曙花町男娼夜鷹坂

み馬

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〘111〙一触即発

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 廊下で、両雄並び立たずの場面から脱したハルチカは、息をつく暇もなく、カリヤと枕席に侍る。障子の向こう側にアカラギの気配を感じながら着物を取りはらわれてゆき、カリヤも裸身はだかになった。乳首に吸いつかれ、「あんッ!」と声をあげる。もはや、いさぎよく力を抜き、股をひらくしかない。脈を打つ心臓が激しく高鳴り、陰茎に舌を絡めるカリヤの体熱に、ハルチカは「あぁんッ!」と、大胆に悦がった。

「カ……リヤさま……、カリヤ……さまぁ……!」

 性行為のようすを障子戸に映る影で見まもるアカラギは、微かに眉を寄せた。高い声であえぐハルチカは、必然的な身体作用に興奮ぎみで、心の底から悦がっている。二本の指を挿入されて性感帯をさぐられる嬌声は、アカラギの鼓膜も強く刺激した。やがて、ふたつの影は腰を密着させて上下に動きだす。性交中に生じる独特な物音は、各部屋から聞こえてくる。少しでも異常を認めた場合、中断させる権限をもつアカラギは、両者の息づかいに注意をはらった。

「あッ!? カリヤさま、奥は……だめ……ッ、そんなにきたら……、はいっちゃうッ!!」

 絶対領域に侵入されたハルチカは、その特異すぎる感触に、全身の細胞が活性化した。もっと突いてほしいという淫らな欲望と期待にさからえず、カリヤの男根を最深部まで導いてしまった。肉体をつなげて手応えを得るカリヤは、絶妙なかげんで腰をふり、ハルチカに極上の快楽を享受した。こんなとき、瞬時にあにの姿を思い浮かべるハルチカだったが、目を瞑っても、眼裏まなうらにはカリヤの顔があらわれた。

「やッ、やぁ……ッ、こんなの変……だよ……、ハァハァッ、あなたはどうして……、深層なかまできてしまうの? に、哥さん以外はだめなのに……、カ……リヤ……さまぁ!!」

 絶対領域を掻き乱されて身悶えるハルチカは、朝までに三回ほどカリヤと性交をくり返し、久しぶりの完全燃焼を遂げた。本当は著作品の話をしてみたかったが、そんな余裕と時間はどこにもなかった。身なりを整えて退出するカリヤは、今回もハルチカの口唇くちびるを奪わなかった。キスしてくれない理由を考えてしまうハルチカは、どこまでも愚かしいじぶんが、このうえなく情けなく感じた。布団のうえで放心していると、廊下を歩いてくる足音が聞こえた。

「哥さん……、お願い、なにも云わないで……、」

 アカラギが今、どんな表情を向けているのか、こわくて確かめることができないハルチカは、枕に顔を埋めている。掛け布団をはいだアカラギは、まず、下半身に目を留めた。余計な力がはいっているハルチカの腹底には、カリヤの精液が大量に残されている。アカラギはその場で掻きだそうとするため、体内の違和感に腰をふるわせるハルチカは、グプッと、残留物が流れでてくると、「ああッ!?」と叫んだ。指を挿入されたままぐったり仰臥ぎょうがするハルチカの意識は遠のくが、アカラギに性感帯を刺激され、現実へ引きもどされた。

「はぅッ!? 哥さ……ん……? そこ……は……感じちゃうよ……。あッ、あッ、だめ……、だめだってば……ッ、いい……、イク……! んんッ! イっちゃうよぉ!!」

 身体の疲労をよそに、反応のよさは鈍っておらず、アカラギの指でいちどイカされたあと、ハルチカは抱きあげられ、風呂場へ運ばれた。石鹸で躰を洗ってもらい、脱衣場では水滴をタオルで拭き取ってもらう。作業中のアカラギは、基本的に無言である。ハルチカの心情を、気遣っているわけではない。もどかしくなるハルチカは、ぎゅっと、口唇くちびるを結んだ。本当は哥に、そっとキスしてほしかった。


✓つづく
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