?」
掛け布団が不自然にもりあがっている。股のあいだに、ぬとっとした熱い感触がして、誰かがハルチカの陰茎を咥えていた。
「や、やァッ! うそ、誰……!?」
ジョリッとした顎髭の肌ざわりを感じたハルチカは、掛け布団に隠れている人物を、ヒシクラだと察した。陰部の尖端を舌で執拗に刺激され、裏筋を指で愛撫されては、がまんなどできない。あまりの気持ちよさに、腰がふるえてしまう。痛いことはなにもされなかった。「あァぁーん!」と、高い声をあげたとき、
「おい、どんな夢を見てやがる。」
と、やけに冷静なヒシクラの声が聞こえた。そこで、ようやく頭が冴える。ガバッと起きあがると、帳場ではなく茶室で眠っていた。
「ハルチカ、勃ってるぞ。……処理してやろうか?」
「え……、うわーッ!!」
ハルチカの大事なものが、はだけて丸見えになっている。しかも、まっすぐ元気だ。あたふたとする間に、流れでてしまった。掛け布団を汚してしまい、それをヒシクラが取りあげて丸めると、廊下を歩く従業員に声をかけ、洗濯にまわす。いつから茶室に運び込まれていたのか、まったく思いだせなかった。ヒシクラに下半身を弄ばれたような気もするが、あれは夢だったのか。日は暮れて、じきに夜鷹坂へ客がやってくる。
「に……、哥さんは……?」
窓辺に移動したヒシクラにたずねると、「ああ」と、低い声で応じたが、妙な間が生じた。裏庭で、エンオウとエンジュが愛しあっている。彼らにとって接吻は、性交と同等の意味をもつようだ。いつものように、濃厚な口づけにおよんでいる。ヒシクラの目には、どちらも積極性があり、牡同士の力比べに見えた。ふたりとも根負けするような人種ではないため、必然的にキスは長くなる。二階の窓から見おろすヒシクラは、監視役の気分になった。本来ならば、好きな者同士が戯れているだけである。なにも問題はない。
「ヒシクラさん、」
畳のうえに坐るハルチカはそこにいて、ヒシクラの横顔を見つめた。アカラギの帰りを待つあいだ、気が抜けて、うたた寝をしてしまったようだ。おかしな夢に悩まされたが、ヒシクラは、ハルチカの躰に触れていない。青年を抱きあげて茶室まで運んだ人物は、アカラギだった。心配するヒシクラに、負傷した右腕が機能することを証明した。
「ヒシクラさん?」
「ん? ああ、悪いな。ラギなら、帰ってるぞ。タカムラと話し中だ。」
アカラギは帰宅していた。今、同じ屋根の下にいる。その事実だけで、ハルチカの胸は熱くなった。「よかった」と声にだして安堵の息を吐くと、茶室にヒョウエが顔をだした。
「ハル発見! ヒシクラのおっさんと、なにやってんの?」
「べ、べつになにもしてないよ。おれが、うたた寝しちゃって、それで……、」
「なあ、ハル。ケーキって、知ってるか。」
「けーき?」ハルチカが首をかしげると、ヒョウエは「ふふん!」と、なぜか腰に手をあて、鼻の下をこする真似をした。
「生クリームたっぷりの甘いやつ! さっき、ラギが帰ってきただろ? 都邑の手土産に、高級スイーツを使ったケーキなんて、太っ腹だよな!」
帰りがけ、焼き菓子店に立ち寄ったアカラギは、アダシノの長財布から従業員の数だけスイーツケーキを購めた。ヒシクラは、すぐに裏工作だと気づいたが、話を合わせておく。
「よし、みんなで食べようじゃないか。小腹も空いたしな。」
ヒシクラにうながされ、ハルチカは腰をあげた。
✓つづく
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